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第二章 世直し聖女
2-9 カンソレイション・パーティ
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「おお、帰ってきたか、サヤ」
そういう言い方をされると、まるで私がこの騎士団所属の女騎士か何かのように聞こえるな。
まあ回復魔法士の口はあるわけなのですが、あれはもう一日でクビになりましたけどね。
だから仁王立ちの素晴らしい笑顔で出迎えてくれたその方に、私もこう答えておいた。
「ただいま、騎士団長。
相変わらずお元気そうですね」
あの凄惨な戦いの後なのにね。
あの戦いでアメフトしていたメンバーで元気なのって、この人だけなんじゃないの。
突撃隊の2チームは最後の死の(死ねない)アメフトは免れたけど、そこまでは似たような事をやっていたんだし。
そういや、サリタスさんの姿が見えない……。
あの人って騎士団でナンバー3の騎士団長補佐みたいな立場があったから、第二王子の居室に辿り着くまで相当貧乏くじを引いていたみたいだしなあ。
今頃は家で寝込んでいるんじゃあ。
あのチームだけ最後まで私の支援もなかったし。
まあ、あの人が私の方にいたなら、もっと悲惨な事になっていたかもしれないけど。
うん、絶対だわ。
団長だけは大物を一人で倒し、最後のチャックとの相撲もほぼ一人で押し切ったようなもんだからな。
あれは、もはや英雄の諸行。
まあ艶々もしますか。
それでも私がいなければ確実に死んでいましたでしょうしね。
この人も本当に大概だわ。
なんていうか、『持っている』っていう感じなのかな。
「王宮は楽しかったか」
「ええ、とっても。
王様からいろいろ貰ってきましたし。
ねえ、団長。
結構立て続けに厳しい展開もあった事ですし、騎士団で慰労会でもしませんか。
今日は王様からたくさんお金をいただいた事ですし、この小夜が御馳走しますよ」
なんというか、鞭だけくれて飴をやらないのもなんだなと思って。
慰労会、英語でいうところのカンソレイション・パーティといった奴ですか。
「ほお、それはよいな。
それでいつやる?
今晩か。
今からでもいいぞ」
「あのう、団長。
そういう事には準備という物が必要でありましてですね」
「サヤ、そういう事をうちの団長に言っても駄目です。
あと、よろしければ公爵家から少し人手を出していただけるとありがたいです。
ここの部署の女手が私だけですので。
ああ、回復魔法士の方も呼びますか。
彼女らも、うちの連中と一緒に死線を潜り抜けた仲ですし」
「ああ、そうしよう。
うちからも支度を出す。
それに、あそこまで酷い事になったのだ。
少しは労ってやらねば、作戦に参加したうちの団員が哀れだ」
う。
リュール、こっちを見ながら言わないでくださいよ。
「サヤ、そういう顔をするな。
元はといえば、王家内の話が拗れたようなもので、元は王家の一員である私とて肩身は狭い。
団員に死者がでなくて本当に助かった。
それに関しては紛れもなくお前に感謝している。
やはり、お前を呼んでよかった」
ふふ、人生は『生きてこそ』ですからね。
でも、さすがに私に対するヘイトを少しは減らしておかないと。
まだ記憶の浅いうちにね。
騎士団員に蔭でこっそりと私の敵に回られていても困りますので。
私へのヘイトが心の深い闇の部分に潜られてからでは手遅れですので。
「じゃあ、各自の準備も考慮してパーティは明後日の晩にしましょうか。
場所は騎士団のホールで。
あそこなら広いから宴会もできますよね。
私は明日明後日と宴会準備に勤しみますよ」
「よし、貴様ら。
明後日は早めに訓練を切り上げるから、明日はその分みっちりとやるぞ」
騎士団員の間から、嬉しいような苦しいような悲鳴が上がった。
ああ、わかるなあ。
「じゃあ、そういう事で。
アメリ、今から買い物して帰ろうよ。
途中でランチして」
「いいですね。
高級食材中心にしましょうか。
お酒も極上の、いつ出物があるのかわからないような逸品を置く店も知っていますし。
うちでは普段そこまでしませんが」
「へえ、なんで。
国一番の公爵家なのに」
「だって御当主様などの、主にお酒を飲まれる方はお出かけで、奥様もリュール様もお酒は嗜まれる程度ですし。
後は使用人の分だけですから、そこまでの用意はしてませんわ。
家柄的にサヤ様のような賓客を迎える事もあるので、高級品を揃えられる店だけは常日頃から把握しております」
「生憎と私は飲まないけどね。
じゃあ、ドーンっといってみようか。
いいお酒が売っているといいね」
お酒はお料理やお菓子に使うような物しか縁がない。
そういう訳で今回のお酒選びは、仕事柄高級そうなお酒の種類に詳しそうなアメリと、騎士団の好みに精通しているリュールさんにお任せだ。
そして何をおいても、まずはお酒から。
ああいう人達は、つまみは適当でもいいお酒があれば、大概は満足と相場は決まっていますので。
後は地球のお料理でも並べておきましょうか。
私のお勧めは、『青い鳥料理』ですね。
そういう言い方をされると、まるで私がこの騎士団所属の女騎士か何かのように聞こえるな。
まあ回復魔法士の口はあるわけなのですが、あれはもう一日でクビになりましたけどね。
だから仁王立ちの素晴らしい笑顔で出迎えてくれたその方に、私もこう答えておいた。
「ただいま、騎士団長。
相変わらずお元気そうですね」
あの凄惨な戦いの後なのにね。
あの戦いでアメフトしていたメンバーで元気なのって、この人だけなんじゃないの。
突撃隊の2チームは最後の死の(死ねない)アメフトは免れたけど、そこまでは似たような事をやっていたんだし。
そういや、サリタスさんの姿が見えない……。
あの人って騎士団でナンバー3の騎士団長補佐みたいな立場があったから、第二王子の居室に辿り着くまで相当貧乏くじを引いていたみたいだしなあ。
今頃は家で寝込んでいるんじゃあ。
あのチームだけ最後まで私の支援もなかったし。
まあ、あの人が私の方にいたなら、もっと悲惨な事になっていたかもしれないけど。
うん、絶対だわ。
団長だけは大物を一人で倒し、最後のチャックとの相撲もほぼ一人で押し切ったようなもんだからな。
あれは、もはや英雄の諸行。
まあ艶々もしますか。
それでも私がいなければ確実に死んでいましたでしょうしね。
この人も本当に大概だわ。
なんていうか、『持っている』っていう感じなのかな。
「王宮は楽しかったか」
「ええ、とっても。
王様からいろいろ貰ってきましたし。
ねえ、団長。
結構立て続けに厳しい展開もあった事ですし、騎士団で慰労会でもしませんか。
今日は王様からたくさんお金をいただいた事ですし、この小夜が御馳走しますよ」
なんというか、鞭だけくれて飴をやらないのもなんだなと思って。
慰労会、英語でいうところのカンソレイション・パーティといった奴ですか。
「ほお、それはよいな。
それでいつやる?
今晩か。
今からでもいいぞ」
「あのう、団長。
そういう事には準備という物が必要でありましてですね」
「サヤ、そういう事をうちの団長に言っても駄目です。
あと、よろしければ公爵家から少し人手を出していただけるとありがたいです。
ここの部署の女手が私だけですので。
ああ、回復魔法士の方も呼びますか。
彼女らも、うちの連中と一緒に死線を潜り抜けた仲ですし」
「ああ、そうしよう。
うちからも支度を出す。
それに、あそこまで酷い事になったのだ。
少しは労ってやらねば、作戦に参加したうちの団員が哀れだ」
う。
リュール、こっちを見ながら言わないでくださいよ。
「サヤ、そういう顔をするな。
元はといえば、王家内の話が拗れたようなもので、元は王家の一員である私とて肩身は狭い。
団員に死者がでなくて本当に助かった。
それに関しては紛れもなくお前に感謝している。
やはり、お前を呼んでよかった」
ふふ、人生は『生きてこそ』ですからね。
でも、さすがに私に対するヘイトを少しは減らしておかないと。
まだ記憶の浅いうちにね。
騎士団員に蔭でこっそりと私の敵に回られていても困りますので。
私へのヘイトが心の深い闇の部分に潜られてからでは手遅れですので。
「じゃあ、各自の準備も考慮してパーティは明後日の晩にしましょうか。
場所は騎士団のホールで。
あそこなら広いから宴会もできますよね。
私は明日明後日と宴会準備に勤しみますよ」
「よし、貴様ら。
明後日は早めに訓練を切り上げるから、明日はその分みっちりとやるぞ」
騎士団員の間から、嬉しいような苦しいような悲鳴が上がった。
ああ、わかるなあ。
「じゃあ、そういう事で。
アメリ、今から買い物して帰ろうよ。
途中でランチして」
「いいですね。
高級食材中心にしましょうか。
お酒も極上の、いつ出物があるのかわからないような逸品を置く店も知っていますし。
うちでは普段そこまでしませんが」
「へえ、なんで。
国一番の公爵家なのに」
「だって御当主様などの、主にお酒を飲まれる方はお出かけで、奥様もリュール様もお酒は嗜まれる程度ですし。
後は使用人の分だけですから、そこまでの用意はしてませんわ。
家柄的にサヤ様のような賓客を迎える事もあるので、高級品を揃えられる店だけは常日頃から把握しております」
「生憎と私は飲まないけどね。
じゃあ、ドーンっといってみようか。
いいお酒が売っているといいね」
お酒はお料理やお菓子に使うような物しか縁がない。
そういう訳で今回のお酒選びは、仕事柄高級そうなお酒の種類に詳しそうなアメリと、騎士団の好みに精通しているリュールさんにお任せだ。
そして何をおいても、まずはお酒から。
ああいう人達は、つまみは適当でもいいお酒があれば、大概は満足と相場は決まっていますので。
後は地球のお料理でも並べておきましょうか。
私のお勧めは、『青い鳥料理』ですね。
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