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第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン
2-35 邪神とは
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そして、さっそく子供達に聖女様からの御土産が配られた。
小さな子には砂糖を使ったお菓子を、少し大きな子には洒落た感じのお菓子と対象年齢が分かれていた。
そして、少し高級そうな甘いパンをたくさん夕食用に渡された。
後は王都方面から搬入される高級フルーツと、大量の瓶入り果実水など。
これは収納がないと担ぐのが大変な量だったなあ。
姐御と俺の二人で、お菓子を配り終わるのに結構かかってしまった。
姐御が手ずから渡すというのがよいのだろうが、さすがに子供の数が多いので職員さんも手伝ってくれる。
姐御や職員さんが、お菓子を貰っていない子がいないか確認している。
それから食べていいお許しが出たので、子供達は一斉に食べ始めた。
子供達は全部で軽く百人以上いるわ。
やけにたくさん物を買い込むんだなと思っていたが、今納得できた。
文房具その他の援助物資は、職員である神官さんに引き渡された。
「せいじょさま、なんかおはなししてえ」
「そうか、では何の話がいいかなあ」
「じゃしんのおはなしがいい」
おお、勇ましいな。
お菓子をかじりながらお願いしたのは、まだ五歳くらいの男の子だ。
俺はその子の隣に座り込んで一緒に拝聴する事にした。
「リクル、何をしている。
お前にも話をさせるつもりで連れてきたのだが」
「勇者様のお話コーナーもあったのか。
それより、俺も邪神の話が聞きたいね。
皆が邪神邪神と口を揃えたように言うが、そもそもそいつは一体何なんだ」
そう、詳しい話はどこでも聞いた事はない。
とにかく邪神、聖女様が邪神を封じた、やれ聖教国バルバディアには邪神が封印されている。
もう、そればっかりなのだ。
「ゆうしゃさま、しらないの?
じゃしんは『へいき』なんだよ」
「へいき? なんだい、それは」
「リクル、それはお前が湧かせたあのナタリー、ある意味で邪神はあれのお仲間なのだ」
「何ー!」
俺はちょっとだけ青ざめた。
すると、俺のスキルで邪神が湧いていた可能性もあるというのか。
何しろ、あの終末の蜘蛛ラスターが湧いてきていたのだ。
あの惨憺たる状態からは決して有り得ないのだが、もう一回やっていたら邪神が湧いてきていたかもしれない。
「あー、リクル。
何を考えているのかはわかるのだが、いくらお前でも邪神を湧き上がらせる事は不可能だから安心しろ」
「えーと、その根拠は?」
「邪神は究極の兵器として古代の時代に作られた。
それはあまりにも凄まじい物で、今も多くの秘密を残すあの人類滅亡前の時代に、たった一体だけ作られたものなのだ」
俺は一瞬惚けた。
人類は滅亡したのだと?
じゃあ、ここにいる俺は一体何者なんだ。
「慌てるな。
一旦、地上にいた全ての人類は滅亡したが、古代の人類も邪神を作ったものに対抗して、魔導で安全な場所にいくらかの人類は保存されていたのだ」
「保存?」
「そう、魔法の繭のような物の中で眠っていた者達がいた。
それがお前の祖先だ。
その他に『人間の素』となる物も何種類も保存されていたが、それを使って人間を再現する技術は失われていた。
私達エルフは自らの力で滅亡は防いでいたのだが、人は長らく地上から姿を消した」
なんていう事だ。邪神っていうのは、人類を一掃してしまう力がある、人間が作ったものなのだと?
「やがて、我々エルフは調査の結果、その保存されていた人々を開放する方法を発見し、幾星霜の歳月の後で人を蘇らせたのだ。
それが、このバルバディア聖教国のある地だ。
ここは人類再興の地でもあるのさ。
そして人々は、長らく時間がかかりはしたものの、再び地に満ちた」
「ぶはっ、ここってそういう施設だったのか」
「邪神を創り上げた人々も、それに対抗する人々も、考えが違うだけで皆この古の都ニムロデに生きた人々であった。
祖国を強大な敵から護るために、今では邪神と呼ばれるようになった兵器を開発した人々、そしてその考えに対抗して人を残す事を考えた人々。
今は皆等しく歴史の彼方の住人だ」
「なんてこった……太古の人々の諍いの遺産が今も災いの種になっているなんて」
「そうだ。
だが千年以上前のあの日、あれはついに蘇った。
今でも思い出す、あの忌まわしい記憶。
あれは人がどうこうできるような物ではない。
かつて、古代のあれを作成した人々ならば対抗手段を生み出せたのかもしれないが、彼ら自身も邪神の手によって滅びたのだ。
ほんの起動テストなるものによってな。
そして邪神はコントロールを失ってしまった」
俺は思わず絶句してしまったが、子供達は平然としている。
何度も訊いた『説話』のようなお話なのらしい。
だが『聖女御指名の勇者』扱いの俺にとっては冗談事ではない。
「待て、姐御。
それならば邪神は何故活動を停止した」
「それについては今も諸説ぷんぷんなのだが、人類抹殺という目的を果たしたからではないかというのが有力な説だ。
敵を倒すという目的が間違って邪神に伝わっていたものか、敵国の陰謀によりそうなったのか。
いずれにせよ、あれを作った国も敵国も共に滅んだ。
後に、休眠する邪神や保存された生き残りの人々を内包する、この遺跡都市ニムロデを残したのみで」
うーん、なんてこった。
そしてこの都市は今では独立した邪神の監視国家として任務を続行中で、その親玉が姐御というわけなのか。
そして今では、この俺が彼女の子分その一みたいな立場なのだな。
せめて最初に邪神の説明が欲しかった。
そうしたら速攻で逃げ出していたのに。
さては、わざと黙っていたのだな。
小さな子には砂糖を使ったお菓子を、少し大きな子には洒落た感じのお菓子と対象年齢が分かれていた。
そして、少し高級そうな甘いパンをたくさん夕食用に渡された。
後は王都方面から搬入される高級フルーツと、大量の瓶入り果実水など。
これは収納がないと担ぐのが大変な量だったなあ。
姐御と俺の二人で、お菓子を配り終わるのに結構かかってしまった。
姐御が手ずから渡すというのがよいのだろうが、さすがに子供の数が多いので職員さんも手伝ってくれる。
姐御や職員さんが、お菓子を貰っていない子がいないか確認している。
それから食べていいお許しが出たので、子供達は一斉に食べ始めた。
子供達は全部で軽く百人以上いるわ。
やけにたくさん物を買い込むんだなと思っていたが、今納得できた。
文房具その他の援助物資は、職員である神官さんに引き渡された。
「せいじょさま、なんかおはなししてえ」
「そうか、では何の話がいいかなあ」
「じゃしんのおはなしがいい」
おお、勇ましいな。
お菓子をかじりながらお願いしたのは、まだ五歳くらいの男の子だ。
俺はその子の隣に座り込んで一緒に拝聴する事にした。
「リクル、何をしている。
お前にも話をさせるつもりで連れてきたのだが」
「勇者様のお話コーナーもあったのか。
それより、俺も邪神の話が聞きたいね。
皆が邪神邪神と口を揃えたように言うが、そもそもそいつは一体何なんだ」
そう、詳しい話はどこでも聞いた事はない。
とにかく邪神、聖女様が邪神を封じた、やれ聖教国バルバディアには邪神が封印されている。
もう、そればっかりなのだ。
「ゆうしゃさま、しらないの?
じゃしんは『へいき』なんだよ」
「へいき? なんだい、それは」
「リクル、それはお前が湧かせたあのナタリー、ある意味で邪神はあれのお仲間なのだ」
「何ー!」
俺はちょっとだけ青ざめた。
すると、俺のスキルで邪神が湧いていた可能性もあるというのか。
何しろ、あの終末の蜘蛛ラスターが湧いてきていたのだ。
あの惨憺たる状態からは決して有り得ないのだが、もう一回やっていたら邪神が湧いてきていたかもしれない。
「あー、リクル。
何を考えているのかはわかるのだが、いくらお前でも邪神を湧き上がらせる事は不可能だから安心しろ」
「えーと、その根拠は?」
「邪神は究極の兵器として古代の時代に作られた。
それはあまりにも凄まじい物で、今も多くの秘密を残すあの人類滅亡前の時代に、たった一体だけ作られたものなのだ」
俺は一瞬惚けた。
人類は滅亡したのだと?
じゃあ、ここにいる俺は一体何者なんだ。
「慌てるな。
一旦、地上にいた全ての人類は滅亡したが、古代の人類も邪神を作ったものに対抗して、魔導で安全な場所にいくらかの人類は保存されていたのだ」
「保存?」
「そう、魔法の繭のような物の中で眠っていた者達がいた。
それがお前の祖先だ。
その他に『人間の素』となる物も何種類も保存されていたが、それを使って人間を再現する技術は失われていた。
私達エルフは自らの力で滅亡は防いでいたのだが、人は長らく地上から姿を消した」
なんていう事だ。邪神っていうのは、人類を一掃してしまう力がある、人間が作ったものなのだと?
「やがて、我々エルフは調査の結果、その保存されていた人々を開放する方法を発見し、幾星霜の歳月の後で人を蘇らせたのだ。
それが、このバルバディア聖教国のある地だ。
ここは人類再興の地でもあるのさ。
そして人々は、長らく時間がかかりはしたものの、再び地に満ちた」
「ぶはっ、ここってそういう施設だったのか」
「邪神を創り上げた人々も、それに対抗する人々も、考えが違うだけで皆この古の都ニムロデに生きた人々であった。
祖国を強大な敵から護るために、今では邪神と呼ばれるようになった兵器を開発した人々、そしてその考えに対抗して人を残す事を考えた人々。
今は皆等しく歴史の彼方の住人だ」
「なんてこった……太古の人々の諍いの遺産が今も災いの種になっているなんて」
「そうだ。
だが千年以上前のあの日、あれはついに蘇った。
今でも思い出す、あの忌まわしい記憶。
あれは人がどうこうできるような物ではない。
かつて、古代のあれを作成した人々ならば対抗手段を生み出せたのかもしれないが、彼ら自身も邪神の手によって滅びたのだ。
ほんの起動テストなるものによってな。
そして邪神はコントロールを失ってしまった」
俺は思わず絶句してしまったが、子供達は平然としている。
何度も訊いた『説話』のようなお話なのらしい。
だが『聖女御指名の勇者』扱いの俺にとっては冗談事ではない。
「待て、姐御。
それならば邪神は何故活動を停止した」
「それについては今も諸説ぷんぷんなのだが、人類抹殺という目的を果たしたからではないかというのが有力な説だ。
敵を倒すという目的が間違って邪神に伝わっていたものか、敵国の陰謀によりそうなったのか。
いずれにせよ、あれを作った国も敵国も共に滅んだ。
後に、休眠する邪神や保存された生き残りの人々を内包する、この遺跡都市ニムロデを残したのみで」
うーん、なんてこった。
そしてこの都市は今では独立した邪神の監視国家として任務を続行中で、その親玉が姐御というわけなのか。
そして今では、この俺が彼女の子分その一みたいな立場なのだな。
せめて最初に邪神の説明が欲しかった。
そうしたら速攻で逃げ出していたのに。
さては、わざと黙っていたのだな。
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