「禁断の惑星 ジョリス」

第１章 辺境の星 ジョリス

第５話 帰投

 ジョカルは、数種類存在する。

 上位から、ベネディクト種、ハイザイ種、ケンプ種、スマラディ種に分類される。
 その違いは、より宿主と云うか、飼主の欲望を忠実に再現できるかの割合、パーセンテージによる。
 希少種のミューズ種は、全体の0.1%に満たない。
 遭遇すること自体が、稀である。その宿主？になることは、一つの星系に値するくらいの価値があると云われている。
 しかし、どれも不幸な結果を終わると云うのは、単なる都市伝説であろうか...。

「この上物のベ種をどうしてやろうかな？」

「ロベルト３等調査官、貴官にその権限は無いっ！はっきり言っておく」

「なに、堅いこと言ってるんですか？実際、発見して捕まえたのは、自分だし、誰にも遠慮することは無いはずですが？」

「連邦政府の費用と権限で、誰にも遠慮なく調査・捕獲出来るのは、周知の事実だ！ODSのログにも全て記憶されている」

「そんなもの、磁気嵐か？亜空間障害でも、適当な理由を付ければ、いいじゃないですか？」

「とにかく、ベースまで帰投して、ディビス１等調査官に報告する」

「全く、もったいない...」

「何かご意見でも？」

「いえ...」

 事実、ジョカルは、男たちにとって永遠の憧れである。男の精を糧に生きていく彼女？らは、飼主が死ぬまで、卵を産出しない。
 いや、飼主の生命エネルギーを絞り尽くして、卵を産むのである。
 ミイラの様に干からびた死体は、その成れの果てであった。
 ベースに回収され、荼毘に付されるということは、新たな産卵の指標でもある。

 男の欲望の権化であるジョカルは、惑星ジョリスしか、棲息しない。卵の状態で、星外に持ち出され、孵化すれば順応するとも聞いた。
 スペースシップや星と釣り合うくらい高額で取り引きされる卵を密輸する闇のシンジケートが存在する。
 その実態調査も調査官の大きな任務の一つなのである。