追放された貴族は《再構築》の力で世界を直す

自ら

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第3章 開拓と仲間たち

第18話「商人リナの才覚」

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鉱山救出の翌日、レオンはギルドで新しい依頼を探していた。ルリアも一緒だ。

掲示板には、多くの依頼が貼られている。魔獣討伐、護衛任務、物資運搬。

「どれにしますか?」

ルリアが聞いた。

「まだ決めていない」

レオンは、掲示板を眺めながら答えた。その時、リナが宿から戻ってきた。彼女は、商人用の服装に着替えている。

「坊ちゃん、私は商業地区へ行ってきます」
「商業地区?」
「はい。リコンストラクト領の特産品を、ここで売り込むチャンスです」

リナは、大きな鞄を肩にかけていた。中には、耐性植物の加工品が入っている。

「一人で大丈夫か?」
「大丈夫です。商人としての経験は、私にもあります」

リナは、自信に満ちた表情で言った。

「わかった。気をつけて」
「では、行ってきます」

リナは、ギルドを出た。

ファルマの商業地区は、賑やかだった。様々な店が立ち並び、商人たちが品物を並べている。

リナは、その中を歩きながら、観察していた。どの店が繁盛しているか。どんな商品が人気なのか。そして、どこに商機があるのか。

やがて、リナは一軒の大きな店の前で立ち止まった。看板には「グランデ商会」と書かれている。

「ここが、一番大きな商会か」

リナは、店に入った。中は、広いホールになっていて、多くの商品が陳列されている。奥には、受付があった。

「いらっしゃいませ」

若い男性が、笑顔で迎えた。

「何をお探しですか?」
「いえ、買い物ではなく、商談に来ました」

リナは、名刺を差し出した。

「私は、リコンストラクト領の商人、リナと申します」
「リコンストラクト領?」

男性は、首を傾げた。

「初めて聞く名前ですね」
「辺境に、最近できた町です」
「辺境の町ですか……」

男性の表情が、わずかに冷たくなった。

「申し訳ありませんが、当商会は大口の取引しか扱っておりません」
「大口の取引をしたいのです」

リナは、鞄から小さな袋を取り出した。

「これを見ていただけますか?」

袋の中には、赤根草の乾燥したものが入っている。

男性は、それを手に取った。

「これは……野菜ですか?」
「赤根草といいます。特殊な性質を持つ植物です」
「特殊な性質?」
「汚染された土壌でも育ち、負の魔力を吸収します」

男性の表情が、変わった。

「汚染された土壌で育つ?」
「はい。そして、食用にもなります」

リナは、もう一つの袋を取り出した。

「こちらは苦麦。同じく汚染された土壌で育ちます」

男性は、二つの袋を見つめた。

「少々お待ちください。上司を呼びます」

男性が、奥へ引っ込んだ。しばらくして、年配の男性が現れた。

立派な服を着ている。商会の責任者だろう。

「私は、グランデ商会の副会長、ギルバートです」

ギルバートは、リナを見つめた。

「あなたが、汚染された土壌で育つ植物を持っているとか?」
「はい」

リナは、再び袋を見せた。ギルバートは、それを手に取り、念入りに調べた。

「確かに、普通の植物とは違う」

ギルバートは、リナを見た。

「これは、どこで栽培しているのですか?」
「リコンストラクト領です。辺境の町で」
「辺境……」

ギルバートは、考え込んだ。

「実は、最近、王国全体で土壌汚染が深刻化しています。多くの農地が使えなくなっている」
「存じております」

リナは頷いた。

「だからこそ、この植物が必要なのです」
「なるほど」

ギルバートは、袋を机に置いた。

「しかし、これが本当に汚染された土壌で育つという証拠はありますか?」
「証拠なら」

リナは、鞄から一冊の記録帳を取り出した。

「これが、栽培記録です。土壌の状態、成長過程、収穫量、すべてが記録されています」

ギルバートは、記録帳を受け取って、ページをめくった。詳細なデータが、びっしりと書き込まれている。

「これは……かなり専門的な記録ですね」
「私たちの町には、優秀な農業管理者がおります」
「そうですか」

ギルバートは、記録帳を閉じた。

「興味深い。ですが、まず実物を確認したい。この植物の種を、少量譲っていただけますか?」
「もちろん」

リナは、別の袋を取り出した。

「赤根草と苦麦の種です。どうぞ」
「ありがとうございます」

ギルバートは、種の袋を受け取った。

「これを当商会の農場で試験栽培します。もし、本当に汚染された土壌で育つなら、大口の取引を検討しましょう」
「ありがとうございます」

リナは、丁寧に頭を下げた。

「試験栽培の結果が出るまで、どのくらいかかりますか?」
「早ければ、一ヶ月です」
「わかりました。では、一ヶ月後に、また伺います」

グランデ商会を出たリナは、次の目的地へ向かった。

薬品を扱う店だ。耐性植物は、食用だけでなく、薬品の原料にもなる。店に入ると、店主が奥から出てきた。白髪の老人だ。

「何か御用ですか?」
「薬品の原料を、お持ちしました」

リナは、耐魔芋のサンプルを見せた。

「これは、負の魔力を無害化する性質があります」

店主は、興味深そうにサンプルを見た。

「負の魔力を無害化?」
「はい。最近、魔力汚染による病気が増えていると聞きました」
「その通りです」

店主は、深刻な表情で頷いた。

「多くの患者が、原因不明の症状に苦しんでいます。もし、これが本当に効果があるなら……」
「試していただけますか?」

リナは、サンプルを差し出した。

「もちろん。少し時間をください」

店主は、サンプルを持って、奥の部屋へ消えた。


数時間後、リナは三軒の店と、予備的な契約を結んでいた。一つは食料品店。一つは薬品店。そして一つは、肥料を扱う農業資材店。すべてが、試験的な取引だが、成功すれば大口の契約に繋がる。

リナは、宿に戻る途中、市場を歩いていた。そこで、一人の男とぶつかった。

「すみません」

リナが謝ると、男はじろじろとリナを見た。

「あんた、商人か?」
「はい」
「どこの商会だ?」
「リコンストラクト領の……」
「リコンストラクト領?」

男は、眉をひそめた。

「聞いたことがないな。新参者か」
「そうです」
「ふん」

男は、鼻で笑った。

「新参者が、グランデ商会に出入りしてたな。何を企んでる?」
「企むも何も、正当な商売です」
リナは、冷静に答えた。

「正当な商売ねえ」

男は、リナに一歩近づいた。

「いいか、この街の商売は、俺たちが仕切ってる。新参者が勝手なことをすると、痛い目に遭うぞ」
「脅しですか?」
「忠告だ」

男は、にやりと笑った。

「覚えておけ」

男は、去っていった。リナは、その背中を見つめた。

「やはり、簡単にはいかないか」

リナは、深く息をついた。商売の世界は、甘くない。だが、リナは恐れていない。リコンストラクト領のために、必ず成功させる。

宿に戻ると、レオンとルリアが待っていた。

「おかえり、リナ」

レオンが声をかけた。

「ただいま戻りました」

リナは、鞄を置いた。

「どうだった?」
「三件の予備契約を結びました」
「本当か?」

レオンは、驚いた表情を見せた。

「すごいな」
「まだ、試験段階ですが」

リナは、契約書を見せた。

「もし成功すれば、リコンストラクト領の経済は大きく安定します」
「ありがとう、リナ」

レオンは、心から感謝した。

「君がいてくれて、本当に助かる」
「いえ、これが私の仕事ですから」

リナは、微笑んだ。

「ただ、一つ問題があります」
「問題?」
「この街には、既存の商人たちの縄張りがあるようです。新参者を快く思わない者もいます」
「そうか」

レオンは、考え込んだ。

「気をつけなければならないな」
「はい。でも、大丈夫です」

リナは、自信に満ちた表情で言った。

「私は、負けません」

その夜、リナは自分の部屋で、帳簿を整理していた。今日の商談の記録。契約の詳細。今後の計画。すべてを、丁寧に書き込んでいく。

窓の外を見ると、ファルマの街が灯りに照らされていた。大きな街。多くの人々。そして、多くの商機。

「ここで成功すれば、リコンストラクト領は変わる」

リナは、そう確信した。かつて、自分は城の使用人だった。レオンに仕え、料理を作り、掃除をしていた。だが、今は違う。今は、商人だ。町の経済を支える、重要な役割を担っている。

「坊ちゃんのために。そして、町のみんなのために」

リナは、ペンを走らせた。

明日も、商談がある。やるべきことは、まだたくさんある。だが、リナは恐れていない。なぜなら、自分には目的があるから。リコンストラクト領を、もっと大きくする。そして、坊ちゃんの夢を、支える。それが、自分の役割なのだ。

窓の外では、月が輝いていた。



翌日、リナは再び商業地区へ向かった。今日は、小さな商店を回る予定だ。大きな商会だけでなく、小さな店とも関係を築く必要がある。最初の店は、パン屋だった。

「こんにちは」

リナが入ると、店主が笑顔で迎えた。

「いらっしゃい。何が欲しい?」
「実は、商談に来ました」

リナは、苦麦のサンプルを見せた。

「この穀物で、パンを作れませんか?」

店主は、サンプルを手に取った。

「これは……普通の麦じゃないな」
「苦麦といいます。汚染された土壌でも育ちます」
「汚染された土壌で?」

店主の表情が、変わった。

「それは、今の時代に必要なものだな」
「試しに、パンを作っていただけますか?」
「いいだろう」

店主は、サンプルを受け取った。

「明日、また来てくれ。試作品を作っておく」
「ありがとうございます」

リナは、次の店へ向かった。



一日が終わる頃、リナは十軒以上の店と接触していた。すべてが成功したわけではないが、いくつかの店は興味を示してくれた。

宿に戻ると、レオンが待っていた。

「おかえり」
「ただいま戻りました」

リナは、疲れた表情で座り込んだ。

「大変だったな」
「はい。でも、充実していました」

リナは、微笑んだ。

「明日も、頑張ります」
「無理はするなよ」
「大丈夫です」

リナは、窓の外を見た。夕日が、街を照らしている。

「坊ちゃん、この街で、私たちは成功します」
「ああ」
レオンは頷いた。

「君を信じている」
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