追放された貴族は《再構築》の力で世界を直す

自ら

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第3章 開拓と仲間たち

第21話「遺跡の暴走」

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翌朝、レオンは不思議な夢から目覚めた。夢の中で、古代遺跡の声が呼びかけていた。

「戻れ、再構築者よ。まだ、すべてを伝えていない」

レオンは、ベッドから起き上がった。窓の外を見ると、朝日が昇り始めている。

「まだ、何かあるのか」

レオンは、服を着て、部屋を出た。



食堂では、他のメンバーが既に朝食を取っていた。

「おはよう、レオン」

ルリアが声をかけた。

「おはよう」

レオンは、席についた。

「坊ちゃん、顔色が良くないですね」

リナが心配そうに言った。

「よく眠れなかったのか?」

ルークが聞いた。

「夢を見た」

レオンは、昨夜の夢について話した。セリアが、興味深そうに聞いていた。

「それは、遺跡からの呼びかけかもしれません」
「呼びかけ?」
「ええ。古代の装置は、再構築者と精神的に繋がることができるんです」

セリアは、魔導書を開いた。

「この記録によれば、遺跡は未完了の情報伝達を完了しようとします」
「つまり、戻る必要があるということか」
「おそらく」

セリアは頷いた。

「ですが、危険かもしれません」
「それでも、行かなければならない」

レオンは、決然と言った。

「あの遺跡には、まだ重要な情報がある」
「なら、俺たちも一緒だ」

ルークが立ち上がった。

「そうです。一人では危険です」

ルリアも立ち上がった。

「ありがとう」

レオンは、仲間たちを見た。

「では、準備をして、遺跡へ戻ろう」

一行は、再び森の中の遺跡へ向かった。馬に乗り、昨日と同じ道を進む。だが、何かが違った。

「空気が……」

ルリアが呟いた。

「重い」
「ああ」

レオンも感じていた。遺跡の方向から、強い魔力が放出されている。

「昨日、遺跡を起動させたことで、何かが変わったのかもしれません」

セリアが言った。

「急ごう」

一行は、馬の速度を上げた。



遺跡に到着すると、状況は一変していた。遺跡全体が、青白い光に包まれている。そして、周囲の木々が枯れ始めていた。

「これは……」

セリアが、顔色を変えた。

「魔力の暴走です」
「暴走?」
「ええ。遺跡の制御システムが、完全に機能していないようです」

セリアは、遺跡を見つめた。

「このままでは、周囲一帯が魔力に飲み込まれます」
「止めなければならない」

レオンは、馬を降りた。

「みんな、ここで待っていてくれ」
「待て」

ルークが、レオンの腕を掴んだ。

「一人で行くつもりか?」
「これは、俺の責任だ。俺が遺跡を起動させた」
「だからって、一人で行く理由にはならない」

ルークは、強く言った。

「俺たちは、チームだ。一緒に行く」
「そうです」

ルリアも頷いた。

「私たちも、戦います」

レオンは、二人を見た。やがて、小さく頷いた。

「わかった。一緒に行こう」

遺跡の入口に近づくと、魔力の圧力が強くなった。

「気をつけてください」

セリアが警告した。

「この魔力、かなり不安定です」

四人は、遺跡の中へ入った。内部は、昨日とは様変わりしていた。壁から、青白い光が溢れ出している。床には、魔法陣が無数に浮かび上がっている。

「中央の部屋へ」

レオンが先導した。昨日、メッセージを受け取った部屋だ。部屋に到着すると、そこには驚くべき光景が広がっていた。中央の魔法陣から、巨大な光の柱が立ち上っている。そして、その周りを、複数のゴーレムが巡回していた。

「昨日より、数が増えている!」

ルークが叫んだ。ゴーレムたちが、一斉にレオンたちを見た。

「敵と認識された!」

セリアが叫んだ。ゴーレムたちが、襲いかかってきた。

「散れ!」

レオンが指示を出した。四人は、それぞれ別の方向へ散った。ルークが、一体のゴーレムに斬りかかった。昨日レオンと作った剣が、ゴーレムの腕を切断した。

「この剣、効くぞ!」

だが、ゴーレムは動きを止めない。切断された腕が、魔力で再生していく。

「再生する!?」

ルリアが、複数の火球を放った。炎がゴーレムを包むが、石の身体には効果が薄い。

「火では無理です!」

セリアは、魔導書を開いて、呪文を唱えた。

「氷結よ!」

ゴーレムの足元が凍りつき、動きが鈍くなった。

「今です!」

ルークが、凍ったゴーレムを剣で叩き割った。ゴーレムが、砕け散った。

「一体倒した!」

だが、まだ四体残っている。

「レオン、何とかしてくれ!」

ルークが叫んだ。レオンは、中央の魔法陣に向かって走った。ゴーレムが、行く手を阻む。

「どけ!」

レオンは、地面に手を当てた。再構築の力で、地面を隆起させる。土の壁が、ゴーレムを押し返した。レオンは、魔法陣に到達した。手を当てると、膨大な情報が流れ込んできた。

遺跡の制御システム。動力源。暴走の原因。すべてが見える。

「わかった」

レオンは、魔法陣を再構築し始めた。暴走している部分を、正常な状態に戻す。制御システムを、書き換える。青白い光が、レオンの手から放たれた。魔法陣が、ゆっくりと変化していく。

「うぐっ……」

レオンの身体に、激しい痛みが走った。再構築の負荷が、大きすぎる。

「レオン!」

ルリアが叫んだ。だが、レオンは止まらなかった。もう少しだ。もう少しで、制御が完了する。

やがて、魔法陣の光が変わった。青白い光が、金色の光に変わる。

ゴーレムたちが、動きを止めた。そして、ゆっくりと元の場所へ戻っていった。

光の柱も、徐々に小さくなっていく。数分後、すべてが静まった。

レオンは、その場に倒れ込んだ。

「レオン!」

ルリアが駆け寄った。レオンの額には、大量の汗が浮いている。顔色も、悪い。

「大丈夫ですか?」
「ああ……何とか」

レオンは、息を整えた。

「制御できた」
「無理しすぎです」

ルリアが、涙目で言った。

「すまない」

その時、魔法陣から、声が聞こえた。

「再構築者よ。よくぞ、制御してくれた」

その声は、昨日と同じ、古代装置の声だ。

「お前は、誰だ」

レオンが聞いた。

「我は、この遺跡の管理システム。古代人が残した、最後の遺産だ」
「最後の遺産?」
「そう。我らは、世界が再び壊れる日に備えて、この遺跡を残した」

声は続けた。

「だが、三千年の時を経て、システムは劣化していた。そのため、暴走が起きた」
「なら、もう大丈夫なのか?」
「貴方が修復してくれたおかげで、今は安定している」

レオンは、安堵の息をついた。

「そして、貴方に伝えなければならないことがある」
「何だ?」
「世界の再構築には、複数の再構築者が必要だ」

声は、厳かに告げた。

「貴方一人では、不可能だ。他の再構築者たちと協力せよ」
「他の再構築者は、どこにいる?」
「それは、我にもわからない。だが、彼らもまた、遺跡によって呼ばれている」
「そうか」

レオンは、立ち上がった。

「では、俺は彼らを探す」
「待て。もう一つ、伝えることがある」
「何だ?」
「世界の再構築には、代償が必要だ」

声のトーンが、暗くなった。

「代償?」
「そう。世界を直すためには、何かを失わなければならない」
「何を、失うのか?」
「それは、まだわからない。だが、必ず代償を払うことになる」

レオンは、黙って声を聞いていた。

「それでも、貴方は世界を救うのか?」
「ああ」

レオンは、迷わず答えた。

「俺は、世界を救う。どんな代償を払っても」
「そうか」

声は、満足そうに響いた。

「では、行け。他の再構築者を探し、世界を救え」

魔法陣の光が、完全に消えた。遺跡は、静寂に包まれた。



遺跡の外に出ると、周囲の木々は枯れたままだった。だが、魔力の暴走は止まっている。

「何とか、止められたな」

ルークが言った。

「ええ」

セリアが頷いた。

「レオンさんのおかげです」

レオンは、森を見渡した。枯れた木々。それは、世界の衰退の象徴だ。

「俺たちは、これを止めなければならない」

レオンは、仲間たちを見た。

「世界を救うために」

三人は、頷いた。

「一緒に」

ルリアが言った。

「ああ、一緒に」

レオンは、微笑んだ。



ファルマに戻る途中、セリアが口を開いた。

「レオンさん、代償のことが気になります」
「代償?」
「ええ。遺跡の声が言っていた、代償のことです」

セリアは、真剣な表情で言った。

「世界を直すために、何かを失う。それは、一体何なのでしょうか」
「わからない」

レオンは、正直に答えた。

「だが、そうなった時、俺は払う覚悟がある」
「レオン……」

ルリアが、心配そうにレオンを見た。

「大丈夫だ」

レオンは、ルリアに微笑みかけた。

「俺は、一人じゃない。君たちがいる」
「そうだ」

ルークが、レオンの肩を叩いた。

「俺たちがいる。何があっても、一緒だ」
「ありがとう」

レオンは、仲間たちに感謝した。


四人は、馬を進めた。ファルマの街が、見えてきた。

そこで、休息を取り、リコンストラクト領へ戻る準備をする。新しい仲間を連れて。新しい知識を得て。そして、新しい決意を胸に。レオンたちの旅は、まだ始まったばかりだ。
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