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第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン
2-50 お宝を捜せ?
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俺達は、蜘蛛入りの大当たりの扉を求めて、ダンジョンを彷徨った。
情報のサンプルとして数を当たるためにだ。
割と上の方をうろうろしているだけでも、あれは出てくるので。
帰りの事を考えると、その方が楽だしな。
別に俺達はここで踏破者となる目的があるわけじゃなし。
お笑いだったのは、扉を見つけるよりも、本来ならこの遺跡ゾーンに出ないはずの石の卵型宝箱を見つける数の方が圧倒的なまでに多い事だった。
「あんた、本当に普通じゃないわね。
いくら今は宝箱が出やすいからって、ブーストをしていないのにも関わらず、一時間もしない内に二十個はやり過ぎじゃないの。
しかも、本来なら宝箱が湧かないはずのこっちの地区でさ」
「リクル、貴様。
蜘蛛はどうした。
さっきから蜘蛛入りの扉が一個も見つかっていないじゃないか。
そもそも、お前達は元々、扉を始めとするダンジョンの異変の調査に来たのじゃないのか」
扉を追うための猟犬であるターワンは、何故か宝箱が見つかるとその前でお座りして動かなくなるからな。
先輩がイライラし出してきていてヤバイなあ。
でもせっかく湧いた宝箱は絶対に開けないとね~。
「蜘蛛の入っていない、お宝入りの扉は三個も見つかったけどね」
「それは、ただのハズレと言うのだああ!」
その辺の金目当ての冒険者達が聞いたら血の涙を流しそうな事を先輩が叫んでいたが、このクレジネスに文句を垂れるような気概のある冒険者はまずいないだろうな。
このパーティのメンバーを除いては。
「大体、こういう異常な事態も、リクルを連れているとダンジョンが異常なのかリクルのせいなのか判別もつかんしな」
「まあ、扉に蜘蛛が入っておって、無理やりに冒険者を中に拉致っておる事だけはわかったので、今回の探索は大収穫だ。
頭は痛いのだがな」
だが俺は気にしないで、『ここ掘れラスター』と一緒に楽しみに待った。
ここまでの成果は、扉の中で『オリハルコンのナックル』が出て、最初は姐御が預かっていた。
割と肉弾系の、先輩とマロウスで勝負をして所有権を決める事になっていたのだ。
日頃は物欲に欠ける先輩が珍しく欲していたのだ。
そして当然のように譲らないマロウス。
あれって半分、マロウスが先輩をからかう御遊びだよな。
せっかく、そういう手筈になっていたのに、まったく同じ物が同じくハズレの扉から出やがった。
空気を読まないのは扉だってよくない事だと俺は思うんだ。
ナックルは二人で仲良く一つずつ分けていた。
せっかく先輩のヘイトがマロウスに向いていたのに、また蜘蛛の方に行ってしまったじゃないか。
先輩は、またブツブツと「蜘蛛が出ない」と文句を言い始めた。
扉の中の残り一つは、特別な魔力宝石入りのオリハルコン製のスタッフで、姐御が今使っている物よりも凄い物だった。
「うーん、この杖は世界樹の枝から作った逸品で、五百年以上は愛用している品なのだ。
まだまだ愛着があってメインで使いたいのだが、カミエとの戦闘でも傷ついてしまったしな。
ここはこのオリハルコンに代えるべきか。
いや、やっぱり悩むな」
なんか贅沢な悩みで眉間に皺を作っているお方がいた。
まあ頑張って悩んでいてちょうだいな。
世界樹の枝……この世界のどこにあったんだ、そんな樹。
道理であの杖、あのイカれ野郎カイエの一撃をあっさり受け止められるはずだ。
後の宝箱の中身といえば、ついに出ました、お待ちかねのアレ。
この期に及んでオリハルコンのインゴットが、ざくざくと五箱分の、実に五十本約百キログラムも出まくりだった。
やっとバニッシュ導師への御土産が湧いたよ。
他には何故か、当たりの宝箱の中に『錬金ボックス』が一つ入っていた。
あれは本来特殊で危険なミミックからドロップするレアな品なのだが、さすがに脱力した。
前にリナから譲ってもらった物はバニッシュにプレゼントしておいたので、これは俺が貰っておいた。
以前から俺用に一つ欲しかったのだ。
「リクル、そんな物を何に使うんだ?」
マロウスが不思議そうに訊いてきた。
もうこれだから、おじさんというものは。
「いろいろと実験して遊ぶのに決まっているじゃないか。
こんな面白い物もそうそうないぞ。
このままだと使いにくいから、後でバニッシュに改造してもらおうっと」
「またリクルが変な事をやろうとしてる。
それだって十分にレアなアイテムなんだからね」
どうせ、エラヴィスは換金して買い物代の足しにしたいとか思っているんだろう。
どうしてこう、女には男のロマンという物が理解できないのか。
「よい、エラヴィス。
そもそも、『当たりの中から出て来たハズレ』なのだ。
好きにさせておけ。
それよりも、今この宝箱が遺跡ゾーンで湧きまくる理由がよく判明せん。
さっきから見ておるが、リクルが妙なスキルを使っておるわけでもないのに、良い物が多いしな」
「リクルが絡むと、出現頻度がまた半端じゃないけどね~」
情報のサンプルとして数を当たるためにだ。
割と上の方をうろうろしているだけでも、あれは出てくるので。
帰りの事を考えると、その方が楽だしな。
別に俺達はここで踏破者となる目的があるわけじゃなし。
お笑いだったのは、扉を見つけるよりも、本来ならこの遺跡ゾーンに出ないはずの石の卵型宝箱を見つける数の方が圧倒的なまでに多い事だった。
「あんた、本当に普通じゃないわね。
いくら今は宝箱が出やすいからって、ブーストをしていないのにも関わらず、一時間もしない内に二十個はやり過ぎじゃないの。
しかも、本来なら宝箱が湧かないはずのこっちの地区でさ」
「リクル、貴様。
蜘蛛はどうした。
さっきから蜘蛛入りの扉が一個も見つかっていないじゃないか。
そもそも、お前達は元々、扉を始めとするダンジョンの異変の調査に来たのじゃないのか」
扉を追うための猟犬であるターワンは、何故か宝箱が見つかるとその前でお座りして動かなくなるからな。
先輩がイライラし出してきていてヤバイなあ。
でもせっかく湧いた宝箱は絶対に開けないとね~。
「蜘蛛の入っていない、お宝入りの扉は三個も見つかったけどね」
「それは、ただのハズレと言うのだああ!」
その辺の金目当ての冒険者達が聞いたら血の涙を流しそうな事を先輩が叫んでいたが、このクレジネスに文句を垂れるような気概のある冒険者はまずいないだろうな。
このパーティのメンバーを除いては。
「大体、こういう異常な事態も、リクルを連れているとダンジョンが異常なのかリクルのせいなのか判別もつかんしな」
「まあ、扉に蜘蛛が入っておって、無理やりに冒険者を中に拉致っておる事だけはわかったので、今回の探索は大収穫だ。
頭は痛いのだがな」
だが俺は気にしないで、『ここ掘れラスター』と一緒に楽しみに待った。
ここまでの成果は、扉の中で『オリハルコンのナックル』が出て、最初は姐御が預かっていた。
割と肉弾系の、先輩とマロウスで勝負をして所有権を決める事になっていたのだ。
日頃は物欲に欠ける先輩が珍しく欲していたのだ。
そして当然のように譲らないマロウス。
あれって半分、マロウスが先輩をからかう御遊びだよな。
せっかく、そういう手筈になっていたのに、まったく同じ物が同じくハズレの扉から出やがった。
空気を読まないのは扉だってよくない事だと俺は思うんだ。
ナックルは二人で仲良く一つずつ分けていた。
せっかく先輩のヘイトがマロウスに向いていたのに、また蜘蛛の方に行ってしまったじゃないか。
先輩は、またブツブツと「蜘蛛が出ない」と文句を言い始めた。
扉の中の残り一つは、特別な魔力宝石入りのオリハルコン製のスタッフで、姐御が今使っている物よりも凄い物だった。
「うーん、この杖は世界樹の枝から作った逸品で、五百年以上は愛用している品なのだ。
まだまだ愛着があってメインで使いたいのだが、カミエとの戦闘でも傷ついてしまったしな。
ここはこのオリハルコンに代えるべきか。
いや、やっぱり悩むな」
なんか贅沢な悩みで眉間に皺を作っているお方がいた。
まあ頑張って悩んでいてちょうだいな。
世界樹の枝……この世界のどこにあったんだ、そんな樹。
道理であの杖、あのイカれ野郎カイエの一撃をあっさり受け止められるはずだ。
後の宝箱の中身といえば、ついに出ました、お待ちかねのアレ。
この期に及んでオリハルコンのインゴットが、ざくざくと五箱分の、実に五十本約百キログラムも出まくりだった。
やっとバニッシュ導師への御土産が湧いたよ。
他には何故か、当たりの宝箱の中に『錬金ボックス』が一つ入っていた。
あれは本来特殊で危険なミミックからドロップするレアな品なのだが、さすがに脱力した。
前にリナから譲ってもらった物はバニッシュにプレゼントしておいたので、これは俺が貰っておいた。
以前から俺用に一つ欲しかったのだ。
「リクル、そんな物を何に使うんだ?」
マロウスが不思議そうに訊いてきた。
もうこれだから、おじさんというものは。
「いろいろと実験して遊ぶのに決まっているじゃないか。
こんな面白い物もそうそうないぞ。
このままだと使いにくいから、後でバニッシュに改造してもらおうっと」
「またリクルが変な事をやろうとしてる。
それだって十分にレアなアイテムなんだからね」
どうせ、エラヴィスは換金して買い物代の足しにしたいとか思っているんだろう。
どうしてこう、女には男のロマンという物が理解できないのか。
「よい、エラヴィス。
そもそも、『当たりの中から出て来たハズレ』なのだ。
好きにさせておけ。
それよりも、今この宝箱が遺跡ゾーンで湧きまくる理由がよく判明せん。
さっきから見ておるが、リクルが妙なスキルを使っておるわけでもないのに、良い物が多いしな」
「リクルが絡むと、出現頻度がまた半端じゃないけどね~」
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