【完結】公爵子息である僕の悪夢は現実になってしまうが愛しい婚約者のためにも全力で拒否します【幼少編】

宇水涼麻

文字の大きさ
46 / 61

46 貸金庫屋

しおりを挟む
 朝になったらしい。まだ暗いのに無理やり起こされて着替えもしないままメイドに背を押されて玄関に行くと馬車に押し込まれた。昨晩はクラリッサお義姉様とボブバージルへの怒りのままドレスを脱がずに寝てしまっていたみたいでドレスが重かった。ヨロヨロと乗った馬車の冷たい椅子面に薄っすらと覚めた。

 反対側の椅子面に誰かがいるが暗くてよく見えない。

「眠いのならそのまま寝てていいわ」

 エイダお母様の声だったから私はホッとしてそのまま寝た。

「ダリアナ、起きなさい。ここで朝食にするわよ」

 お母様に起こされて馬車を降りると小さな茶店でサンドイッチを食べた。隣の荷物の馬車にはメイドが一人だけでメイドは外で馭者たちと食べている。
 食べ終わってからその店の部屋を借りてメイドに着替えをしてもらうとすぐにまた馬車へ戻る。

「お母様、どこへ行くの?」

「ゲラティル子爵領へ行くのよ。しばらく戻ることにしたの。結婚して半年も経つのにガーリーお兄様の家に顔を出していないでしょう」

 お母様のご様子は特にお変わりなく見えた。

「そうなのね。伯父様のお家までどれくらいかかるんだっけ?」

 私は子爵家らしい言葉にすることにした。この方がずっと楽だもの。

「宿に二回泊まるくらいよ」

 お母さんとの旅はお話も面白くて好きなの。
 私達は馬車に揺られて伯父様のお家へ向かった。
 
 三日目、知らない街にたどり着いた。

「ここはどこ?」

 私は馬車の窓から知らない街をキョロキョロと見た。前に住んでいたガーリー伯父様のお屋敷のある街よりはお店の数が少ない感じだ。

「子爵邸のある街の隣町よ。貴女はこの街は初めて来るのね」

「うん」

 街並みは似ているので私はすぐに見飽きてしまう。ボォっと外を見ていたら馬車が止まってお母さんが降りる用意をする。 

「ダリアナも来なさい」

 馬車を降りるといくつかのドアが並ぶ通り沿いだった。

「あれ? もう一台は?」

「先に子爵邸へ行かせたわ。荷解きがあるでしょう」

 お母さんがずんずんと歩くから私は一生懸命に追いかける。

 お母さんが止まったお店の前にはいかにも強そうな人が二人立っていてお母さんの顔を見てそのドアを開ける。その人たちには目もくれずお母さんがお店に入ろうとするから私は怖くてお母さんの袖を握って一緒に歩くようにした。
 中はお店というよりお義父様の執務室のような感じだ。

「エイダ様。いかがなさいましたか?」

 お店に入るとすぐに執務机に座る紳士がお母さんに親しげに話しかけてくる。その人の両脇にも強そうな人が二人立っていた。部屋の奥にも二人立っている。守られているように見えるからきっと店主さんなのだと思う。

「また預けたいものがあるの。出してもらえるかしら」

 お母さんは平然としているというより顔に表情がなくて私にはそれが怖い。

「畏まりました。それよりそちらの方は?」

 ニヤニヤとして私の顔を見る店主さんらしい人から隠れるようにお母さんの後ろに行く。

「私の娘よ」

「ほぉ。なるほど。
 ではこちらでお待ちください」

 店主さんらしい人は部屋の奥で立っていた人たちの間のドアの鍵を開けて中へと消えた。

「あの人はここの店主さんなの?」

 できるだけ小さな声でお母さんに聞いた。

「店主? まあそんなものね」

 そっけなく答えたお母さんと丸テーブルに並んで座り待っている間にはお母さんはお話もしてくれないしお顔もそのままだった。

 店主さんが肩幅ほどの大きさで鎖で縛られている箱を持って戻ってきた。お母さんがバッグから取り出した鍵で錠前を開けて鎖をはずし蓋を開けると指輪やネックレスが見えてびっくりした。
 お母さんはバッグの中からまた違う指輪やネックレスや金貨を出してその箱に入れていくとまた鎖と錠前をする。さっきの人が頷いて箱を持ち奥へと片付けに行った。

 帰ってきたその人にお母さんのお話が始まる。

「私の娘のダリアナよ。この子に限り鍵がなくともあの箱を受け取る権利を持たせるわ」

「わかりました。今、書類を作りますね」

 お母さんとは反対で常にニコニコしているこの店主さんもなんだか怖い。顔や体つきは周りに立つ人の方が怖いはずなのに。

 私は怖い顔の人に手のひらにインクを塗られて書類と言われた紙に手形を押させられた。それを紳士な怖い人がニコニコと確認した。

「ダリアナ。ここは大切な物を預かってくれるお店なの。私達の大切な物とはさっきの箱のことよ。あの箱についていた錠前の鍵は私とあの男しか持っていないわ。私にもしものことがあってお金が必要になったらここに来てあの箱の中身を使いなさい」

 お母さんの見たことのない真剣で怖い顔にコクンと頷いた。本当はよくわからなかったけどそうは言えなかった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~

放浪人
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、1度目は悪役令嬢として断罪され処刑、2度目は改心して聖女となり国に尽くしたが過労死……という悲惨な最期を遂げた。 記憶を持ったまま3度目の人生が始まった瞬間、彼女は固く決意する。 「もう絶対に働きません! 今世は部屋から一歩も出ず、睡眠と趣味に命をかけます!」 最強の拒絶結界『絶対領域』で部屋に籠城し、婚約破棄イベントも夜会も全て無視して惰眠を貪ろうとするエリザベート。 しかし、彼女の「働きたくない」一心からの行動――適当な農業アドバイスや、安眠妨害への容赦ない迎撃――が、周囲には「国を憂う深慮遠謀」「慈愛に満ちた奇跡」として超好意的に解釈されてしまう!? ヤンデレ化した元婚約者の王太子、物理で愛を語る脳筋騎士団長、効率厨の隣国王子、さらには古代の引きこもり少年までをも巻き込み、事態は国家規模の大騒動へ。 部屋ごと空を飛んで戦場を浄化し、パジャマ姿で古代兵器を操り、地下牢をスイートルームに変えながら、エリザベートは究極の安眠を手に入れることができるのか? 塩対応すればするほど愛され、逃げれば逃げるほど伝説になる、最強引きこもり令嬢の勘違いドタバタ溺愛ファンタジー、ここに完結!

妹なんだから助けて? お断りします

たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

処理中です...