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44.エピローグ

「はぁ、仕方ないわね……。……『エリアウルトラヒール』……」

 心の底から嫌そうな表情でマイカさんが全体回復魔法を使う。

「ふぃ~、助かったぜ!」
「ガハハハッ! 流石のこのタイガも本気で死ぬかと思ったぞ!」
「クックック……ワタシもです。ですが、正直、ほんの少しだけですが、快感を感じました! ああ! 新たな扉が開かれましたよ!」

 トモユキさんの頬がツヤツヤして、何だか嬉しそうだ。
 よく分からないけど、おめでとうございます!

「リュウ!」
「はい!」

 久し振りにアキラさんに名前を呼ばれた気がする。
 というか、こうやって会ってちゃんと話をすること自体が久方振りだし。

「あ、もしかしてアキラさん、ドラゴンの強さに見惚れちゃいました? 本当、ドラゴンって強くて格好良いですよね?」
「は? 俺様がそんなこと思うわけ――」
「あれっ?」

 突如ふらついた僕は、倒れ掛ける。

「っと! 大丈夫、リュウ君?」
「……だ、大丈夫です。あはは……この程度で情けないですね。ドラゴンだったら、こんな格好悪いところ絶対に見せないのに」

 僕が苦笑いしていると、アキラさんがポツリと何か呟いた。

「てめぇ、そんなボロボロになるまで……限界を超えて戦いやがって……」
「?」

 小さ過ぎてよく聞こえなかったが、彼は言葉を継いだ。

「……ちょっとだけだ」
「え?」
「だから、ちょっとだけだって言ってんだよ!」
「何がですか?」
「てめぇが聞いたんだろうが!」
「僕が……?」
「……ああもう! わーったよ! 俺様を救った褒美だ! 言ってやるよ!」
「?」

 何を言うんだろう?

「……悔しいが、ちょっとだけ……格好良かった」
「!!!」

 衝撃が僕の身体を突き抜ける。
 まさかアキラさんにそんなことを言ってもらえるだなんて、夢にも思っていなかった!
 すごく嬉しい!

「ですよね! ドラゴン、格好良かったですよね!」
「何言ってんだてめぇ?」
「え?」
「俺様が言ってるのは、てめぇだ」
「……はい?」
「トカ――ドラゴンのことじゃねぇ。強くて格好良かったのは、てめぇ自身だって言ってんだよ」
「そんな!? 何でですか!? ドラゴンが強くて格好良いって言ってくださいよおおおおおおお!」

 明るく照らされた王都に、僕の叫び声が響いた。

※―※―※

 復活した人たちは、魔王に生きたまま食い殺された際の記憶を失っていた。

「良かった……!」

 それが分かって、僕は正直安堵した。
 せっかく生き返ったのに、そんな記憶があったら、一生のトラウマになっちゃうからね。

 彼ら彼女らは、拉致された直後からの記憶を喪失していた(拉致された時のショックでみんな寝込んでいた、ということにさせてもらった)。
 
 そして、〝彼らが王城の地下牢にて監禁されていたのを僕たちが助けた〟ということにした。

 まぁ、〝何故、意識が戻った際に謁見の間にいたのか〟については、

「魔王を倒した後、謁見の間が、天井も屋根も吹き飛んでいて、悪い魔力が外に発散されて、なお且つ神の住まう神聖な天に近い場所となったため、そこで休んでもらった方が、意識を取り戻しやすいし、元気になりやすいと思ったから」

 という、かなり苦しい理由付けをしたが、何とか納得してもらえた。

※―※―※

 王城は、最上階にある謁見の間の天井と壁、更には屋根まで失われており、修復にはかなり時間が掛かると思われていたが。

「わ、私が、な、直しましょうか?」

 通信魔導具により連絡を受けた教皇さんが空間転移指輪でやって来ると、〝直す君〟という新たな魔導具を用いて、あっと言う間に修復してしまった。

 ロドリアスでの勢いそのままに、教皇さんはホワイトシュレイ共和国東端の村であるヴァウスブルームの家々も元通りにした。

「パパ! ママ!」
「フェーナ!」
「フェーナちゃん!」

 フェーナちゃんは、拉致されていた両親と再会し、村に戻って来ることが出来た。

「おにいちゃん、おねえちゃん、ありがとう!」
「何とお礼申し上げれば良いのやら……」
「本当に……本当にありがとうございました……!」

 満面の笑みを浮かべるフェーナちゃんと、涙ぐみ深々と御辞儀する御両親。

 良かった……!
 本当に良かった!!

※―※―※

「リュウよ、其方は本当に可愛いのう。んちゅ~」
「なんで魔王の時とやってることが同じなんですか!」

 生き返った本物の女王さまもドジっ娘らしくて、謁見した際に、つまずいて両腕を広げながら跳躍、唇を突き出し僕に触れる直前に、マイカさんが魔法の杖を差し込んで止める。

「コホン。……という冗談はさておき」
「本気でしたよね!」
「リュウ、マイカ、エルア、そしてウルムルよ。よくぞ魔王を討伐し、世界を救ってくれた。また、妾をはじめとして、魔王に喰い殺された者たちを生き返らせてくれたこと、心より感謝するのじゃ」
「いえ、当然のことをしたまでです!」
「ほう。それは殊勝な心掛け――」
「でも、すごいのはドラゴンです! 仲間たちの力も勿論大きいですが、一番はドラゴンです! ドラゴンのおかげで、世界は救われたんです!」
「う、うむ。そうじゃな。妾が生き返られたのも、魔王を完全に消滅させたのもドラゴンという話だったのう。天晴れ! 皆の者、ドラゴンに心からの賛辞を! 最大限の拍手を!」
「「「「「うおおおおおお!」」」」」
「「「「「ドラゴン! ドラゴン! ドラゴン! ドラゴン!」」」」」

 近衛兵の人たちもいるので、全員はこの場に召喚出来ないけど、ディテドラ・ラクドラと、魔王討伐を成し遂げたイレドラと女王さまたちを復活させたリザドラは呼び出して、存分に称賛を浴びてもらった。

※―※―※

「「「「「わああああああ!」」」」」
「魔王討伐の英雄だ!」
「〝ドラゴンの偉大さドラゴングレイトネス〟万歳!」
「本当にありがとう!」
「ドラゴンたちも、ありがとう!」

 約束通り、ガルティファーソン帝国とファーリップ皇国の皇帝さまたちは、ドラゴンパレードを行わせてくれた。

 更に、ロドリアス王国女王さまとホワイトシュレイ共和国の国家元首さまも、同様に取り計らってくれた。

「皆さん、ありがとうございます!」
「街の人たち、みんな素敵な笑顔だわ!」
「ハッ! 悪くないもんだね。こうやって称賛されるのも」
「皆さまの尊い安寧が守られた。その一助となれたことを、誇りに思いますわ」
「パワガ!」
「ラクガ!」

 一番の巨躯で最も迫力があるパワドラの背に乗った僕と仲間たちだが、街の人々に雄姿を見せるのは、パワドラとラクドラだけじゃない。

「スピガ!」
「ディフェガ!」
「ファアガ!」
「アイガ!」
「ポイガ!」
「ウォオガ!」
「ブロガ!」
「アスガ!」
「イレイガ!」
「リザガ!」

 そう。
 僕が召喚出来るドラゴン全員だ。

 LV2000となり、召喚LVが100となったことで、同時に召喚出来る数の制限が無くなったのだ。

「フラガ!」

 ちなみに、フライドラゴンだけは僕らの頭上を飛翔している。

「ディテガ!」

 拍手喝采に包まれて、僕の肩に乗るディテドラも嬉しそうだ。

 ただ。
 すごく光栄だし喜ばしいことではあるんだけど、もし一つだけ不満があるとしたら、「みんな何故か『ドラゴン〝も〟ありがとう!』と叫ぶことだ。『〝も〟』じゃなくて、『ドラゴンたち、ありがとう!』って言って欲しいんだけどなぁ。

 ま、いっか!
 あれだけアキラさんたちに馬鹿にされたドラゴンが、こうやって称賛を浴びることが出来てるんだから!

※―※―※

 そして。
 いよいよ、その日が来た。

「『サモン! ワープドラゴン』!」

 LV2000になった際に呼び出せるようになったもう一体の名無しドラゴンを、ラクドラに幸運値を上昇させてもらった上で召喚する。

「ワプガアアア!」

 あたかも小さな宇宙をその身体に内包しているかのような、黒いのに身体中にキラキラと星の輝きが散りばめられている、不思議な容姿。

 空間転移特化型ドラゴンである彼の能力で、僕が元いた世界へと戻るのだ。

「じゃあ、行きますよ!」
「ええ。リュウ君の世界に行けるの、楽しみだわ!」

 マイカさんと共にワプドラの背に乗ると、ふわりと浮き上がる。

「みなさん、では、お元気で!」
「本当に色々とありがとうございました!」
「妾は其方を待っておるからのう! 何年でも!」
「い、色々とありがとうございました! よ、良い旅を!」
「おにいちゃん、おねえちゃん、バイバ~イ!」
「またあそびにきてね!」

 女王さま、教皇さん、ローザちゃんとマイク君含め八名の孤児たち、そして、話を聞き付けて見送りに来た人々に手を振る。

「最後にエルアさんとウルムルさんと会えなかったのが残念です」
「本当ね。でも仕方ないわよね。二人とも外せない用事があるみたいだし」

 高空へと舞い上がっていく中、聴衆の端にいるゼラグドさんが号泣し、「うおおおおおおおん!」と、声にならない声を上げているのが見えた。

「まさか僕らのためにあんなに泣いて下さるなんて意外です。っていうか、女王さまもゼラグドさんも大袈裟ですよね。また何度でもワプドラの力で戻ってこれるのに」
「そうよね……って、え? ゼラグドさんが号泣!? ちょっと待って、それって、まさか――」

 マイカさんが眉間に皺を寄せた直後。

「リュウさま! 新婚旅行ですわね!」
「ウルムルさん!?」
「ハッ! 異世界への旅だなんて、これ以上ない程の常識破りじゃないか! レンベスに言ったら、泣いて悔しがってたよ!」
「エルアさんまで!?」

 ワプドラの背上に密かに忍び込んでいたらしい二人の出現に、唖然とする。

「っていうか、何どさくさに紛れて抱き着いてんのよ! 離れなさい! あと、尻尾でさわさわするなって言ってるでしょ!」
「二人とも……一体どうやって!?」

 僕の問いに、彼女たちは平然と答えた。

「ハッ! 簡単な話さ。貰い物のこの指輪のおかげさ」
「〝透明君〟という名前だそうですわ」

 二人の指には、見覚えのない指輪が嵌められていた。
 血のような赤い台座に目玉が三つ配置されており、製作者が誰かは一目瞭然だ。

「何で勝手について来たのよ!」
「あら、そんなに怖いんですの? リュウさまを私に取られるのが?」
「くっ! そんな訳ないじゃない!」
「うふふ。それなら問題ありませんわね」
「ハッ! じゃあ、あたいも参戦しようかね」
「なっ!? 聞いてないわよ!」
「そりゃこれだけ良い男だ。あたいもリュウを気に入ってるに決まってるだろ?」
「くっ! 完全に計画が狂ったわ……! でも、良いわ! こうなったら、二人とも、正々堂々と勝負よ! この旅で!」

 いやぁ、いつも通りみんな仲良しで良いなぁ!

「それじゃあ、僕のいた世界へと出発しますよ、みんな!」
「ええ、行きましょう!」
「ハッ! 色々と燃えてきたよ!」
「くすっ。楽しい旅になりそうですわ」
「ワプガアアア!」

 こうして僕は、大好きな仲間たちと、何より最強で格好良いドラゴンと共に、元いた世界へと旅立ったのだった。




―完―

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