絶望の魔王

たじ

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あれから、春人は、魔術研究所所長であるゲイン・ナイトカーン指揮のもと、様々な魔法の実験台にされていた。

分析室の隣には、研究員たちに処刑場と呼ばれている、ここ魔術研究所へと方々から連れてこられた、哀れな奴隷たちに非道な実験を行うための部屋があり、その部屋の壁に春人は鋼鉄の拘束具で張り付けられていた。

「…………グッ………………」

先程まで行われていた、魔術研究所が新しく開発した、魔法により身体中に傷をおった春人が低く呻く。

…………あいつら……。

春人の両隣にも、同じように壁に磔にされた、奴隷が2人おり、右隣の男はさっきからぐったりしたまま、ピクリともしていない。

と、処刑場の金属製の扉が開き、白い研究衣を着た研究員が2人、何かの瓶の載ったワゴンのようなものを押して入ってきた。

研究員の一人が、春人の右隣の男の脈を取りながら言った。

「…………こいつはもうダメだな。後で、回収しておくか」

もう一人の研究員が、ワゴンを押して春人の前まで来る。

「…………………………………………………………」

研究員は、無言のまま、睨み付ける春人を無視して、ワゴンの上の瓶の蓋を取り、その中の液体を手に取り、春人の体の傷に塗り込んだ。

「………………っっ!!」

薬を塗られた部分に痛みが走り、春人は思わず顔をしかめた。

やがて、2人の研究員は、連れ立って部屋から出ていく。

「………………くそっっ!!」

研究員の背中を見送りながら、春人がそう吐き捨てた。



     ◆  ◆  ◆  ◆


そんな酷い扱いを受けていた、ある日。

その日、春人は、度重なる実験により、気を失い再び、カプセルの中へと戻されていた。

1カ月ここにいる間に、緑の液体に対する耐性がついてきたのか、しっかりと意識を保ったまま、春人はカプセルの中で研究員たちに対する、激しい憎悪を募らせて歯軋りをした。

春人が閉じ込められているカプセルは、思いの外丈夫で、春人が殴ったり、蹴ったりしてもヒビ一つ入らなかった。

「くそったれっ!!」

カプセルの中に春人の呪いの声が響く。

その瞬間、ツカツカツカツカ、と部屋の外から、廊下をこちらに向かってくる複数の人間の足音が春人の耳に入ってきた。

そして、少ししてから、キィッ、と音を立てて扉が開く。

まず、鎧を着こんだ2人の男たちが入ってきて、そのあとに、両手を後ろで縛られた、髪の長い女性を引き連れた男が一人、入ってきた。


カッカッカッカッ。
室内に4人の足音が木霊する。

4人が春人の閉じ込められているカプセルの方へと近づいてきた。

項垂れて、ブツブツと罵倒の言葉を並べていた春人が、なんとなく顔をあげると、

「……………………っっ!?」

百合江っ!?な、なんで、ここにっ!?

驚愕に目を見開いた、春人の前を横切って、4人は、奥へと進んでいく。

春人は、あまりの事態に束の間、パニックになった。

百合江は……百合江はあの時、死んだはずだ!!

……はたして、一体どういうことなのか?
死んだはずの自分と百合江が、この、もといた世界とは明らかに異なる世界で再会するなんて……。

……しかも、よりにもよって、こんな、非道な人体実験を行っている場所で。

バシャンッ、という水音が微かに聞こえてくる。
おそらく、連れてこられた百合江がカプセルの中に閉じ込められたのだろう。

……ツカツカツカツカ。百合江を連れてきた、3人の男たちが、再び春人の前を横切って、扉を開けて外へ出ていく。

……まさかとは思うが、この世界は、所謂死後の世界というやつではないのか。

考えれば考えるほどに、春人の頭は混乱していった。



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