魔王復活!

大好き丸

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エピローグ

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「ポイ子さんって何が好きなの?」「どこから来たの?」「こみゅやってる?」

編入早々よくある質問責めに捕まるポイ子。ホームルームの時間に紹介があり名前で驚かれたが、いわゆるキラキラネームという事で同情を誘い、愛らしい見た目に魅了された女子たちの格好の餌食となっていた。黒峰の担当時間は萎縮して聞けなかった分、一限目の休憩時間は堰を切ったように雪崩れ込んだのだ。

「結構何でも好きですよ。皆さんと共有できる趣味があれば嬉しいですね。ちょっと遠くから親の都合で、詳しい事は聖也さ……聖ちゃんから聞いて下さい。すいません今携帯故障中で……」

わいわい大賑わいとなっている。ボロも出さないし、きっちり受け答えも出来ている。一瞬でクラスの輪に溶け込めそうだ。聖ちゃんは勘弁して欲しいところだが。

「……上手いね、周囲に溶け込んでる……中身がだって知ったら逆の騒ぎになりそうだけど……」

竹内は春田の前で不吉な事を呟く。

「やめろよ縁起でもない……それで卒倒したのがいるのをもう忘れたのかよ」

現在保健室で寝込んでいる虎田。人生初の欠席を経験してしまった。気絶によって惜しくも皆勤賞を逃した形だ。

「いいよねぇ花があってさぁ」

虎田の席でまったりしている館川が横から入ってきた。木島と篠崎は虎田の体調を確認しに保健室に行ったので、暇を持て余して春田たちのところに来ていた。

「そうか?見た目は目立たないように地味にしてるって言ってたし、こっから見てもただの普通の女子高生に見えるが……」

「あーゆー可愛い子ってけっこー珍しいよ?飾らないってゆーかナチュラルってゆーか。ほら見て、人混みにあって目立つでしょ?埋もれない可愛さって凄いのよ」

ドヤ顔でふふんっと得意げに鼻を鳴らす。熟達した玄人の様な目線に若者らしからぬ空気を感じるが、人の目線は人それぞれである。

「あれで春ちんの従姉妹ってんだから世の中分かんないよねー」

「ははは……まぁ……」

館川には本当のところを話していない。虎田の様にぶっ倒れられても厄介だという事で、よく事情を知る竹内と人間でないことを知っている滝澤と菊池の二人を含め、計四人以外には内緒にしようと心に決めた。木島たちに迫られた時に話したのは、前世が魔王で、おおよそ色々出来る程度。半信半疑といった様子だったが、こんな突拍子も無いことを信じる部分が少しでもあるのなら、それはもうほぼ信じているも同義。「オカルトは大体真実」と言ってるのと変わらない。

「あ、ちょっと。ひなちゃんそこ私の席」

フッと出入り口に目をやると、虎田が戻ってきていた。木島も篠崎も一緒だ。

「あ~んみゆき~。もう大丈夫なん?」

館川はサッと席を立つと虎田に抱きついた。

「ひなちゃん、ちょっと暑いよう」

困り顔でじゃれつく二人。どうやら大丈夫そうで安心した。その様子を眺めていたら、春田をマジマジと見る篠崎の視線に気付いた。

「……何?」

「別に……いやまぁ、ちょっと気になってさ」

スッと春田の間合いに立つ。座っている低い位置から見ると、身長の高い篠崎は割と怖く見える。

「その姿は……偽物、なんだよね?」

言われた意味が分からずポカンとしてしまうが、すぐに首を振って否定する。

「は?待て待て。勘違いするなよ?」

グッと声を落としてひそひそ声に変える。

「俺は前世がそうだっただけで今は普通の人間だからな?偽物では無いからな?」

「あおい。変なこと言わないでよ。ほら、ひなもいつまでそうしてんの?次の授業始まるから戻るよ」

「は~い」と館川は素直に離れる。篠崎はチラッと木島を見た後、すぐに春田に目を落とす。

「今日体育あるじゃん。その時にまた話ししようよ」

篠崎はそれだけ言い残すと自分の席に帰っていった。その時丁度チャイムが鳴る。

「何だよあいつ……」

春田は篠崎の変な雰囲気に当てられて困惑していた。

「ねぇ」

隣からそっと声を掛けられた。

「ごめんね。保健室まで運んでくれたんでしょ?私……重かった?」

「いや、全然。むしろ軽いくらいだよ。無事で良かった」

はにかむ春田。それに竹内が微かに笑った。

「……何恥ずかしがってんの?立派な事じゃん……やっぱ結構筋肉あるの?」

「いや、鍛えてないから筋肉なんて言うほど無いよ。いきなり運動したし、もしかしたら明日筋肉痛かもな」

ははっと笑って流す。こう言ってみたが多分大丈夫だろうと察する。それというのも魔王の力を使用できたお陰か、体の調子は良いのだ。多分力の開放の余波が今も続いているのだろう。いずれ切れると思いながらも楽観的に物事が見れた。

「さ、授業授業。前向けよ、先生に注意されるぞ?」

そんな春田の事を陰ながら見ていたポイ子はにっこり笑っていた。
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