転生先の説明書を見るとどうやら俺はモブキャラらしい

夢見望

文字の大きさ
22 / 42

第22話 主人公が召喚するモノはとんでもなく眩しい!

しおりを挟む
 急遽決まった、放課後のグラン先生による召喚魔法の授業。
 気が付けば、太陽が少しづつ沈み始めていた。
 リーゼは、グラン先生に丁寧に教わりながら、召喚魔法の手順を進めて行く。
「魔力水を紙に全部かけ終わって、後は血を紙に垂らすだけか。あとは、何が召喚されるかのお楽しみか」
「本人は何が召喚されるかなど考えている余裕は無さそうです。とにかく、召喚が成功するように祈っているように見えます」
「もっと肩の力を抜いてって思うけど、それが難しいんだろうなぁ」
「マスターも先程まで失敗出来ないというプレッシャーを感じていたではありませんか」
「それは、リーゼに成功しているイメージを持って貰った方が良いわけで・・・」
「その気持ちも無かった訳ではないでしょうが、マスターの場合、リーゼにカッコ悪いところを見せたくなかったというのが9割なのでは?」
「バッ! そ、そんなわけ・・・いや、まあちょっとはそういう思いもあったけども・・・6割、7割くらい?」
「マスターよく聞いて下さい。マスターがどれだけ格好良くなろうとしても元がイマイチなんですから、何をしようが上手くいきませんよ」
「そんなことは無い!!」
「0に何を掛けても0とは言いますが、すでにマイナスな状態のマスターは、寧ろ0になれたら良い方です。掛けられるものはなく全て足されるのみ、しかもそれが全てマイナス。ああ、何と恐ろしい」
「恐ろしいのは、主人に対してそれだけの酷い言葉を投げつけることが出来るお前だよ」
 アルファに傷つけられた心をシロに頬刷りすることで、回復する。
「ああ~~~、シロ~~~、アルファが俺をいじめてくるよ~~」
「く~~ん?」
 俺が頬刷りしても嫌な顔せず、何なら顔をペロペロと舐めて慰めてくれる。
「おお~~、ありがとう、シロ~~!!」
「召喚されてまだそれほど時間も経っていないのに、随分と懐いていますね」
「俺が良いご主人様だと召喚されてすぐに分かったのさ」
「契約はしましたが主従関係などあるのでしょうか? むしろ良い世話係が出来たとシロに思われているかもしれません」
「ははは、そんな風に思われるのは嫌だな~~・・・そんなこと思ってないよね?」
 頬ずりしていた顔を離して、シロを目の前に持ってくる。
 不安な目で見つめる俺に対し、濁りのない綺麗な目で見つめ返してくるシロ。
「わふっ?」
「うん、きっと大丈夫だ」
「ただのマスターの願望では?」
「黙らっしゃい。俺のことは今はどうでも良いんだ」
 そう、俺のことなどどうでも良いのだ。
 今は、リーゼを見守ることに集中するのだ。

 リーゼは、先生に渡されたナイフで指先を切り、紙に血を垂らした。
 紙を地面に置き、少し距離を取る。
「あれ?」
 リーゼは不思議そうに紙を見つめていた。
「レインさんがやった時は、血を垂らした後、紙が光っていたのに・・・失敗、しちゃったのかな」
「大丈夫よ、ミリアーデさん。召喚魔法に1度だけなんてルールは無いの。成功するまで何度やったっていいの」
「・・・はい」
 先生に笑顔で返事をしていたが、その笑顔は悲しそうだった。
 召喚に失敗したと思い込んでいるリーゼ。

 だが、恐らく召喚は失敗していない。
「なあ、アルファ」
「はい」
「この空気どう思う?」
 リーゼが紙に血を垂らして少しした後、空気が変わった。
 姿は見えない。だが、確かにリーゼの近くに何かが
「かなり大きな力を持った存在がいます。今はリーゼのことを観察しているようです」
「ここからリーゼと先生を守れるか?」
「召喚魔法の説明を受けていた際に、マスター以外にはバリアを張っておきました。大陸を消すほどの攻撃でなければ怪我1つ付くことはないでしょう」
「俺には張られていないのが引っかかるが、助かるよ」
「今のところ敵意などは感じられませんが、十分に警戒をしておいてください」
「分かってる」
 リーゼが召喚した存在なのかは分からないが、正体の分からない何かはリーゼの近くに留まっている。
 リーゼの近くに行き、いつでも守れる位置にいたいが、刺激を受けた何かが暴れ出し、逆にリーゼを傷つけてしまうかもしれない。
 何事もなく、何処かに行って欲しい・・・
 そう思った瞬間
「きゃっ!!」
「うわっ!!」
 リーゼの血を垂らした紙が、急に光り輝き始めた。
 俺がシロを召喚した時とは比べものにならないほどの輝き。
 その輝きはどんどん広がり、校舎を包み込んでしまった。
「アルファ!! リーゼと先生は無事か!!」
「あまりの光の眩しさに驚いているだけです。何かの攻撃を受けたり、怪我などはしておりません」
 俺は光の眩しさで目を開けて確認することは出来ないが、どれだけ光が強くなろうとアルファには関係無い。
 赤いレンズで、今起きている状況を冷静に見ている。
 
 光が収まり、ゆっくり目を開けてリーゼが無事かを確認する。
 リーゼに何処か怪我をした様子などは無かった。
 ただ、何処か一点を見つめている。
 リーゼが見つめる先には、羽を生やした小さな人の見た目をした何かがいた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

家族と魔法と異世界ライフ!〜お父さん、転生したら無職だったよ〜

三瀬夕
ファンタジー
「俺は加藤陽介、36歳。普通のサラリーマンだ。日本のある町で、家族5人、慎ましく暮らしている。どこにでいる一般家庭…のはずだったんだけど……ある朝、玄関を開けたら、そこは異世界だった。一体、何が起きたんだ?転生?転移?てか、タイトル何これ?誰が考えたの?」 「えー、可愛いし、いいじゃん!ぴったりじゃない?私は楽しいし」 「あなたはね、魔導師だもん。異世界満喫できるじゃん。俺の職業が何か言える?」 「………無職」 「サブタイトルで傷、えぐらないでよ」 「だって、哀愁すごかったから。それに、私のことだけだと、寂しいし…」 「あれ?理沙が考えてくれたの?」 「そうだよ、一生懸命考えました」 「ありがとな……気持ちは嬉しいんだけど、タイトルで俺のキャリア終わっちゃってる気がするんだよな」 「陽介の分まで、私が頑張るね」 「いや、絶対、“職業”を手に入れてみせる」 突然、異世界に放り込まれた加藤家。 これから先、一体、何が待ち受けているのか。 無職になっちゃったお父さんとその家族が織りなす、異世界コメディー? 愛する妻、まだ幼い子どもたち…みんなの笑顔を守れるのは俺しかいない。 ──家族は俺が、守る!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...