【完結】おじさんに物申す! 貴方の奥さんが儚くなったのは娘さんのせいではありませんよ

宇水涼麻

文字の大きさ
5 / 17

疑問5 令嬢らしくないかしら?

しおりを挟む
「ノイデル卿」

 私が実の兄ジリーを名指しすると鬼の形相で睨む。私は敢えて『お兄様』ではなく他人のような呼びをした。

「では、お聞きしますが、わたくしがお母様に『わたくしを産んでほしい』とお願いすることは可能でしたか?」

「「「「は?」」」」

 ノイデル伯爵親子だけでなく、耳を澄ます者たちみな首を傾げる。
 オリビアの母親は、オリビアを出産したが心臓が弱かったらしく出産から三日後に儚くなった。

「腹の中の赤子がそんなこと言えるわけがないだろうがっ!」

「そうですよね。わたくしはこの世に生を受けお祖父様お祖母様の孫になれたことは、お母様に感謝しております。ですが、それはわたくしがお願いしたことではありません。
それなのに、なぜわたくしが人殺しと言われるのですか?」

「お前さえ生まれなければ母上は死ななかったからだっ!」

「それは違いますわ!」

 私はジリーを真っ直ぐに見た後、右手に体を回転させ、多くの招待客の方へと向けた。
 会場中がこちらに注目して黙っているので、やたらと声を張らずとも伝えることができる。

「みなさま。わたくしは今からここで、貴族令嬢らしからぬ言葉を多く使います。しかし、それはわたくしの尊厳を守るために使う言葉です。卑猥な意味をなす言葉ではなく知識としての言葉だと受け止めていただきたく存じます」

 私が恭しく頭を下げれば、あちらこちらで首を縦に振ってくれた。それを確認するとノイデル伯爵―実の父親―とノイデル卿―実の兄―へと向き直る。

「お母様のお命をお奪いになったのは、わたくしではなくノイデル伯爵です」

「ふっ! ふざけるなっ! 私は妻を愛していた。失う事など望んでいない!」

「そうですか。つまり、貴方の無知がお母様を苦しめたのですね」

「無知だとっ! 名誉毀損で訴えてやる」

「ええ。構いませんよ。今から何が無知なのか説明いたしますわ。それを聞いて名誉毀損なのか事実なのかお考えくださいませ」

 私の目が揺るぎないことにノイデル伯爵は動揺しているようだ。

 私は一つ大きく息を吸って話を始めた。

「子供ができるためには性交渉が必要ですね」

 成人したばかりの令嬢から『性交渉』という言葉が注目された公然の席で出されたことに一瞬ざわめく。
 しかし、すぐにざわめきは収まった。

「お祖父様に調べていただいたところ、お母様はお兄様をご出産した後、心臓を患われてしまったそうですね。これはノイデル伯爵もご存知だったはずです」

「妻の病状だ! 知っていて当然だ」

「そのお母様にとって、性交渉自体が体の負担になっているとはお考えにならなかったのですか?
わたくしはよく存じ上げませんが、性交渉における運動量は計り知れないものと聞きましたが?」

 私の言葉に頬を染めるご婦人方はいるが前もって卑猥な言葉も出ることは断っておいたので、私を罵ったり軽蔑したりする人はいなかった。

「私に愛しい妻を抱くなというのかっ!」

「ええそうです。お母様のお体を第一に考えるならそうするべきでした」

 私は大きく頷いてやった。

「わたくしはこちらに来てから、お祖父様のお手をお借りして、いろいろと調べてみました。
ノイデル伯爵。主治医はノイデル伯爵とお母様が揃ったところで、性交渉の危険性と娼館の利用を勧めたとおっしゃっておりました」

 いくら医者といえど私が男性と二人きりで会うわけもなく、お祖父様とバレルが一緒に聞いてくれている。私しか聞いてないと思われたら誤魔化されてしまう恐れもある。だから『お祖父様の手をお借りして』と前置きしたのだ。

「妻がいるのに、娼館へ行けというのかっ!」

「お母様のお体がそういう症状であるという特殊な状態です。当時、お母様も納得されていたと主治医が証言しております。
それに、お屋敷に来てくださる性交渉のお仕事の方もいらっしゃるそうですね」

 高級娼婦は家に呼ぶこともできる。実はそういう目的の夜会もあるそうで、需要のある仕事だ。

「性交渉を我慢するのは婚前なら皆していることです。どうしてもできないことではないということです。
婚姻後であっても理由があるのならそうするべきなのです」

 私のきっぱりとした口調に、ノイデル伯爵は悔しそうに睨みつけている。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

思惑通り──誰の?

章槻雅希
ファンタジー
王太子セレスティノは王立学院の卒業謝恩会で婚約者ベアトリクス・アルトドルファー公爵令嬢への婚約破棄を宣言した。傍らに男爵家の娘フローラ・ガウクを侍らせて。 この暴挙に国王は怒り、王太子セレスティノは廃嫡され、辺境の地へと流された。 ここまではよくある話である。そして、1か月後、王都には反乱軍が押し寄せ、王都民はそれを歓喜して迎え入れたのである。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。

旧王家の血筋って、それ、敵ですよね?

章槻雅希
ファンタジー
第一王子のバルブロは婚約者が不満だった。歴代の国王は皆周辺国の王女を娶っている。なのに将来国王になる己の婚約者が国内の公爵令嬢であることを不満に思っていた。そんな時バルブロは一人の少女に出会う。彼女は旧王家の末裔だった。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

常識的に考えて

章槻雅希
ファンタジー
アッヘンヴァル王国に聖女が現れた。王国の第一王子とその側近は彼女の世話係に選ばれた。女神教正教会の依頼を国王が了承したためだ。 しかし、これに第一王女が異を唱えた。なぜ未婚の少女の世話係を同年代の異性が行うのかと。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。

婚前交渉は命懸け

章槻雅希
ファンタジー
伯爵令嬢ロスヴィータは婚約者スヴェンに婚約破棄を突きつけられた。 よくあるパターンの義妹による略奪だ。 しかし、スヴェンの発言により、それは家庭内の問題では収まらなくなる。 よくある婚約破棄&姉妹による略奪もので「え、貴族令嬢の貞操観念とか、どうなってんの?」と思ったので、極端なパターンを書いてみました。ご都合主義なチート魔法と魔道具が出てきますし、制度も深く設定してないのでおかしな点があると思います。 ここまで厳しく取り締まるなんてことはないでしょうが、普通は姉妹の婚約者寝取ったら修道院行きか勘当だよなぁと思います。花嫁入替してそのまま貴族夫人とか有り得ない、結婚させるにしても何らかのペナルティは与えるよなぁと思ったので。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿しています。

【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。

ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。 彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。 婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。 そして迎えた学園卒業パーティー。 ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。 ガッツポーズを決めるリリアンヌ。 そのままアレックスに飛び込むかと思いきや―― 彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。

姉の引き立て役の私は

ぴぴみ
恋愛
 アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。 「どうしたら、お姉様のようになれるの?」 「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」  姉は優しい。でもあるとき気づいて─

私ですか?

庭にハニワ
ファンタジー
うわ。 本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。 長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。 良く知らんけど。 この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。 それによって迷惑被るのは私なんだが。 あ、申し遅れました。 私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。

処理中です...