おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア

文字の大きさ
15 / 18

15.「vs魔王(闇の精霊王)ダダーク」

しおりを挟む
 空から嘲笑を浴びせるダダーク。

 見渡す限り、大勢のモンスター・人間の死体が折り重なり、正に死屍累々たる有様だ。
 皆、身体中に〝穴〟が開いている。

「ヴィンス!」

 アイシィが駆け寄るが、武闘団副団長の彼は既に事切れていた。

「誰か……生きている者はいないのか……?」

 祈るように呟いた俺が、戦場をフラフラと歩き回ると。

「……パーチ……さん……」
「!」

 消え入りそうな声が聞こえた。

 見るとそれは、俺が武闘団の戦闘能力を底上げした際に、「これならきっと、生き残れそうです!」と、喜んでいた小柄な少年ティージャだった。

「……来て……下さった……んですね……」
「ああ。……遅くなってすまなかった……」

 俺のせいだ!
 もっと早く来ていれば……!

「……せっかく……強くして……もらったのに……すいません……」
「何言ってるんだ! 祖国のために、戦士として立派に戦ったんだろうが! 自分を誇れ!」
「!」

 ティージャの瞳に、失われていた光が一瞬だけ戻る。

「……どうか……魔王を……倒して……ください……!」
 
 ティージャの頬を涙が伝う。

「ああ、任せておけ!」

 彼の手を強く握ると。

「……良……かっ……た……」

 安堵したように息を引き取った。

「クックック。別れの儀式は済んだか? てめぇら劣等種族同士の最期の語らいは実に滑稽で、笑いを堪えるのに必死だったぜ」
「!」
「こんな酷いことをしておいて、更にうちの団員や師匠のことまで馬鹿にして! 絶対に許さないわ!」
「ハッ! これほどのクズとはね! 躊躇なくぶっ殺せるってもんだ!」
「サンダリ~、悪いやつ倒す~」

 アイシィとファイフィのみならず、サンダリまでもが怒りで拳をきつく握り締める。

 あまりにも酷い惨状と侮蔑の言葉に、俺も頭に血が上りそうになる。

 けど、駄目だ!
 冷静に状況を分析しろ!

 じゃないと、恐らく――〝俺たち〟も〝一瞬で殺される〟。

 空から見下ろすダダークは、一人だ。
 精神操作していたであろうモンスターの軍勢は、全員死んでいる。

 そして、モンスターも人間も、みんなの身体中に開いた穴。
 何かで貫かれたのか? しかも、モンスターたちも巻き添えにして?

「クックック。仲間を失って寂しいだろ? 安心しろ。てめぇらもすぐに仲間のもとに送ってやる」
「!」

 ダダークが無造作に手を翳す。

 来る! 恐らく〝最短距離〟から!

「みんな、飛べ!」

 大きく跳躍した俺につられて、アイシィたち三人も舞い上がると。

「「「!」」」

 一瞬前まで俺たちがいた場所に、岩で出来た無数の巨大な棘が地面から生えた。

 荒野を覆い尽くす程の夥しい数の棘に、騎士団・魔法師団、全員S級まで戦闘能力が上がっていたはずの武闘団までもが全滅した理由が分かってしまう。

 ソイリィから奪った土精霊の力をこんな風に使いやがって!

 アイシィに抱き抱えられながら眼下を見ると、岩棘は更に伸びて迫ってくる。まるで獲物を求めるが如く。

「でも、それだけならそれ程の脅威じゃない! 今の内に術者を叩けば!」

 ダダークを睨み付けるが、アイシィが悲痛な声を上げる。

「師匠! 上もです!」
「!?」

 見上げると、空には数え切れない程の水槍がこちらを狙っていた。

「ハッ! 両側面からも来るよ!」
「後ろも~」

 左右と背後には、幾多の風刃が。

「そして正面には――」
「聖樹だ。〝魔樹〟と呼んだ方が良いかもな」

 朽ち果てたはずの世界樹が、再びその巨大な姿を現す。
 漆黒のオーラで覆われたその前には、硬化した数多の巨大棘、その最上部にはダダークが立っている。

「くっ!」

 精霊王女たちから奪った力が、俺たちを追い詰める。

「ヒャハハハハハハ! これが俺様の力だ! てめぇらも串刺しになって死にやがれ!」

 ダダークがパチンと指を鳴らすと、上下前後左右から同時に棘・水槍・風刃が襲い掛かる。

「俺は正面と上を!」
「私は左右を!」
「下やる~」
「あたいは後ろと、足りない所を!」

 素早く役割分担をして、猛攻を凌がんとする。

「はあああああああああ!」
「やあああああああああ!」
「おらああああああああ!」
「えいや~」

 俺は正拳突きにより衝撃波を飛ばし、俺を抱き抱えているアイシィは、両手の指を動かして氷柱を放ち、サンダリは少ない手数ながらも、一発一発の貫通力と破壊力を極限まで高めた雷撃を発動、ファイフィは手数の多さを活かした膨大な数の猛炎で、それぞれ迎撃する。

 みんなかなり頑張ってくれている。
 だけど。

「くっ! 数が多過ぎる!」

 必死に相殺しても、追い付かない。

 ここままじゃ――

 棘の群れに――

「呑み込まれて――殺される!」
 
 迎撃が間に合わず、世界樹の棘・水槍・岩棘・風刃が俺たちに届く寸前。

「何だと!?」

 あれ程あった棘・水槍・岩棘・風刃が全て消えていた。
 更には、世界樹も再度朽ち果て、崩れ落ちていく。

 振り返ると。

「フッフッフ。この水も滴る良い女アクエちゃんがやってきてやったっすよ!」
「吾輩も馳せ参じたであります!」
「ちっちゃいままだけど、あたしの魔法も気持ちもみんなに負けてないし!」
「アクエ! ソイリィ! ウィンドニー!」

 水・土・風の精霊王女たちの姿があった。

 更に。

「救って頂いた御恩をここでお返しいたしますわ!」
「ツーリ!」

 仲間たちから魔力を分けてもらったのか、力に満ち溢れた木の精霊王女もまた、空に浮かび、緑色のドレスの裾を摘まんでカーテシーを行う。

「アクエちゃんたちがアイツの力を抑え込んでおくっすから、その隙にあんたたちはアイツを倒して欲しいっす!」
「分かった! 任せておけ! ありがとう!」

 特にウィンドニーなんて、あんなに小さくなったのに、戦場に助けに来てくれるなんてな。確かに、他の子たちに気持ちで負けていないな。

「ちょっと! あたしちっちゃいんだから、巻き添えを食ったらぺちゃんこになっちゃうし! 早く離れるし!」

 前言撤回。やっぱ気持ちで負けとるやんけ。

 いや、でも――

「それで正解だ! その方が、俺たちも遠慮なく全力で戦えるからな!」

 ダダークを真っ直ぐに見据える。

「クックック。精霊どもの力を抑え込んだくらいで調子に乗るなよ? そんなものなんかなくても、俺様は最強なんだよ! 俺様が〝闇の精霊王〟であり〝魔王〟である理由を、その身体でとくと味わいやがれ! おらぁ!」

 ダダークが天に手を翳すと。

「貴重な体験させてやるぜ! てめぇらが住んでる大陸を〝逆さま〟に見るっていう体験をな!」
「「「「!?」」」」

 〝空〟から〝大陸〟が〝落ちてきた〟。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに

試運転中
ファンタジー
山を割るほどに剣を極めたおとん「ケン」と、ケガなど何でも治してしまうおかん「セイ」。 そんな二人に山で育てられた息子「ケイ」は、15歳の大人の仲間入りを機に、王都の学園へと入学する。 両親の素性すらも知らず、その血を受け継いだ自分が、どれほど常軌を逸しているかもわからず。 気心の知れた仲間と、困ったり楽しんだりする学園生活のはずが…… 主人公最強だけど、何かがおかしい!? ちょっぴり異色な異世界学園ファンタジー。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...