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31.【一方勇者たちは(マイカたちを陵辱するために寝込みを襲う)】

「くそがっ!」
「まぁまぁ、ちゃんと怪我も治ったから良いじゃないですか」
「言い訳ねぇだろうが!」

 クラーケン戦の三日後の昼。
 皇都に戻ったアキラは、男性陣だけで昼食を食べていた。

 クラーケンに〝ワンパン〟ならぬ〝ワン触手〟で重傷を負わされ虫のように森の中を這い、文字通り這う這うの体で逃げたアキラたちは、あの後、何とか生き延びることに成功した。

 さっさと逃げて森の中で待っていた美人治癒師に回復魔法で傷を治してもらった後、奇声と共に殴り掛かろうとしたアキラを、トモユキが必死に羽交い締めして止めた。

「ガハハハッ! あの女たちをクビにして、また新たにメンバーを探すか?」
「……いや、それは面倒臭すぎるから無しだ」

 タイガの問いに、アキラは首を振る。

 南塔攻略時にアキラはLV71のS級となっており、タイガとトモユキは二人とももう少しでL70に届くのだが、女性陣もレベルアップして四人ともLV60前後となっている。

 もしも今女性陣をクビにした場合、今の彼女たちと同程度以上のレベルでなお且つ彼女らと同じくらいの美人な冒険者をすぐに見つけられるかと問われれば、かなり難しいだろう。

「俺様は、あのクソガキに負けるわけにはいかねぇんだよ!」

 周りから可愛い可愛いと言われチヤホヤされる、憎たらしいリュウの姿が脳裏に浮かび、歯軋りする。
 
 新メンバー探しに時間を費やしている暇などない。

 街中で聞いたリュウの噂話は、アキラのプライドをズタズタに引き裂くのに十分だった。

「あのクラーケンを討伐した? しかも、魔王幹部である三大将軍を二人も倒した? 褒美として最高位の爵位を貰い、豪邸も貰い、高級宿に泊まり放題で、褒賞金が合計金貨三千枚だぁ!? ふざけるのも大概にしろよ! てめぇの力じゃねぇだろうが! 全部S級冒険者とA級冒険者の仲間、そして何よりマイカのおかげだろうが!」

 前金として金貨十枚しか貰えなかった自分との境遇の差が、否応なしに神経を逆撫でする。

 こっちだって、魔王が生み出した塔を二つも攻略してるんだ!
 にもかかわらず、誰も俺様のことを褒めやしねぇ!
 何なんだこの差は一体!?

「とにかく、時間がねぇんだ! あのクソガキが手をこまねいている間に、俺様たちが残り二つの塔を攻略するんだ!」

※―※―※

「と言いながら、すぐに東塔攻略には行かないんですね」
「うるせぇな。てめぇだって、ついて来てんだろうが」
「まぁ、それはそうですが」

 その日の深夜。
 アキラたち男性陣三人は、高級宿街へと来ていた。

 煌びやかで大きな宿が立ち並び、アキラたちが泊まっている冒険者御用達の安宿とは大違いだ。

「時間が惜しいのは確かだが、それはそれとして、あのクソガキには落とし前をつけてもらわねぇとな!」

 路地裏からアキラたちが視線を向けるのは、左端にある高級宿。
 リュウたちが泊まっている宿だ。

 〝英雄〟だとか持て囃されている彼らの宿泊場所を特定するのは難しくなかった。
 皇都中の皆が噂しているからだ。

 チッ。何が〝英雄〟だ。

 ここに来た理由は一つ。

「あのクソガキを半殺しにしつつ人質に取り、女どもを強姦してやる!」

 調子に乗っているリュウを叩きのめし、彼の女を陵辱するためだ。

「ボコボコにされた挙句、自分の女たちが目の前で俺様たちに犯されてヒーヒーよがってる姿を見たあのクソガキがどういう反応するのか、今から楽しみでしょうがないぜ! ギャハハハハ!」

 下卑た笑い声を、しかし夜中なので出来るだけ小さな声で上げるアキラ。

 S級冒険者であるウルムルはもちろん、A級冒険者であるエルアも賢者であるマイカも手強い。

 が、彼女らには弱点がある。
 それがリュウだ。

 リュウを追放したらあっさりと勇者パーティーを抜けたマイカが一番分かりやすいが、ウルムルとエルアも、リュウのパーティーに加入しているということは、どうせ町の女どもと同じく、彼のことを可愛い可愛いと褒めそやす手合いだろう。

 リュウを押さえてしまえば、女性陣は抵抗出来なくなる。
 その上で強姦するのだ。

「俺様はマイカを滅茶苦茶に犯す。てめぇらには、残り二人の美女をくれてやる」
「ガハハハッ! 貴族令嬢の狼獣人のグラマラス美女か。抱き心地が良さそうだ!」
「クックック……。強気で美しいエルフ女性……中々にそそりますね……」

 高級宿のフカフカのベッドで、存分に泣かせてやる。

 やべっ。
 涎が垂れてきた。

「『スリープセント』」

 手に持った魔導具を起動させる。

 持ち主の意識を読み取って、指向性を持たせた香水を噴出して操作出来る〝睡眠魔導具〟だ。

「……あ……れ……?」
「……何だか……眠く……」

 倒れる二人の男たち。と同時に、香水を霧散させる。
 流石高級宿、見張りがいたが、これで無力化することが出来た。

 まぁ、もう一つ、〝特殊な鍵が掛けられた分厚い玄関〟という関門があるのだが。

「問題ない。これを使えばな」

 アキラが黄金の鍵を見せる。

 それは、鍵穴に応じてどんな形にも変形する、〝鍵形魔導具〟だった。

 ちなみに、この〝鍵形魔導具〟も先程の〝睡眠魔導具〟も、どちらも、A級モンスターの牙や角などを売って得た金と皇帝から前金として貰った金貨十枚を使って、闇ルートで購入したものだ。

 金欠に喘いでいたアキラだったが、もしこの襲撃が上手くいけば、リュウへの恨みを晴らし、マイカへの想いも強姦という形で成就し、なお且つずっと溜まりっぱなしの性欲も満たすことが出来るのだ。

 一石二鳥どころか、一石三鳥である。

 そのためならば、多少の出費は仕方ない。

「さぁ、行くぞ!」
「ガハハハッ! 存分に抱いてやるぞ!」
「クックック……。しっかりと調教してやりましょう」

 邪な笑みを浮かべるアキラたちが、意気揚揚と門に向かって歩き始めると。

「ディテガ!」
「これは……トカゲでしょうか?」

 門の前、地面にちょこんと佇んでいる、子犬くらいの大きさのトカゲのような生き物。

「いや、コイツは……まさか……!?」

 どうやら先刻までは、見張りの身体に隠れていたらしいそれを見たアキラの背中を悪寒が走る。

 嫌な予感は、その直後に的中した。

「スピガ!」

 建物の陰――左手から出て来たのは、巨大な生物。
 色は違えど、その巨躯と外見は、以前毎日目にしていたものと酷似している。

「コイツは、あのクソガキのトカ――ぐぁっ!」
「がはっ!」
「ぐはっ!」

 気付いた時には、三人とも宙を舞っていた。

 何が起きた? 
 俺様は、攻撃を受けたのか?
 あの一瞬で、殴られて、吹っ飛ばされた?

 巨体の癖に、体重移動の動きすら全く見えなかった。

 立ち上がり、慌てて聖剣を抜く。

「気を付けろ! コイツ、恐ろしく速――ぐぼっ!」
「ぎゃはっ!」
「ぼべっ!」

 再び夜空を見ながら弧を描く。

 攻撃される瞬間が分からないから、防ぎようがない。
 腹が痛むことから、殴られたということだけは辛うじて分かるが。

「何なんだコイツ!? 俺様はLV71のS級だぞぼばっ!」
「動きが早過ぎばぶっ!」
「全く見えませぐばっ!」

 何度も吹き飛ばされ、ダメージが蓄積されていったアキラたちは。

「ちくしょう! トカゲに護衛させるとか卑怯だぞ!! あのクソガキがあああああああああああああああああ!!!」

 大量の鼻血を出し、涙混じりの捨て台詞と共に逃げ出した。

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