42 / 44

42.「vs魔王」

「ほれ、集中するのじゃ。一瞬で全滅してしまうぞ? ほれ」
「! みんな、避けて!」

 魔王が凝縮した魔力を親指で弾いた〝指弾〟が、高速で飛ばされ、壁に穴を開ける。
 目で見てから避けるのは困難なため、予め射線上から離脱するしかない。

「こういうのはどうじゃ? ほれ」
「くっ!」

 上げた爪先を勢いよく下ろしただけで、風刃が放射状に射出、床を削りながら襲い掛かる。

「おらああああ!」
「はあああああ!」

 跳躍したエルアさんとウルムルさんが頭上から狙うが。

「ほれ」
「うわあ!」
「きゃあ!」

 大斧と棍棒を素手で掴んだ魔王が投げ飛ばすと、二人は壁に叩き付けられる。

「『エリアウルトラヒール』! 『サンダーブレード』!」

 パワドラ含め、仲間たち全体をドーム状の輝きで包み癒やしつつマイカさんが放った三本の雷刃を、指弾で撃ち落とす魔王。

「ハッ! 隙が無さすぎて笑えないね!」

 回避しながら観察していた僕は、肩に乗せたディテドラに魔王の魔力の流れを感知してもらいつつ、「大丈夫です!」と、仲間たちに告げる。

「LV1000は一時的なものです! そんな力を常に出し続けられるなら、ドラゴンの力なんて必要としなかったはずですから!」

 魔王は回し蹴りによって魔力を帯びた刃を放ち、身体の大きなパワドラを消しつつ僕は屈んで回避、仲間たちも何とか避ける。

「ドラゴンを欲したのは、妾自身が手を下すのが面倒臭かったからじゃが、まぁ、其方が言うことも間違ってはおらん。あくまで短期決戦用のものじゃ」

 魔王は、「じゃが、其方らを皆殺しにするには、十分な時間だと思うがのう」と言葉を継ぐと、天に手を翳した。

「賢者よ。其方は確か、雷魔法が得意だったかのう? 妾も少々雷魔法には心得があるのじゃ。こんな風にのう」

 刹那。
 魔王城の屋根と天井を吹っ飛ばして、落雷。

 いつの間にか暗雲が立ち込めていた空から、無数の雷が魔王の手の平に落ち、バチバチと放電現象を起こしながら、凝縮されていく。

「みんな、固まって!」
「『エリアプロテクト』!」

 〝圧縮された雷そのもの〟のようになってしまった魔王には近付くことすら出来ず、マイカさんが防御魔法の光で全員を包む。

「『サモン』! がはっ!」
「リュウ君! 大丈夫?」
「平気……です……。……癪ですが、さっき乗っ取られた時に、無理すればたくさん呼べることが分かったので……」

 吐血しつつ僕が四体のドラゴンを同時に召喚すると、魔王が愉快そうに嗤った。

「ククッ。どれだけ持ち堪えられるかのう? 『アストロノミカルサンダー』」

 凝縮された数多の雷が一気に放出。
 と同時に、こちらも迎撃する。

「ファアガアアア!」
「アイガアアア!」
「ウォオガアアア!」
「ポイガアアア!」
「『サンダートルネード』!」

 ファイアドラゴン、アイスドラゴン、ウォータードラゴン、ポイズンドラゴンがドラゴンブレスを吐き、マイカさんが雷の竜巻を放つ。

「その程度かのう?」
「くっ!」

 僕らの総攻撃が、魔王の雷撃によって徐々に押されていく。
 恐らく僕らを包む防御魔法も、簡単に破壊されてしまうだろう。

「何も出来ないってのかい!」
「歯痒いですわ!」

 僕は、必死に思考を重ねる。

 他に何か出来ることはないか?
 魔王に対抗出来るような、この事態を打開できるような何かがないか?

 ! そうだ、ドラゴンは?
 他に召喚して戦えそうなドラゴンはいないか?

「あ!」

 そこで、僕は漸く思い至った。

 名前の無いドラゴンだ!

「『サモン』!」

 早速呼んでみるが。

「……あれ? 『サモン』!」

 一向に召喚されない。

「ディテドラ!」

 ディテドラに感知して調べてもらうと。

「ディテガ!」
「え!?」

 段階を踏む必要があるとのことだった。

 彼の言葉に従って、まず僕は、彼女を呼び出す。

「ラクドラ!」
「ラクガアアア!」

 虹色の彼女を出現させることによって、幸運値が上昇。

 その上で、〝こんなドラゴンに来て欲しい〟という願いを僕が込めながら呼ぶと、その通りのドラゴンが召喚されるという。

「あともう一息じゃのう。ヒヒヒヒヒ」
「ファアガアアア!」
「アイガアアア!」
「ウォオガアアア!」
「ポイガアアア!」
「やあああああ!」

 既に魔王の雷撃は眼前まで迫っている。

 この窮地から救ってくれるドラゴン!
 絶望的な状況を変えてくれるような!

 いや、変えるというよりも、むしろ……!
 そうだ!

「『サモン! イレイズドラゴン』!」
「イレイガアアア!」

 現れたのは、まるで月光を纏っているかのような、銀色に光り輝くドラゴン。

「行けええええええ!」
「イレイガアアアアア!」

 大口を開けたイレイズドラゴンから放たれたドラゴンブレスが、魔王の雷撃に触れた瞬間。

「何じゃと!?」

 雷撃が〝フッ〟と消滅。

「くっ! ならば! 灰燼と化せ! 『アルティメットヘルファイア』!」

 空を埋め尽くした夥しい数の獄炎が、落下して来るが。

「イレイガアアアアア!」

 イレイズドラゴンは、その全てを消して。

「これならどうじゃ! 穿て、『ジェットブラックデーモンソード』!」

 星の数程の漆黒魔剣が天から降り注ぐが。

「イレイガアアアアア!」

 それらもまた消え去って。

「ぐっ!」

 とうとう、魔王へと、ドラゴンブレスが届いた。

 右半身を失った彼女は、左半身も消滅していく。

「一旦退いた方が好さそうじゃな。『ワープ』」

 空間転移魔法を唱えるが。

「魔法すらも消すというのか!?」

 発動出来ず。

「……どうやら、見誤ったようじゃな。千年前と違い〝この世界の理〟から外れた存在となったドラゴンの底力を。今回は、妾の負けじゃ。じゃが、妾はまた復活するからのう! 次は千年と言わず、近い内に復活してやるのじゃ! そしてまた、大勢の人間を喰らい、今度こそ、滅ぼしてやるからのう! ヒヒヒヒヒ!」

 魔王の肉体が消えた。

「そんな……せっかく倒したのに、また復活しちゃうだなんて……」
「チッ! いたちごっこじゃないか!」
「これでは、本当の平穏は訪れませんわ……」

 顔を曇らせる仲間たちに、僕は告げる。

「大丈夫です! 何たって、ドラゴンは最強ですから!」

 僕は、肩上の相棒に声を掛ける。

「ディテドラ!」
「ディテガ!」

 ディテドラが、〝見えないソレ〟を感知した。

「よし! イレドラ!」
「イレイガアアア!」

 イレイズドラゴンがドラゴンブレスを吐くと、壁が消失。
 不可視であるはずの〝ソレ〟の輪郭が薄っすらと見えて。

『なっ!? 馬鹿な! 〝魂〟にまで干渉するじゃと!?』

 壁を擦り抜けて逃げようとしていた魔王の〝魂〟――揺らめく炎のようなそれが、少しずつ消えていく。

『こ、こんなはずでは……ぎゃああああああああああああああああああああ!!!』

 魔王の〝肉体〟とその〝魂〟までが、完全に消滅した。

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。