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第148話 説明求む
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虎田を保健室に預けた春田たちは教室に向かった。
扉を開けるとそこは生徒のいないガランとした教室。
マンションを出る前に遅刻する云々で脅されたが、全くの杞憂。余裕過ぎて机に突っ伏して寝るのも良い。しかしそんな事を竹内は許さない。
「……春田の部下って何人来てるの?」
「ポイ子含めて四人」
「……それじゃ前に見たあの人たちは親戚じゃなくて部下だったんだ」
「そうなんです。みんな聖也様に会いたい一心でこの世界にやって来たんですよ」
「……めっちゃ健気……」
何気なく三人は席に着く。
「こちらに来ている聖也様の部下四名は俗に四天王と言われています」
「……は?四天王?すごっ……なんか二つ名とか……あるの?」
「二つ名って……好きだな、お前も」
春田は呆れ気味にため息を吐く。
「二つ名なんて大層なものがあれば格好もついたのですけど……ああ、ヤシャ様とマレフィア様ならそういうのありましたよ。確かヤシャ様が”鬼の姫”でマレフィア様が”大魔導士”ですね」
それを聞いて竹内はウンウン頷きながら口元に手をやる。
「……ふーん、ヤシャさんは名前通りって感じか……マレフィアさんが大魔導士……って魔法が使えるの?」
「使えます。何だったらナルル様も使えます」
「……ポイ子さんは?」
「魔法は苦手な分野でして……」
ポイ子は頬を掻きながら困ったように眉を八の字に苦笑いした。そんな事を話していると、教室にワイワイと数人が「おはよー」と朝一番の挨拶をしながら入ってきた。
「っと、結構良い時間になったか?そういえばポイ子、お前普通に教室にいるけどよ、今日が編入の日なら職員室とか校長室とかに行かなきゃいけないんじゃないか?」
「え?そうなんですかね?」
「……案内するよ」
「ん?竹内が案内してくれんのか?」
竹内は親指を上に立ててグッドサインをして見せた。二人はさっさと教室を後にする。
春田は机に突っ伏すと「ふーっ」と肩の力を抜いた。しかしすぐに強張って顔を上げる。
「いや、ダメじゃね?成り行きは俺が見ないと……」
焦ってガタリと立ち上がると、すぐに呼び止められた。
「春田さん、おはようございます」
その清楚な声に教室のクラスメイトは息を飲んだ。東グループのご令嬢、滝澤詩織。その後ろに控えるのは詩織の付き人、菊池。
「お……はようございます、滝澤さん。と菊池」
「少しお時間よろしいですか?」
静まり返った空間。春田はバツが悪そうに苦笑いで答える。
「場所を変えましょうか」
………
売店に行き、備え付けのベンチに滝澤を座らせた。
「あ、飲み物とかいる?」
「いいえ、わたくしは結構です」
「私も結構だ」
財布を出しかけたが「そっか」と言って仕舞った。滝澤の隣に無遠慮に座ると話しかけた。
「……そう……それで、何か用でしょうか?」
「それがですね、どう切り出したら良いものか……」
「率直がよろしいのではないでしょうか?」
聞きにくい事。それは聞かなくたって分かる。十中八九「魔王」の事だろう。
「みんな気になる事は一緒って事か……つまり二人とも忘れてないんだな?記憶浸透の効果は切れてるはずなんだがな……」
「メモ……?いえ、そんなことよりその口調。わたくしが聞きたい事に心当たりがあるのですね?」
「……俺の前世に興味があるのでは?」
二人はその言葉に瞠目する。
「……もしや同じ質問を受けているのでしょうか?」
「ええ、まぁ……」
「春田聖也。貴様は本当に、その……」
「魔王なのかってか?そうだよ。今更しらばっくれても答えは一緒だしな」
菊池の顔は強張り、滝澤は肩を竦める。
「何というか……今までの事全てが繋がった気分です。瀬川会長の息子ら犯罪者を無傷で倒してのけ、お祖父様にもその存在を認められるほどの御仁。ご親戚のヤシャ様はお祖父様より力が上。他二名も油断ならない方々でした。この世界の住人でないとしたら……あり得ない話ではないと思いまして……」
「なるほど、色々気になる事があったようですね。もう隠せないしゲロっちゃいますけど、前世魔王だった俺は現在人間で他四人が人間じゃないです」
「人間じゃないって?じゃあヤシャさんは一体何の種族だと言う気?」
「鬼だ」
「お、おに?でもツノとか生えてなかったような……」
菊池は質問が返ってくるなり混乱している。だがやはりというべきか、滝澤は「なるほど」と頷いた。
「お祖父様が負けたのは当然の事ですね」
裏格闘技の事を思い浮かべながら納得する。
あの戦いは挑戦者がチャンピオンに挑むのではなく、人が鬼に挑んだ戦いだったのだ。初めから勝ち目など無かった。
「俺としてはおじいさんがヤシャにあれだけ食い下がるとは思いもよらなかったよ。この世界の人間じゃ良い戦いなんて期待できなかったから」
「食い下が……?!貴様、会長への侮辱は許さないぞ」
菊地は眉間にシワを寄せてズイっと前に出た。
「止めなさい」
ピシャッと滝澤が菊地を嗜める。
「し、しかし……」
「春田さんは事実を申されただけです。春田さん、大変失礼しました」
滝澤はペコリと頭を下げる。それに焦った春田は頭を掻きながら頭を下げる。
「ああ、えっと……俺こそ悪かった。誤解させるつもりじゃなかったんだが……」
滝澤はニコリと笑顔で返すと、腕時計を確認した。
「……そろそろ行きますか。ホームルームが始まる前には教室に戻らないといけませんし」
スッと姿勢良く立ち上がると、菊池もピッと姿勢を正した。
「そ、そうっすね。戻りましょうか」
三人は変な空気を漂わせながら廊下を歩く。途中で別れてそれぞれの教室に戻った。
(やれやれ……面倒な事になったもんだ。こうなると誰々が覚えているのか気になるな……)
春田は席に着く。
「は~るちん!おっはよ~」
そのフワフワッとした声にガクッと肩を落とした。その声の主はクラスのムードメーカー館川。
「はぁ……」とため息を吐きながら声の方を見ると、館川の後ろに虎田の親友、木島。陸上部の朝練が終わってスッキリした顔の篠崎。
つい最近知り合ったばかりの陽キャ連中。春田には縁の無い存在だったが、虎田と知り合った事で結果的にこの三人とも知り合う事になった。
「春田。ちょっと聞きたい事あるんだけど?」
「そっか、お前らもか……ったくよー……」
扉を開けるとそこは生徒のいないガランとした教室。
マンションを出る前に遅刻する云々で脅されたが、全くの杞憂。余裕過ぎて机に突っ伏して寝るのも良い。しかしそんな事を竹内は許さない。
「……春田の部下って何人来てるの?」
「ポイ子含めて四人」
「……それじゃ前に見たあの人たちは親戚じゃなくて部下だったんだ」
「そうなんです。みんな聖也様に会いたい一心でこの世界にやって来たんですよ」
「……めっちゃ健気……」
何気なく三人は席に着く。
「こちらに来ている聖也様の部下四名は俗に四天王と言われています」
「……は?四天王?すごっ……なんか二つ名とか……あるの?」
「二つ名って……好きだな、お前も」
春田は呆れ気味にため息を吐く。
「二つ名なんて大層なものがあれば格好もついたのですけど……ああ、ヤシャ様とマレフィア様ならそういうのありましたよ。確かヤシャ様が”鬼の姫”でマレフィア様が”大魔導士”ですね」
それを聞いて竹内はウンウン頷きながら口元に手をやる。
「……ふーん、ヤシャさんは名前通りって感じか……マレフィアさんが大魔導士……って魔法が使えるの?」
「使えます。何だったらナルル様も使えます」
「……ポイ子さんは?」
「魔法は苦手な分野でして……」
ポイ子は頬を掻きながら困ったように眉を八の字に苦笑いした。そんな事を話していると、教室にワイワイと数人が「おはよー」と朝一番の挨拶をしながら入ってきた。
「っと、結構良い時間になったか?そういえばポイ子、お前普通に教室にいるけどよ、今日が編入の日なら職員室とか校長室とかに行かなきゃいけないんじゃないか?」
「え?そうなんですかね?」
「……案内するよ」
「ん?竹内が案内してくれんのか?」
竹内は親指を上に立ててグッドサインをして見せた。二人はさっさと教室を後にする。
春田は机に突っ伏すと「ふーっ」と肩の力を抜いた。しかしすぐに強張って顔を上げる。
「いや、ダメじゃね?成り行きは俺が見ないと……」
焦ってガタリと立ち上がると、すぐに呼び止められた。
「春田さん、おはようございます」
その清楚な声に教室のクラスメイトは息を飲んだ。東グループのご令嬢、滝澤詩織。その後ろに控えるのは詩織の付き人、菊池。
「お……はようございます、滝澤さん。と菊池」
「少しお時間よろしいですか?」
静まり返った空間。春田はバツが悪そうに苦笑いで答える。
「場所を変えましょうか」
………
売店に行き、備え付けのベンチに滝澤を座らせた。
「あ、飲み物とかいる?」
「いいえ、わたくしは結構です」
「私も結構だ」
財布を出しかけたが「そっか」と言って仕舞った。滝澤の隣に無遠慮に座ると話しかけた。
「……そう……それで、何か用でしょうか?」
「それがですね、どう切り出したら良いものか……」
「率直がよろしいのではないでしょうか?」
聞きにくい事。それは聞かなくたって分かる。十中八九「魔王」の事だろう。
「みんな気になる事は一緒って事か……つまり二人とも忘れてないんだな?記憶浸透の効果は切れてるはずなんだがな……」
「メモ……?いえ、そんなことよりその口調。わたくしが聞きたい事に心当たりがあるのですね?」
「……俺の前世に興味があるのでは?」
二人はその言葉に瞠目する。
「……もしや同じ質問を受けているのでしょうか?」
「ええ、まぁ……」
「春田聖也。貴様は本当に、その……」
「魔王なのかってか?そうだよ。今更しらばっくれても答えは一緒だしな」
菊池の顔は強張り、滝澤は肩を竦める。
「何というか……今までの事全てが繋がった気分です。瀬川会長の息子ら犯罪者を無傷で倒してのけ、お祖父様にもその存在を認められるほどの御仁。ご親戚のヤシャ様はお祖父様より力が上。他二名も油断ならない方々でした。この世界の住人でないとしたら……あり得ない話ではないと思いまして……」
「なるほど、色々気になる事があったようですね。もう隠せないしゲロっちゃいますけど、前世魔王だった俺は現在人間で他四人が人間じゃないです」
「人間じゃないって?じゃあヤシャさんは一体何の種族だと言う気?」
「鬼だ」
「お、おに?でもツノとか生えてなかったような……」
菊池は質問が返ってくるなり混乱している。だがやはりというべきか、滝澤は「なるほど」と頷いた。
「お祖父様が負けたのは当然の事ですね」
裏格闘技の事を思い浮かべながら納得する。
あの戦いは挑戦者がチャンピオンに挑むのではなく、人が鬼に挑んだ戦いだったのだ。初めから勝ち目など無かった。
「俺としてはおじいさんがヤシャにあれだけ食い下がるとは思いもよらなかったよ。この世界の人間じゃ良い戦いなんて期待できなかったから」
「食い下が……?!貴様、会長への侮辱は許さないぞ」
菊地は眉間にシワを寄せてズイっと前に出た。
「止めなさい」
ピシャッと滝澤が菊地を嗜める。
「し、しかし……」
「春田さんは事実を申されただけです。春田さん、大変失礼しました」
滝澤はペコリと頭を下げる。それに焦った春田は頭を掻きながら頭を下げる。
「ああ、えっと……俺こそ悪かった。誤解させるつもりじゃなかったんだが……」
滝澤はニコリと笑顔で返すと、腕時計を確認した。
「……そろそろ行きますか。ホームルームが始まる前には教室に戻らないといけませんし」
スッと姿勢良く立ち上がると、菊池もピッと姿勢を正した。
「そ、そうっすね。戻りましょうか」
三人は変な空気を漂わせながら廊下を歩く。途中で別れてそれぞれの教室に戻った。
(やれやれ……面倒な事になったもんだ。こうなると誰々が覚えているのか気になるな……)
春田は席に着く。
「は~るちん!おっはよ~」
そのフワフワッとした声にガクッと肩を落とした。その声の主はクラスのムードメーカー館川。
「はぁ……」とため息を吐きながら声の方を見ると、館川の後ろに虎田の親友、木島。陸上部の朝練が終わってスッキリした顔の篠崎。
つい最近知り合ったばかりの陽キャ連中。春田には縁の無い存在だったが、虎田と知り合った事で結果的にこの三人とも知り合う事になった。
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