異世界へようこそ、ミス・ドリトル

緋色優希

文字の大きさ
18 / 104
第一章 幸せの青い鳥?

1-18 皺寄せの青い鳥

しおりを挟む
「そうそう。
 あと、なんかここで聞きたい事があったんじゃなかったっけ」

「ああ、そうだった。
 ねえ、青い鳥の話って聞いた事がないですか?」

「青い鳥⁉」
「まさか!」

「あれ……?」

 また何か聞いてはいけない事だったのだろうか。
 でも聞かない訳にもなー。

「あのう、サヤ。
 君って、もしかして違う世界から来た人間っていう事はないよね?」

「な、何故それを。
 ガルさんは私の事を稀人だって言っていましたよ」

「あっちゃあ、君はそういう者だったのか」

「あー、なんとなくわかりますね。
 なんというかもう、アレな感じが。
 なるほど、納得出来ました」

「皆さんっ、ちょっと何気に失礼じゃないですか⁉」

 だが、その苦悩する二人は、やがてとんでもない事を話してくれたのだった。

『青い鳥の伝説』

 それは地球で言うような、幸せをもたらすようなメルヘンな存在ではないらしい。

 青い鳥、それは世界を越える者。

 そして彼らが選んで世界を越えさせる者、それはまた大概碌でもない存在なのだった。

 その鳥の正体は精霊であるとも、特殊な魔獣であるとも、あるいは何らかの神の一種とも言われている。

 そのような人士をこの世界に連れてくる目的もさまざまであるという。

 ある時は世界を救う救世主であったり、またある時は何らかの思惑により、世界に災いをもたらしたりするのだと。

 あるいは時には単なる気まぐれ、時には悪戯のような事で異世界から人を連れてくるのだと伝わっている。

「とにかく、彼らが連れてくるものは、勇者・聖女・魔王・救世主エトセトラ、そして時にそれらに該当しないハズレ者などですね」

 その最後の『ハズレ者』の部分にいやに力が入っていたような気がするのは気のせい⁉

 私は彼女達をじっと見ながら訊いてみた。

「率直に聞いてみたいのですが、私はその中のどれだと思います!?」

 そして、さっと二人に目を逸らされた。
 くそっ、私ってハズレ女郎だと思われてる⁉

 まあ、どう見たって私って勇者や救世主には、そして聖女や魔王にも見えませんけどね。

 勇者説はガルさんにも一笑に付されましたし。
 それらに該当するチートな能力もないのだし。

「もうっ、二人とも。
 私だって好きでこの世界に来たんじゃないんですからね!」

「まあまあ。
 とりあえず、マズイ騒動になりそうだった七色ガルーダの羽根は届けていただいた事だし。
 ここはそのタイミングの良さに免じて救世主説に一票を入れておくという事で」

「そうそう、本当にありがたい事ですよ」

「まあ、お互いの心の平穏のために、今はそういう事にしておきますか……」

 くそう、あの青い鳥め。
 ちょっと可愛いと思って図に乗りおって。

 そういや、やけに思わせぶりに私を誘っていたっけ。
 もしかして、私の動物好きなところに前から目を付けられていたとか。

 おのれ、今度会ったら焼き鳥にしてくれる。

 いや、とっ捕まえて、向こうの世界へ連れて帰らせればいいのか。

 この小夜様の、極悪カラスで鍛えた『鳥尋問スキル』を舐めたらあかんぜよ。

「ふう、じゃあ今度は服を買いに行きたいです」

「ああ、ちょっと待って今カードを作ってあげるから」

 しばし待つ間、ベロニカさんは私をじーっと観察していた。

「なんです?」

「ああ、いや。
 こうして改めて稀人という観点で眺めてみても君って本当にただの普通の女の子にしか思えない。

 やっぱり、そう御大層な人物には見えないなと。
 その癖、かなり騒動のネタになりそうな感じだし。

 当分、私の仕事はあなたのお世話というか監視なのかしらね」

「う、そう言われても否定しづらいのが非常に業腹です」

 そりゃあ、ちょっと動物好きなだけの女子高生ですもの。

 たとえば、いきなり魔王軍の魔物に玉座に祭り上げられて『魔王様万歳』とか言われても困るのですが。

 なまじ、魔物の言葉もわかりそうだから、そういう事があってもおかしくないしなあ。

 青い鳥が連れて来た人間なんて魔物にバレたら、そういう事があったっておかしくはない。
 ただの神輿シンボルという事で。

「ねえ、ちなみに魔王軍みたいな物ってあるのです?」

「とりあえず無いけど、昔はあったみたいよ。
 青い鳥が魔王となる人物を連れてきたら、また魔王軍が誕生するのかもね」

「やめてくださいな」

 あ、少し魔王説を疑われているな。
 確かに可愛い魔物の連中ばっかりに懐かれたら、思わず心がぐらついてしまいそうだけど。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

社畜聖女

碧井 汐桜香
ファンタジー
この国の聖女ルリーは、元孤児だ。 そんなルリーに他の聖女たちが仕事を押し付けている、という噂が流れて。

その聖女は身分を捨てた

喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。 その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。 そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。 魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。 こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。 これは、平和を取り戻した後のお話である。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

奥様は聖女♡

喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。 ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

処理中です...