何しろ、ここは寒いところでね

ツチフル

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何しろ、ここは寒いところでね

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 何しろ、ここは寒いところでね。
 真夏の盛りでも二十度をちょいと超える程度だから、冷房なんて必要ないし、扇風機に無理矢理 NO と言わせることも滅多にない。湿気も少なくて、カラッとしている。
 過ごしやすいよところだよ。夏に限って言えば。
 そのぶん、冬は酷いもんだ。まず、外の温度計が零度を超えなくなる。真っ昼間の、一番気温が高い時間でさえ零下五度、最低気温は零下二十度あたりまで下がる。何年か前には零下二十九度って日があった。確か、それがここの最高記録だ。いや、最低記録か。
 そんなところだから、冬は物が腐らない。生肉だろうが、牛乳だろうが、卵だろうが、作り置きのシチューだろうが、外に出しっぱなしでいい。
 まあ、実際はカチカチに凍っちまって溶かすのが大変だから、冷蔵庫に入れる。冷やすための冷蔵庫が保温器に早変わりってわけだ。
 ここは、そんなところだ。
 ヨナサンとの付き合いはそんなに深くない。隣人ってだけだ。顔を見れば挨拶はする。時間があれば立ち話くらいつきあう。その程度の関係だ。
 家に招いたことはないし、招かれたこともない。もっとも、招いたら来てくれたかもしれないな。俺は、招かれてもいかなかっただろうけど。
 評判は良かったよ。ヨナサンは大した金持ちだが、それを鼻にかけることのない男だった。親切で人当たりもいい。かみさんのベスと娘のマイナも美人で礼儀正しかった。ついでに言えば、スタイルもよかった。俺がもうちょっと若けりゃマイナを口説いていたろうし、俺がもうちょっと悪い奴だったら、ベスを口説いてただろう。上手くいくかどうかはべつにして。
 あとは、庭だ。ヨナサンはいい庭をもっていた。
 一面に敷き詰められた、質の良い芝生。規則正しく植えられた花々は、季節ごとに魅力的な顔を見せてくれる。
 でも、何より目立つのは、庭の真ん中に立つスズカケノキだ。
 樹齢は百年を超えているらしい。代々育ててきたんじゃなくて移植してきたってのが、いかにも金持ちって感じだ。
 ヨナサンの庭は、俺の部屋の窓からよく見えるんだ。週末には丁寧に庭の手入れをするヨナサンや、小遣い目当てで雑な芝刈りをするマイナを見ることができる。ベスは時々、お茶を入れに顔を出す(一度、彼女と目が合ったことがある。ニッコリ微笑んでくれて、とても気分が良かった)。
 スズカケノキの下にはどっしりとした円テーブルと背もたれつきのイスがあって、そこでささやかなティータイムが開かれる。
 俺はその光景を眺めながら、カルヴァドス(リンゴの蒸留酒)をグラスに注ぐ。贅沢なひとときだ。
 妬ましいと思ったことはない。俺は幸せな家庭を眺めるのが好きなんだ。
 けれど、幸せな家庭を築きたいとは思わない。俺にとって、家族は煩わしいだけの、幸福とはほど遠い存在だ。結婚をして、子供が生まれて――一人娘だった――、どちらも愛せずに破綻して別れたのがその証明だ。残ったのは他人の物になった家のローンと、バカ高い養育費。それに、半年に一度会う娘の醒めた目。
 つくづく思ったよ。
 幸せな家庭ってのは作るもんじゃない。眺めるもんだって。
 まあ、そんなわけで俺は隣人の幸せな団らんを眺めるのがすっかり趣味になった。
 春。スズカケノキに葉が繁り始める。でかいモミジみたいな葉っぱだ。その下で彼らは温かな紅茶を――時にはブランデーをたらして――楽しむ。春とはいえ、まだまだ寒い季節だ。彼らは春物の服の上に厚手の羽織り物をまとっている。息も白い。ヨナサンが何かを言い、ベスとマイナが口元に手を当てて笑う。とてもよく似た仕草だ。それに、とても品がいい。俺はそれを眺めながら、温めたカルヴァドスをちびちびとなめる。ラップトップを開くときもあるが、大抵は一文字も打たずに閉じる。上手く打てるときもあるけれど、大抵は次の日に全部消す。
 夏。みっしりと葉の生い茂ったスズカケノキは、降り注ぐ夏の日差しを遮ってくれる。彼らはその下で葉擦れの音を聞きながら、アイスティーとスコーンで午後のひとときを過ごす。時にはヨナサンがウクレレを弾きだすこともある。うまくはない。ベスと娘のマイナはヨナサンをそっちのけで会話を楽しむ。ベスは袖無しのワンピース。マイナはタンクトップにショートパンツ。俺はそれを眺めて楽しむ。よく冷えたカルヴァドスを片手に。
 いい季節だ。
 ラップトップを開いて何かを書く。そして、消す。
 秋。ヨナサンの庭に、スズカケノキの葉が落ち始める。何しろ樹齢が百年を越えるでかい木だから、葉っぱの量も相当なもんだ。落ち葉がある程度たまると、ヨナサンはエンジン・ブロアでそいつらを庭の隅に集めてドラム缶の中にぶちこむ。ドラム缶がいっぱいになったら火をつけて燃やす。スズカケノキから葉が完全に落ちきるまで、これが繰り返される。
 面倒な作業に見えるが、楽しそうだ。火のついた葉が風で舞い上がるのもいい。時おり、そいつがこちらにやってきて、借り物の我が家を焼こうとする。ドキリとするが、そのスリルも悪くない。
 この時期になると気温がぐっと下がる。吐く息が白くなり、レディたちの肌も再び厚手の布で覆われてしまう。
 ティータイムも短くなる。ただ、その中で一日だけ賑やかな日がある。ベスとマイナの誕生パーティだ。日が近いから、まとめて祝うんだと言っていた。
 その日は、朝から騒がしい。いつもは一つだけの円テーブルが三つになり、背もたれつきのイスも十脚ほど用意される。
 葉のないスズカケノキには、色紙いろがみで作ったわっかや、星や、稲光のような飾りつけがされる。子どもっぽいが、それがいい。並べられる料理もなかなかこっている。俺はもちろん呼ばれない。それほど深い仲じゃないんだ。
 それでも、ここからパーティを眺めるのは乙なものだ。調子はずれのバースデイ・ソングの合唱を聞き、乾杯の声にあわせて、強めに温めたカルヴァドスをかかげる。
 人の幸せな光景を眺めるのはいいもんだ。自分が幸せになるよりも、ずっと手軽に幸せを味わうことができる。
 冬。すっかり葉の落ちたスズカケノキは、滑らかな白と緑の肌をさらけだす。幹は真ん中より少し上の辺りで二股に分かれていて、そこから幾本もの太い枝が伸びている。その艶めかしいプロポーションは、美女のヌードにも引けを取らない。
 彼らのティータイムは雪が降るまで続けられる。雪が降ったら終了だ。ここは、何しろ寒いところでね。降った雪は春まで溶けないんだ。
 赤茶けた芝生の上に、雪が降り積もる。彼らも庭に出てこなくなるから、足跡ひとつつかない。穢れなき、純白の絨毯。
 ただ、今年はちょいと違った。ヨナサンが庭に出てきたんだ。
 十一月の半ばだった。
 ヨナサンは雪の中に長靴を出し入れしながら、スズカケノキの下まできた。まっさらな雪に足跡をつけるというのは無粋きわまりない行為だけど、俺がどうこう言えることじゃない。
 ティータイムを楽しむ円テーブルには雪が降り積もっていて、巨大なレアチーズケーキのようだった。
 ヨナサンはそこに腕を落として、車のワイパーのように雪を払った。
 それから、テーブルの上に乗った。いい大人のすることじゃないが、子供じみたことをしたくなる気持ちもわかる。誰も見ていないと思っているなら、なおのこと。
 ヨナサンはスズカケノキを見上げて、二股に分かれた幹から伸びている、ひときわ太い枝を見上げた。
 それに、ぶらさがった。
 太い枝はびくともしない。ぶらさがったヨナサンが大袈裟に揺らしても、わずかにしなる程度だった。
 しばらくして、家からベスとマイナが出てきた。
 ヨナサンは枝から手を離して、テーブルに降りる。
 二人がやってくると、まず娘のマイナをテーブルの上に引き上げた。それから、ベス。
 テーブルの上は大混雑だ。身体を密着させて笑い合う光景は、見るだけでも気分がよかった。そんな経験はないのに、懐かしい気持ちにさせられたよ。
 狭いテーブルの上で、ベスとマイナが位置を入れ替えようとする。どちらかがテーブルから降りればスムーズに事が運ぶだろうに――それがわからない彼らじゃない――まるでテーブルから落ちるのが重大な罪であるかのように、二人は慎重に位置を入れ替えた。
 これで三人の並びは、幹に近い順にヨナサン、ベス、娘のマイナとなった。
 まず始めに、ヨナサンが先ほど試した太い枝のつけね辺りにぶらさがった。次に、ベスが真ん中辺りにぶらさがる。最後にマイナだ。彼女は枝の先のほうへ、ためらいなくぶら下がった。
 三人がぶら下がっても、枝は少しかしいだだけで折れることはなかった。大したもんだよ。
 彼らは、しばらく枝にぶらさがってゆらゆらとしていた。俺はその美しい光景に、ただ、ただ、魅入っていた。
 やがて、握力のなくなったベスがテーブルの上に降り、娘のマイナが――さきにヨナサンを下ろしてやろうと足を伸ばして彼の足や腹をつついたが無駄だった――降りて、最後にヨナサンが降りた。
 皆、楽しげな顔をしていた。寒さで真っ赤になった頬に、白い息をぶつけあって。窓を開けたら笑い声が聞こえたかもしれない。もちろん、そんなことはしなかった。
 しばらくして、彼らは家の中へ戻っていった。
 ちらつき始めた雪が、テーブルをまた白く染めあげていく。俺はそれを眺めていた。カルヴァドスを飲むのも忘れて。
 そう。何年かぶりに酒を飲まなかったんだ。一滴も。
 そのせいだろう。俺は体調を崩して寝込んじまった。酷い熱で、起き上がることも出来なかった。
 だから、それがいつ行われたのか、正確なところはわからない。
 俺が寝込んだその日の夜だったかもしれないし、体調が戻って四日ぶりに書斎のカーテンを開ける、ほんの数分前だったかもしれない。
 その日は、この時期には珍しく朝から晴れて、雲ひとつない快晴だった。
 もっとも、太陽の光が降り注いだところで気温は上がらない。放射冷却でかえって寒いくらいだった。
 風も強かった。ポストにたまった新聞を取りに外へ出ると、道に降り積もった雪が風で舞い上がって、きらきらと輝いた。
 それで、ヨナサンの庭を見たくなったんだ。あのだだっ広い庭に降り積もった雪がきらきら舞い上がる光景は、さぞ見ものだろうと思って。
 朝から書斎に入るのはずいぶんと久しぶりだった。この部屋に入るにはアルコール旧友の励ましが必要だが――タイピングする手は震えるにしても、文字を打てるようにはなる――そのときは何も考えずに入ることができた。
 カーテンを開けると、ヨナサンの庭を見渡すことができた。そこには期待した光景と、期待以上の光景があった。
 風で舞い上がった雪が、日の光をうけてきらきら輝いていた。俺がカメラマンだったら、シャッターを切らずにはいられなかっただろう。俺が画家だったら、筆を握っていたにちがいない。
 その幻想的な光景の中で、ひときわ目を引くものがあった。
 スズカケノキだ。
 どの順番で見たのかは、覚えていない。あるいは同時だったかもしれない。
 二股に分かれた幹。そこから艶めかしく伸びる太い枝。
 そこに、ヨナサンたちがぶら下がっていた。順番は四日前と同じだった。幹に近いほうから、ヨナサン、ベス、マイナだ。
 違うのは、今回はこちらに背を向けていたこと。
 それから、手をつかっていないことだった。
 太い枝に縄を巻き付けて、彼らはそれぞれの縄にそれぞれの首をつっこんで、ぶら下がっていた。幹に近いほうから、ヨナサン、ベス、マイナ。
 風で舞い上がった雪がきらきらと輝いていた。その風で、ヨナサンたちも揺れていた。
 俺はラップトップを開いた。旧友の励ましを頼らずに。
 その日は三つの掌編と、一つの短編、七つの詩を書くことができた。
 気がつくと外は暗くなっていて、ぶら下がるヨナサンたちが見えなくなっていた。
 俺はカルヴァドスのボトルを持って、キッチンへ行った。まだ半分以上残っているボトルと、封を切っていないボトル。どちらもシンクへ流した。
 それから、もうひとつ詩を書いて寝た。ぐっすりと。夢も見ずに。
 アルコールの靄がかかっていない、クリアな頭で目覚ましたのは本当に久しぶりだった。
 俺は顔も洗わずに書斎へ行って、カーテンを開けた。
 ヨナサンの庭を見た。
 風のない穏やかな朝で、雪は舞い上がっていなかった。
 それでも、ヨナサンたちはいた。夢ではない。けれど、現実とも思えない光景。
 俺はラップトップを開いて、思い浮かぶままにキーボードを叩いた。日が暮れて、彼らが見えなくなるまで。

 俺の生活は一変した。
 朝になったら書斎に入ってカーテンを開く。揺れるヨナサンたちを見て朝食をとる。食器を洗い、書斎に戻る。ヨナサンたちが見える机でラップトップを開く。それから、日が暮れるまでキーボードを叩く。
 夕食をとって、気が向けば風呂に入って寝る。ぐっすり眠って朝になる。そして、朝になったら書斎に入ってカーテンを開く。
 その繰り返しが、日常になった。
 アルコールは俺の人生から姿を消した。完全にかどうかはわからないけれど。
 しばらくして、何年かぶりに原稿料が入った。感想のメールや手紙も届くようになった。片手の指で間に合う程度だったけれど、それでも俺は物事が正しい方向へ進み始めたと感じた。
 年が明けても、俺の生活は変わらなかった。暖房を一日中入れっぱなしにするようになったこと以外は。
 朝起きて、書斎のカーテンを開ける。それから、ヨナサンたちを眺めながら朝食をとって、ラップトップのキーボードを叩く。その繰り返しだ。
 不思議なことに、ここ以外では物を書く気がしない。いや、書くことが出来ないと言ったほうが正しい。
 ヨナサンたちが見えていないと、何も浮かんでこないんだ。
 彼らが風で揺れるたびに、ひとつのセンテンスが生まれる。もちろん、揺れていなくてもいい。物語の断片は、いつでもそこにある。ヨナサンたちの肩に。頭に。伸びきった手足に。
 彼らに降り積もる雪に。

 近々、俺の本が出る。これまで書いた作品に、二つ三つ新作をつけ加えた短編集になる予定だ。
 だから、新しい作品をあと二つ三つ書かなきゃならない。
 でも、まあ大丈夫だろう。
 今は二月。暖かくなって雪が溶け始めるのは、まだまだ先の話だ。 
 十分、間に合う。
 
 このところ、ヨナサンを訪ねてくる人間が増えている。
 連絡がとれないことに不審を抱いてのことだろう。
 友人。知人。親類。中には秋の誕生パーティに参加していた顔もあった。
 だから、俺はそのたびに、何食わぬ顔で外に出て彼らに声をかける。
「ああ。ヨナサンかい。彼らなら、暖かい季節になるまで南に行くと言っていたよ」
 微笑んで。少しおどけたように、肩をすくめて。
「何しろ、ここは寒いところでね」
                         (了)
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