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第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】
1-9 派生スキル
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夕べは先の展望が見えたのもあって、少しいい宿に泊まった。
銀貨二枚の格安だが、それで最低ながらも安心できる個室がある。
木賃宿からたった四倍の宿賃で防犯面が大きく向上した。
体を拭くお湯も大銅貨五枚で出してもらえる。
飯は外の安い定食屋の大銅貨五枚の肉入り野菜炒め定食を奢ってみた。
安い肉だが、肉がたっぷり入っているので人気の店だ。
だが、その手の店には当然のように新人冒険者なんかも多いので、皆がひそひそと俺を見ながら何か言っていた。
奴らも同期の新人の間では有名人である俺の、スキル以外の実力は知っているので、面と向かっては何も言ってこない。
何とでも言っていろよ。
そのうち、手前らなんかが目を剥くほどの凄い冒険者になってみせるからな。
俺のスキルは、本当は凄かったのだから。
俺は残りの飯を一気にかきこむと、受けた蔑みを気合に変えて、胸を張って立ち上がった。
「ご馳走さんっ」
今日はまた協会で、ある物を借りていく事にした。
それは『大棍棒』と呼ばれるものだ。
意味はそのまま、ただのでっかい粗削りの頑丈な棍棒だ。
そいつは万が一壊したとしても特にペナルティはない。
ただ、厳しい職員だと『作り直し』を命じられるかもしれない。
これは職員が一生懸命に作ってくれたもんだからな。
別に意地悪ではなく、道具は大事に使う精神を培わせようという、いわば親心なのだ。
彼らの元を巣だった者には何もしてやれないのを、彼らは長年の経験から熟知していた。
そして、その多くは帰らぬ者となり、一年を待たずに新人冒険者は数を半分以下に減らす。
それは毎年、必ず繰り返される恒例行事だった。
「棍棒はダサイ」
「重いし、不細工」
そう言って敬遠するような奴もいるが、剣の腕がまだまだな初心者なら棍棒の方が遥かに有益なのだ。
当たれば一撃で魔物を倒せるし、何しろ無料の上に整備代が特にかからない。
斧も悪くはないのだが、あれも整備代が高いしな。
今の俺には少し厳しい代物だ。
何よりも、この大棍棒は協会からの借り物だからタダなのが魅力だ。
新人の初級冒険者だけの特権だよな。
俺は意気揚々と、凄い大戦斧でも担ぐように胸を張ってそいつを肩に担ぎ、ダンジョンへと出かけていった。
実は昨日、バージョンが2.0に上がった時に面白い事が起きたのだ。
バージョン2.0に上昇した特典みたいなもので、基本能力スキルとして、【バージョンに合わせた肉体強化】がついた。
よく考えたら当り前なのだが、力だけがどんどんと上がっていったら、最終的に自分の力で自分を引き裂いてしまうだろう。
今まではブライアンがスパルタに鍛え上げてくれていたので、あの自分の二倍近いパワーにも耐えられていたものらしい。
スキルの肌理細やかな心遣いに感謝した。
やはり、これは俺の内なる魂の底から湧き上がってきた物なのだろう。
今の俺の力や身体の強さは、並みの冒険者の最低でも倍は優れているのだ。
他にも面白い事が起きていた。
それは【派生スキル】の存在だ。
【バージョンに合わせた肉体強化】のようなスキルは、なんというか基本機能のような物の強化や発展みたいな物のようなのだが、派生スキルはそうではない。
おそらくは、これもレバレッジをかけられる対象となるはずだ。
【レバレッジようやく2.0】(相変わらずのスキル名だ)は、進化型派生特殊スキル群とでもいうのだろうか。
バージョンが進むと共に基本の能力が強化され、別のスキルをツリーのようにぶら下げていく珍しいスキルなのらしい。
そして派生スキルは、その方向性を選べるようになっていた。
攻撃・防御・補助・特殊技能などの『用途向けの選択肢』なのだ。
このスキルというもの自体が、己の渇望のような物を魂に刻み込むものなのだから、その時自分の心が欲した切実な物がスキルとして具現化するのではないかと思っているのだが、実際にはどうだろう。
そして俺は迷いなく特殊技能を選択した。
元々、他の人間にはないようなスキルの機能なのだ。
どうせなら特別な物が欲しい。
攻撃・防御・補助のようなありきたりの物では、『売り』にはならない。
いずれ実力を付けたなら、どこかのパーティに自分を売り込みたい。
そのためには是非とも俺だけの能力を身に着けておきたいのだ。
そして、得られた派生スキルは【運命のサイコロ】とあった。
さすがに思わず沈黙してしまったよ。
これはなんとも微妙、いや珍妙な物が出てしまった。
スキル名から察して、おそらくは運否天賦の能力だ。
これは差し迫って切迫した、どうとでもなれというような時にしか使えないな。
これはちょっと選択を失敗したかなと思ったが、今更もう遅い。
しかも、迂闊にレバレッジをかけると、変な目を出すとマイナス方向にも補正がかかってしまう能力のようだった。
運が悪いと最悪は死ぬかもしれないような、とっておきの必殺技だ。
まあ他の奴はこんな珍妙なスキルは持っていないだろう。
レバレッジは勝手にかかってしまうので迂闊には使えんのだが、それならば逆に今のうちに試しておいた方がいいのではないのだろうか。
先に進んで何倍もレバレッジがかかってからだと、出目によってはいきなり命取りである事になるかもしれない。
銀貨二枚の格安だが、それで最低ながらも安心できる個室がある。
木賃宿からたった四倍の宿賃で防犯面が大きく向上した。
体を拭くお湯も大銅貨五枚で出してもらえる。
飯は外の安い定食屋の大銅貨五枚の肉入り野菜炒め定食を奢ってみた。
安い肉だが、肉がたっぷり入っているので人気の店だ。
だが、その手の店には当然のように新人冒険者なんかも多いので、皆がひそひそと俺を見ながら何か言っていた。
奴らも同期の新人の間では有名人である俺の、スキル以外の実力は知っているので、面と向かっては何も言ってこない。
何とでも言っていろよ。
そのうち、手前らなんかが目を剥くほどの凄い冒険者になってみせるからな。
俺のスキルは、本当は凄かったのだから。
俺は残りの飯を一気にかきこむと、受けた蔑みを気合に変えて、胸を張って立ち上がった。
「ご馳走さんっ」
今日はまた協会で、ある物を借りていく事にした。
それは『大棍棒』と呼ばれるものだ。
意味はそのまま、ただのでっかい粗削りの頑丈な棍棒だ。
そいつは万が一壊したとしても特にペナルティはない。
ただ、厳しい職員だと『作り直し』を命じられるかもしれない。
これは職員が一生懸命に作ってくれたもんだからな。
別に意地悪ではなく、道具は大事に使う精神を培わせようという、いわば親心なのだ。
彼らの元を巣だった者には何もしてやれないのを、彼らは長年の経験から熟知していた。
そして、その多くは帰らぬ者となり、一年を待たずに新人冒険者は数を半分以下に減らす。
それは毎年、必ず繰り返される恒例行事だった。
「棍棒はダサイ」
「重いし、不細工」
そう言って敬遠するような奴もいるが、剣の腕がまだまだな初心者なら棍棒の方が遥かに有益なのだ。
当たれば一撃で魔物を倒せるし、何しろ無料の上に整備代が特にかからない。
斧も悪くはないのだが、あれも整備代が高いしな。
今の俺には少し厳しい代物だ。
何よりも、この大棍棒は協会からの借り物だからタダなのが魅力だ。
新人の初級冒険者だけの特権だよな。
俺は意気揚々と、凄い大戦斧でも担ぐように胸を張ってそいつを肩に担ぎ、ダンジョンへと出かけていった。
実は昨日、バージョンが2.0に上がった時に面白い事が起きたのだ。
バージョン2.0に上昇した特典みたいなもので、基本能力スキルとして、【バージョンに合わせた肉体強化】がついた。
よく考えたら当り前なのだが、力だけがどんどんと上がっていったら、最終的に自分の力で自分を引き裂いてしまうだろう。
今まではブライアンがスパルタに鍛え上げてくれていたので、あの自分の二倍近いパワーにも耐えられていたものらしい。
スキルの肌理細やかな心遣いに感謝した。
やはり、これは俺の内なる魂の底から湧き上がってきた物なのだろう。
今の俺の力や身体の強さは、並みの冒険者の最低でも倍は優れているのだ。
他にも面白い事が起きていた。
それは【派生スキル】の存在だ。
【バージョンに合わせた肉体強化】のようなスキルは、なんというか基本機能のような物の強化や発展みたいな物のようなのだが、派生スキルはそうではない。
おそらくは、これもレバレッジをかけられる対象となるはずだ。
【レバレッジようやく2.0】(相変わらずのスキル名だ)は、進化型派生特殊スキル群とでもいうのだろうか。
バージョンが進むと共に基本の能力が強化され、別のスキルをツリーのようにぶら下げていく珍しいスキルなのらしい。
そして派生スキルは、その方向性を選べるようになっていた。
攻撃・防御・補助・特殊技能などの『用途向けの選択肢』なのだ。
このスキルというもの自体が、己の渇望のような物を魂に刻み込むものなのだから、その時自分の心が欲した切実な物がスキルとして具現化するのではないかと思っているのだが、実際にはどうだろう。
そして俺は迷いなく特殊技能を選択した。
元々、他の人間にはないようなスキルの機能なのだ。
どうせなら特別な物が欲しい。
攻撃・防御・補助のようなありきたりの物では、『売り』にはならない。
いずれ実力を付けたなら、どこかのパーティに自分を売り込みたい。
そのためには是非とも俺だけの能力を身に着けておきたいのだ。
そして、得られた派生スキルは【運命のサイコロ】とあった。
さすがに思わず沈黙してしまったよ。
これはなんとも微妙、いや珍妙な物が出てしまった。
スキル名から察して、おそらくは運否天賦の能力だ。
これは差し迫って切迫した、どうとでもなれというような時にしか使えないな。
これはちょっと選択を失敗したかなと思ったが、今更もう遅い。
しかも、迂闊にレバレッジをかけると、変な目を出すとマイナス方向にも補正がかかってしまう能力のようだった。
運が悪いと最悪は死ぬかもしれないような、とっておきの必殺技だ。
まあ他の奴はこんな珍妙なスキルは持っていないだろう。
レバレッジは勝手にかかってしまうので迂闊には使えんのだが、それならば逆に今のうちに試しておいた方がいいのではないのだろうか。
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