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第一章 本編
25 卒業パーティーでは……
一週間後、何事もなく学園の卒業式が執り行われ、ラビオナは首席として卒業生代表の言葉を在校生に残した。女子生徒たちは殊更感動し、感涙にむせんでいた。
卒業生の中には『淑女の称号』の勲章や『准淑女の称号』の勲章を胸に飾っている者もいる。
『淑女の称号』の勲章を胸に飾っている三名は高位貴族令嬢である。その傍らには婚約者と思しき紳士が寄り添っていた。
実は高位貴族令嬢たちの婚約解消は仮初のものであったのだ。高位貴族の領主たちは『王妃陛下主催の授業は自分の娘のスキルアップに繋がる』と直感し、形式だけ婚約解消をして参加させたのだった。『淑女の称号』を受けた十人のうち八人の令嬢は、試験の後で元の婚約者と再婚約している。高位貴族令嬢ばかりなので婚約者がいて当然だ。
王妃陛下はもちろんその意図をわかった上で受け入れた。
この国はまだまだ男性有利男性優先の風潮は拭えない。女性は自己流で勉強しても袖にされるだけだ。
だが国としては、女性が知識を持てば、男性はそれに負けない知識を持たねばならないとなるはずだ。結果、男女ともに知識見識教養が上がり、領地の発展、ひいては国力アップにつながると考えられる。
そういうことで、両陛下は常々女性用の勉強会を考えていた。だが、それを進言すれば、プライドの高い貴族の男たちの反発を招くのは必至だ。
そこへ湧いたように『メーデルが婚約破棄をされた』という騒動が持ち上がった。『王太子の婚約者選び』の勉強であったなら、高い教養を求めて当然のことである。誰も反対もできないし文句も言えない。
王妃陛下主導の元、高官を中心に計画を立て、メーデルとラビオナの婚約破棄から二ヶ月後に求人広告公示となったのだった。
とはいえ、プライドが高いだけの男たちばかりではなかったようだ。
『先日のお話で男たちの中にも気が付いた者がいるようね。気が付いたのなら、それを利用するだけですけどね』
王妃陛下は一年前の求人応募受付の様子を見たときからすでに『メーデルの婚約者狙い』ではない者たちの存在はわかっていた。
『男たち』とは、王妃陛下の授業の素晴らしさを見抜き、娘たちの婚約を仮解消までさせた高位貴族の当主たちのことであった。
もちろん、爵位に関係なく知識教養が高く、メーデルと一緒になって国を発展させていけるような婚約者となる女性がいてくれれば、さらに嬉しいことである。そうならば、メーデルをその場で王太子指名してもよいと考えていた。だが、そうは問屋がおろさない。
ちなみに、『淑女の称号』を受けた十人の中で、アリーナともう一人メイド試験を受け合格した令嬢は、王妃の婚姻後押しに対して、婚姻を望んでいないと返事をしている。
『准淑女の称号』を受けた淑女たちも、元婚約者の元へと戻ったり、よい仕事先が見つかったり、お茶会の世話係と称した殿方と婚約したりとみな幸せを掴んでいた。
〰️
卒業式の席に、卒業生の一人であるメーデルの姿はなかった。中級テストの結果を重く見た王妃陛下が『まずは国民の気持ちをわかりなさいっ!』と、翌日に王家領の管理人の館に送った。半年は帰ってこない予定だそうだ。
〰️
午後から執り行われた卒業パーティーには、ラビオナはパートナーを伴わず会場入りした。
「もうっ! 貴女たちは婚約者様といらっしゃるべきでしょう!?」
ラビオナは親友たち四人を扇の奥からチラリと睨んだ。
「婚約者とはこれからも一緒にいるのだし、パーティーのパートナーも彼になるのですもの。今日くらいは問題ないわ」
ヘレナーシャはたくさんの釣書の中から何名かとお見合いやデートをして、二ヶ月前に新たな婚約をしていた。
「そうよ。パートナーなしでパーティーに参加できるなんて、こういう機会でなければ無理でしょう。こうして五人で会場入りできるなんて素敵な思い出になるわ」
ユリティナは他の四人を嬉しそうに見た。
「時にはダンスもなしで、語らいたいわよね。早速ケーキを見に行きましょうよ」
エダリィが女子生徒たちがたくさんいるテーブルへと目を向けた。
「ラビオナこそ、パーティーのパートナーは婚約者でなくてもいいのですもの。貴女のパートナー希望者はたくさんいたのではなくって?」
マリアナは同等の公爵家として、家内の様子も予想がついているようだ。
ラビオナはたじろいた。確かに一年以上前の婚約破棄から釣書はいくつか来ていた。ラビオナの状況で公爵家として婚約者選びは難しい。それでも玉砕覚悟の釣書が届くのだ。
しばらくは婚約者を決めたくないと家に言っているのはラビオナであった。家族もそれに賛同してくれていることに甘えていた。
「そうね、ケーキを見に行きましょう」
ラビオナはマリアナに返事をせず、エダリィと並んで歩き始めた。他の三人は目を合わせて苦笑いし、後に続いた。
ケーキを食べ歓談していると、輝かしい五人と一緒であった思い出に一言お話したがる女子生徒や、求人広告勉強会で五人に感謝をしていた女子生徒たちに囲まれていた。
思い出に踊りたいと考えていた男子生徒たちはそこへ入っていく勇気まではなく、美しい五人を遠くから見て、同時代に学園生活ができたことをそっと喜んでいた。
〰️ 〰️ 〰️
翌日、ラビオナは兄ネビルードと共に王城へ出仕した。
王妃陛下の執務室に入ると大歓迎で王妃陛下に抱きしめられた。
そこにはかの高官が一人いるだけだった。
「改めて紹介するわね。わたくしの専属高官をしているクロード・ヤンバスティーよ」
「ラビオナ嬢。ご機嫌麗しく。今日もお美しいですね」
クロードは二次試験の日に馬車乗降場まで送ってくれた時の輝く笑顔を見せた。
卒業生の中には『淑女の称号』の勲章や『准淑女の称号』の勲章を胸に飾っている者もいる。
『淑女の称号』の勲章を胸に飾っている三名は高位貴族令嬢である。その傍らには婚約者と思しき紳士が寄り添っていた。
実は高位貴族令嬢たちの婚約解消は仮初のものであったのだ。高位貴族の領主たちは『王妃陛下主催の授業は自分の娘のスキルアップに繋がる』と直感し、形式だけ婚約解消をして参加させたのだった。『淑女の称号』を受けた十人のうち八人の令嬢は、試験の後で元の婚約者と再婚約している。高位貴族令嬢ばかりなので婚約者がいて当然だ。
王妃陛下はもちろんその意図をわかった上で受け入れた。
この国はまだまだ男性有利男性優先の風潮は拭えない。女性は自己流で勉強しても袖にされるだけだ。
だが国としては、女性が知識を持てば、男性はそれに負けない知識を持たねばならないとなるはずだ。結果、男女ともに知識見識教養が上がり、領地の発展、ひいては国力アップにつながると考えられる。
そういうことで、両陛下は常々女性用の勉強会を考えていた。だが、それを進言すれば、プライドの高い貴族の男たちの反発を招くのは必至だ。
そこへ湧いたように『メーデルが婚約破棄をされた』という騒動が持ち上がった。『王太子の婚約者選び』の勉強であったなら、高い教養を求めて当然のことである。誰も反対もできないし文句も言えない。
王妃陛下主導の元、高官を中心に計画を立て、メーデルとラビオナの婚約破棄から二ヶ月後に求人広告公示となったのだった。
とはいえ、プライドが高いだけの男たちばかりではなかったようだ。
『先日のお話で男たちの中にも気が付いた者がいるようね。気が付いたのなら、それを利用するだけですけどね』
王妃陛下は一年前の求人応募受付の様子を見たときからすでに『メーデルの婚約者狙い』ではない者たちの存在はわかっていた。
『男たち』とは、王妃陛下の授業の素晴らしさを見抜き、娘たちの婚約を仮解消までさせた高位貴族の当主たちのことであった。
もちろん、爵位に関係なく知識教養が高く、メーデルと一緒になって国を発展させていけるような婚約者となる女性がいてくれれば、さらに嬉しいことである。そうならば、メーデルをその場で王太子指名してもよいと考えていた。だが、そうは問屋がおろさない。
ちなみに、『淑女の称号』を受けた十人の中で、アリーナともう一人メイド試験を受け合格した令嬢は、王妃の婚姻後押しに対して、婚姻を望んでいないと返事をしている。
『准淑女の称号』を受けた淑女たちも、元婚約者の元へと戻ったり、よい仕事先が見つかったり、お茶会の世話係と称した殿方と婚約したりとみな幸せを掴んでいた。
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卒業式の席に、卒業生の一人であるメーデルの姿はなかった。中級テストの結果を重く見た王妃陛下が『まずは国民の気持ちをわかりなさいっ!』と、翌日に王家領の管理人の館に送った。半年は帰ってこない予定だそうだ。
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午後から執り行われた卒業パーティーには、ラビオナはパートナーを伴わず会場入りした。
「もうっ! 貴女たちは婚約者様といらっしゃるべきでしょう!?」
ラビオナは親友たち四人を扇の奥からチラリと睨んだ。
「婚約者とはこれからも一緒にいるのだし、パーティーのパートナーも彼になるのですもの。今日くらいは問題ないわ」
ヘレナーシャはたくさんの釣書の中から何名かとお見合いやデートをして、二ヶ月前に新たな婚約をしていた。
「そうよ。パートナーなしでパーティーに参加できるなんて、こういう機会でなければ無理でしょう。こうして五人で会場入りできるなんて素敵な思い出になるわ」
ユリティナは他の四人を嬉しそうに見た。
「時にはダンスもなしで、語らいたいわよね。早速ケーキを見に行きましょうよ」
エダリィが女子生徒たちがたくさんいるテーブルへと目を向けた。
「ラビオナこそ、パーティーのパートナーは婚約者でなくてもいいのですもの。貴女のパートナー希望者はたくさんいたのではなくって?」
マリアナは同等の公爵家として、家内の様子も予想がついているようだ。
ラビオナはたじろいた。確かに一年以上前の婚約破棄から釣書はいくつか来ていた。ラビオナの状況で公爵家として婚約者選びは難しい。それでも玉砕覚悟の釣書が届くのだ。
しばらくは婚約者を決めたくないと家に言っているのはラビオナであった。家族もそれに賛同してくれていることに甘えていた。
「そうね、ケーキを見に行きましょう」
ラビオナはマリアナに返事をせず、エダリィと並んで歩き始めた。他の三人は目を合わせて苦笑いし、後に続いた。
ケーキを食べ歓談していると、輝かしい五人と一緒であった思い出に一言お話したがる女子生徒や、求人広告勉強会で五人に感謝をしていた女子生徒たちに囲まれていた。
思い出に踊りたいと考えていた男子生徒たちはそこへ入っていく勇気まではなく、美しい五人を遠くから見て、同時代に学園生活ができたことをそっと喜んでいた。
〰️ 〰️ 〰️
翌日、ラビオナは兄ネビルードと共に王城へ出仕した。
王妃陛下の執務室に入ると大歓迎で王妃陛下に抱きしめられた。
そこにはかの高官が一人いるだけだった。
「改めて紹介するわね。わたくしの専属高官をしているクロード・ヤンバスティーよ」
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