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第三十四話 英語
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四限目、英語ーー。
体育で汗をかき、お腹が空くこの時間は集中力が持続しない。
しかし、この時間、春田や虎田以上に活発になるのがクラスの女子である。その理由は、もちろん英語教師の存在だ。
マイケル福田。
180cmの長身。金髪碧眼、有名人にいそうな甘いマスク。やせ型で手足が長く、身長のわりに華奢なイメージがあるハーフだ。日本語は勿論、英語もペラペラなバイリンガルで、頭がよく、フェミニスト。陽気な性格で、会話も楽しいのもポイントが高い。
女性人気が高く、その外見で何人の女性の純潔が犠牲になったかとある事ない事、陰で噂されている。いわゆる妬みや、やっかみだ。バレンタインなどの行事ごとで、必ず何かしら貰っている事から男性教師陣からも嫉妬されている。
あまり成績の良くない女子生徒も英語だけは完璧、という子もいるくらいマイケルに気に入られたい女子は多い。
挙手率も高く。この時間は唯一、春田が手を抜ける時間でもある。(イケメンって偉大だな~)と常々思っている。
「……それじゃここの和訳を誰にしてもらおうかな」
そう言って、教科書から目を離し、教室を見渡すと、女子のほとんどが手を挙げている。
「Wow!great!皆、Motivationが高くて僕は嬉しいよ!」
(出たよウィンク)男子が感じるマイケルの鼻持ちならない所である。
「それじゃ氷川さん。Please translate to Japanese.」
このちょいちょい出る、流暢な英語に関しても男子陣はイラっとしている。
自分にできない事を平然とこなし、女子にモテる様は見ていて気持ちのいい事ではないと拒絶反応を起こしているためだ。女性陣は見た目通りに英語がその口からスラスラ出るマイケルに歓喜の声を上げたり、ため息が出たりと、喜びを表す。
気持ちは青春系洋画のヒロインだ。
マイケルが当てた女子は映画のワンシーンを想像しながら和訳をする。それだけを聞くと実に滑稽だが、本人はいたって真面目に授業を受けているので、笑ったりするのは失礼に値する。
そんなマイケルの授業中に、視線を感じた春田はチラリとそちらの方を見る。春田の方を盗み見るように見ていたのは虎田だ。マイケルの授業中だというのに、そちらには目もくれてない。目があった途端、虎田はサッと前を向き、焦った様子を見せる。
(何かあったのか?)不穏な空気を感じた春田は時計を見る。まだしばらく時間がありそうだ。
「Hey!春田!まだ授業は始まったばかりだぜ?もしかして、こんな時間に待ち合わせかい?」
その行動をいち早く見つけ、指摘される。声をかけるなら自分にして欲しいと思う女子たちからは凄い目で睨まれる。
「あ、いや……すいません……続けて下さい」
「Oh……OK。春田!次の文を君が訳してみようか!」
(やめてくれ……!)
50分ある授業の内、回答権が何回あるのか数えた事などないが、せいぜい10回程度。教師によっては5本の指で数えられるくらいである。
その貴重な一つを取ることは即ち敵。いじめにまで発展しそうだ。女子同士では、ある種同じ気持ちを共有する一体感から仲間意識はあるが、男子はマイケルを嫌っている奴の方が多く、授業に表面上は居ても、事実上、参加していない奴らだと女子たちは認識している。
だからこそ、その回答権を男子が得るのは、マイケルの采配だとしても感情的に受け入れられるわけはない。
映画のワンシーンを取り上げられた女優のように沸騰している。
今、春田はほとんどの女子の敵となった。困惑から声が出なくなっていると、「Are you okay?」とマイケルが訊ねてきた。春田は吹っ切れて、席を立つ。
「OK、OK。和訳しますよ……」
別に他の男子みたく、授業を聞いてないわけじゃない。やれるがやらないだけだ。ここは本来、女子の独断場なのだから。だからこそ、ここは断るべきところだったのだが、意固地になってしまった。
春田はこの瞬間。一部を除き、女子の敵となった。
体育で汗をかき、お腹が空くこの時間は集中力が持続しない。
しかし、この時間、春田や虎田以上に活発になるのがクラスの女子である。その理由は、もちろん英語教師の存在だ。
マイケル福田。
180cmの長身。金髪碧眼、有名人にいそうな甘いマスク。やせ型で手足が長く、身長のわりに華奢なイメージがあるハーフだ。日本語は勿論、英語もペラペラなバイリンガルで、頭がよく、フェミニスト。陽気な性格で、会話も楽しいのもポイントが高い。
女性人気が高く、その外見で何人の女性の純潔が犠牲になったかとある事ない事、陰で噂されている。いわゆる妬みや、やっかみだ。バレンタインなどの行事ごとで、必ず何かしら貰っている事から男性教師陣からも嫉妬されている。
あまり成績の良くない女子生徒も英語だけは完璧、という子もいるくらいマイケルに気に入られたい女子は多い。
挙手率も高く。この時間は唯一、春田が手を抜ける時間でもある。(イケメンって偉大だな~)と常々思っている。
「……それじゃここの和訳を誰にしてもらおうかな」
そう言って、教科書から目を離し、教室を見渡すと、女子のほとんどが手を挙げている。
「Wow!great!皆、Motivationが高くて僕は嬉しいよ!」
(出たよウィンク)男子が感じるマイケルの鼻持ちならない所である。
「それじゃ氷川さん。Please translate to Japanese.」
このちょいちょい出る、流暢な英語に関しても男子陣はイラっとしている。
自分にできない事を平然とこなし、女子にモテる様は見ていて気持ちのいい事ではないと拒絶反応を起こしているためだ。女性陣は見た目通りに英語がその口からスラスラ出るマイケルに歓喜の声を上げたり、ため息が出たりと、喜びを表す。
気持ちは青春系洋画のヒロインだ。
マイケルが当てた女子は映画のワンシーンを想像しながら和訳をする。それだけを聞くと実に滑稽だが、本人はいたって真面目に授業を受けているので、笑ったりするのは失礼に値する。
そんなマイケルの授業中に、視線を感じた春田はチラリとそちらの方を見る。春田の方を盗み見るように見ていたのは虎田だ。マイケルの授業中だというのに、そちらには目もくれてない。目があった途端、虎田はサッと前を向き、焦った様子を見せる。
(何かあったのか?)不穏な空気を感じた春田は時計を見る。まだしばらく時間がありそうだ。
「Hey!春田!まだ授業は始まったばかりだぜ?もしかして、こんな時間に待ち合わせかい?」
その行動をいち早く見つけ、指摘される。声をかけるなら自分にして欲しいと思う女子たちからは凄い目で睨まれる。
「あ、いや……すいません……続けて下さい」
「Oh……OK。春田!次の文を君が訳してみようか!」
(やめてくれ……!)
50分ある授業の内、回答権が何回あるのか数えた事などないが、せいぜい10回程度。教師によっては5本の指で数えられるくらいである。
その貴重な一つを取ることは即ち敵。いじめにまで発展しそうだ。女子同士では、ある種同じ気持ちを共有する一体感から仲間意識はあるが、男子はマイケルを嫌っている奴の方が多く、授業に表面上は居ても、事実上、参加していない奴らだと女子たちは認識している。
だからこそ、その回答権を男子が得るのは、マイケルの采配だとしても感情的に受け入れられるわけはない。
映画のワンシーンを取り上げられた女優のように沸騰している。
今、春田はほとんどの女子の敵となった。困惑から声が出なくなっていると、「Are you okay?」とマイケルが訊ねてきた。春田は吹っ切れて、席を立つ。
「OK、OK。和訳しますよ……」
別に他の男子みたく、授業を聞いてないわけじゃない。やれるがやらないだけだ。ここは本来、女子の独断場なのだから。だからこそ、ここは断るべきところだったのだが、意固地になってしまった。
春田はこの瞬間。一部を除き、女子の敵となった。
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