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19.「魔王軍幹部の居場所」

 ズイポ村の毒責めからやっと解放――じゃなくて、見た目はアレだけど美味しい料理をたっぷりご馳走になった後。

 朝早く起きた僕らは、南東にあるガルティファーソン帝国へと向かった。

「スピガアアア!」

 スピドラの背に乗り、一旦西へと進み、大きな街道へと戻った後、南東へと進路を変更。

 温暖だけど日本に比べると湿度が低くてカラッとした晴れ空の下、僕らが誇る巨大なS級モンスターが猛烈な勢いで街道を走り、たまに擦れ違う馬車の御者が二度見する。

「ハッ! 移動には馬車っていう常識をぶっ壊すのは気持ちが良いね!」
「きゃっ! リュウさま、ごめんなさい。体勢を崩してしまって……」
「いえいえ。大丈夫ですか?」
「はい。でも、まだ揺れてて怖いので、暫くはこのままでいさせて下さいませ……」
「何が『体勢を崩して』よ! 今何も無かったわよね? スピドラちゃんのおかげで安定してるし! わざとらしく抱き着くのを止めなさいって言ってるでしょ!」

 いやぁ、みんな仲良しで良いなぁ~。

※―※―※

 丸一日走って、ガルティファーソン帝国の帝都であるジェイネードに到着したのは夜だった。

「ご苦労さま。ありがとね、スピドラ」
「スピガ!」

 少し手前でスピドラには消えてもらって、西側城門に近付き、衛兵さん二人に冒険者カードを見せて旅をしている旨を伝え、中に入らせてもらう。

 異世界に来てから初めて違う国に来たけど、南だからか、少し暑い、という点はあるものの、帝都の見た目は王都に似ていた。中も外も。

「よしゃ! 肉食うぞリュウ!」
「はい! モリモリ食べます!」
「ちゃんと野菜も食べなきゃダメよ、リュウ君!」
「あら? 野菜じゃなくて『わ、私の……を食べて……』じゃないんですの?」
「いい加減それはもう忘れて!」

 赤面するマイカさんと共に、まずは宿を確保して、中央通りのレストランで夕食を食べた。

 宿に戻った後。

「リュウさま。ぐっすりと眠れるように、私が尻尾で包んで差し上げますわ」
「え!?」
「ちょっと、なんでまた抱き着いてんのよ! 離れなさい!」
「ハッ! じゃああたいも」
「エルアまで何やってんのよ!?」
「あら? マイカさまは宜しいんですの?」
「うっ……」
「ったく。しょうがないね。ほら、ここ譲ってやるから」
「……どうも……っていうか、これは、あなたたちがリュウ君に変なことをしないかを見張るためだからね! ……ごめんね、リュウ君。ここで寝ても良いかな……?」
「べ、別に良いですけど……」
「……良かった……! ……ありがとね……」

 ……何故かキングサイズのベッドに四人で密着しながら眠った。
 ……甘くて良い匂いするし、なんかもう色々柔らかいし、あったかいし……!

 ああもう! きっとドラゴンだったら、こんな時動揺したりしないのに!
 ……僕はまだまだ修業不足だ……

 ……結局、ずっとドキドキしっぱなしで、全然眠れなかった……

※―※―※

 翌日の早朝。

「ふわぁ~」

 盛大に欠伸をしてしまった僕は、両頬を叩いて気合いを入れる。

「まずは冒険者ギルドだ!」

 情報収集をしなくちゃね。
 塔攻略は勇者パーティーに任せて、僕らは魔王軍幹部の方を叩くんだ!

「すいません。ちょっと聞きたいことがあるんですが」

 冒険者ギルドに行き、受付で早速質問しようとすると。

「! このお名前は……少々お待ち下さいませ」

 僕の冒険者カードを見た受付嬢さんが、どこかに行って戻って来たかと思うと、「どうぞ、ギルド長室へとお越し下さい」と告げた。

 事情が呑み込めずマイカさんと顔を見合わせるが、彼女も肩を竦める。

※―※―※

「まさか勇者パーティーの者が来てくれるとはな」
「え?」

 部屋へ通された僕らを迎えたのは、渋い中年男性だった。
 来る途中で受付嬢さんが教えてくれたのは、元S級冒険者という情報だった。
 道理でがっしりしていて、ものすごく強そうな雰囲気を醸し出しているはずだ。

 彼が知っているということは、もしかしたら、ロドリアス王国と他の国々の間で、異世界召喚された勇者パーティーのメンバーに関する情報は文字などの通信魔導具で共有されているのかもしれない。

 召喚したのはロドリアス王国だけど、別に一国で独占しようなんて気はなくて、勇者は世界各国共通の財産、みたいなイメージみたいだ。

 ただ、どっちにしろ、僕はもう勇者パーティーじゃないんだけどな。

「俺はギマルタスだ。この冒険者ギルドの長をやっている」
「僕はリュウです。あの、実は僕らはもう――」
「リュウ殿、そしてお仲間の方々。どうぞ掛けてくれ」
「あ、はい、ありがとうございます。失礼します」

 促されて、僕らは椅子に座る。

「大したもてなしも出来ず申し訳ない」
「いえ、お構いなく。それよりも、僕らはもう――」
「ところで……失礼だが、人数が一人足りないようだが? メンバーも、事前に聞いていた情報と違うように見える」

 よし、チャンスだ! やっと説明出来る!

「あの、実は……」

 僕は、正直に事情を話した。

※―※―※

「……なるほど、リュウ殿は理不尽にも追放され、怒ったマイカ殿は脱退したと。その男どもは、何ともけしからんな」
「信じて頂けるのですか?」
「ああ。実は、俺は鑑定のスキルを持っている。しかも俺のはちょっと特殊でな。ステータスだけでなく、発する言葉の真偽も見抜くことが出来る」
「へぇ~! すごいですね!」

 称賛のつもりか口笛を吹くエルアさんを、「はしたないですわよ」と、ウルムルさんが睨みつける。

「そんな状態にもかかわらず、新たにパーティーを組み、独自に魔王討伐を志すとは! 天晴れ!」

 なんかべた褒めされて、こそばゆい……
 でも、みんなはともかく、僕に関しては、今までもこれからも、全部ドラゴンのおかげなんだけどね。
 
「そんな君たちには、是非とも我が国の皇帝に謁見して欲しい」
「え!? 僕たちがですか?」
「私たち、もう勇者パーティーじゃないんですが……」
「なぁに。言っただろ? 鑑定のスキルを持っている俺から見て、君たちは信頼に値する冒険者たちだ。ステータスも申し分ない。提案じゃ足りないな。これは俺からの頼みだ。我が皇帝に謁見していってくれ」
「分かりました。そこまで仰るなら」

 こうして僕らは、皇帝さまに会うこととなった。

※―※―※

「よくぞ来てくれた。話はギマルタスから聞いているぞ」

 玉座に深く座る皇帝さまは、見るからに高そうな衣装に身を包んだ初老で白髪・白髭の男性だった。

 帝都の中央に位置する王城、その謁見の間にて、仲間と共に片膝をつく僕は、ついさっきの出来事が既に情報共有されていたことに驚きつつ、また通信魔導具かな、と内心で呟く。

「貴公らに頼みがあるのだが――」

 皇帝さまがチラリと一瞥すると、側近らしき大柄な剣士が、一歩前に出た。

「その前に。リュウ殿、失礼だが、力を試させて欲しい。良いだろうか?」
「僕ですか? 僕で良ければ」

 剣士が近付いて来ると、僕を見下ろした。

「俺は近衛隊長だ。剣を構えてくれないか? そこに俺が剣を打ち下ろす」
「分かりました!」
「案ずるな。軽く打つだけだ」
「はい!」

 ショートソードを抜き、横に向けた状態で上に掲げた僕に対して、近衛隊長さんがロングソードを上段に構える。

 何かが動いた気配がしたので、目を向けると、皇帝さまが、人差し指を上げた直後に他の四本も上げて、手の平を見せた。

 と同時に、目を見開く近衛隊長さん。

「はああああ!」

 全身の筋肉が膨張、一瞬で彼の全身が闘気に包まれる。

「はぁ!」

 体重を乗せた重い一撃。

「ふぅ、ビックリしたぁ」
「!」

 何とか耐えることが出来た。

「ほう……!」
「どうでしたでしょうか?」
「申し分ない」
「そうですか! 良かったです! ありがとうございました!」

 ペコリと御辞儀する。

 それにしても、近衛隊長さん、宣言通り、軽く打ってくれたんだ! 

 伝説の武器だからギリギリ受け止められたけど、僕自身はまだまだ弱いからね。
 僕が怪我しないように手加減してくれるなんて、良い人だなぁ!

「早速だが、頼みというのは、我が国を救って欲しいのだ」
「国を……どういうことでしょうか?」
「うむ。実は今、南の国境にある砦が、モンスターの軍勢に襲われていてな。その数、千」
「千匹ですか!?」

 生きる伝説と謳われるゼラグドさんの王都防衛戦を思い出す。

「そうだ。元々二千匹だったのだが、国軍が多大な損害を出しながら半分に減らした。が、もう軍に余力は残されていない」
「では、僕らが行って、モンスターの大軍を倒せば良いんですね!」
「そうだ。しかし、問題はモンスターの数だけではない」

 皇帝さまは、「その中に」と言うと、低い声で続けた。

「魔王軍幹部――三大将軍の一人がいるのだ」
「「「「!」」」」

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