70 / 104
第二章 世直し聖女
2-13 公爵家のブレない風景
しおりを挟む
とりあえず、魚の事は一旦忘れておくとして、準備をしなくては。
なるべくこっちでオリジナルの料理は作っておいて、明日は昼過ぎに公爵家の料理人も夕方まで借りて、騎士団の調理場で頑張ろう。
お酒は明日渡さないと、今日から宴会始める奴とかいそう。
そう、騎士団長。
それは、あんたの事だよ。
他の奴らは扱きまくられて、今日明日はそういう狼藉は出来ないだろうから。
御屋敷に帰ったら、お留守番のチュールが飛びついてきた。
『お帰りー。あ、サヤからなんかいい匂いがするう』
「焼き肉よ。
お肉の試食で。
今日明日は忙しいわ。
明後日はパーティに行くから、その仕込みね」
『やった、パーティだ』
「リュール、チュールも連れていっていいよね」
「ああ、構わんぞ。
むしろ、共に戦った仲魔なのだから、連れていかんと団長自らうちまで呼びに来そうだ。
チュールは、お前の護衛でもあるのだし」
「あっはっは、あの人なら普通にやりそうだね」
『パーティ、楽しみー』
「そうそう、お菓子も作らなくっちゃね。
今まで作ってない奴にしようか」
『シュークリームも』
「あんた、本当にシュークリームが好きね。
じゃあ、フルーツを大量に仕入れたから、またフルーツ入りでも作ろうか。
あとフルーツタルトもいいな。
フルーツケーキも捨てがたいかな」
それから、ちょっとチュールの案内で『ホンカン』を捜しにいったら中庭にいた。
あれ、公爵夫人も一緒だ。
何をやってるんだろう。
そして近寄ってみたら、びっくり。
チェスしてた。
こっちの世界には地球のこういうボードゲームみたいな物が意外と溢れてる。
それらは、当然あの青い鳥の陰謀によって結果的にもたらされたものであった。
そしてチャックが一つ駒を動かした後で、手元の駒の一つを持ち上げて、机を軽く三回叩いた。
どうやら、チェックメイトという事らしい。
「あらやだ。また負けちゃった。
ねえサヤ、この子にチェスを教えてあげたんだけど、結構強いわよ」
「あんた、何をやってるのよ」
『公爵夫人からチェスを教えていただいているのであります。
結構楽しいです』
「あんたって確か脳がいっぱいあるんだよね。
普通の人間がチェスで勝てるはずがないでしょ。
まあいいんですけど。
あ、公爵夫人。
明後日の晩はパーティに行きますので」
「あらそう。どこの?」
「騎士団本部ですよ。
この間の騒動の慰労会ですね。
私の主催です」
「へえ、いいわね」
『パーティでありますか。
本官も護衛として行った方がよろしいのでしょうかと聖女サヤに確認してみます』
「あんたは駄目。
チュールだけ連れて行くから」
『それは何故でしょう』
「あんたが世界最高にフルボッコにした騎士達を私が慰労する会だからよ」
『はっはっは。
本官が出席したら、彼らがどのような反応を示すものか見られなくて残念だと聖女サヤに報告しておきます』
「あはは、あんたって本当に面白い子ねえ」
『人生は楽しい方がいいですよ。
まあ本官は人ではありませんが』
「確かにね。よく覚えておくわ」
『光栄であります』
とりあえず、今日は王宮へ連れていってあげられなかったので、今からチュールのおやつも兼ねてお菓子作りをする事にした。
今日は小豆が手に入ったので、お饅頭に挑戦。
小豆を煮て、その間にお饅頭の皮作り。
小麦粉やイスパタ(イーストパウダー)なんかの、簡単な材料で作る奴なので皮自体はすぐ出来る。
この世界にもベーキングパウダーはあるけど、これを使うと色がついてしまうと言われるので和菓子同様にイスパタを使う。
たぶん、昔ながらの材料である米の粉と山芋類の方が美味しそうだけど、今日は準備がないので。
小豆の餡が煮えるまでが大変だったが、そこは頑張った。
こういう物って馬達が食べるかもと思ったので、こいつは多めに作っておいた。
ここの厨房にはちゃんと蒸し器があるのだ。
普段は何に使っているんだろうな。
今度中華まんにでも挑戦しよう。
時間的に丁度おやつの時間になったので、チュールと一緒に味見した。
「おお、これはまた素朴な味だ。
まあすっごいシンプルな奴なんだけどね」
『これも美味しいけど、やっぱりシュークリームかな』
「そうね。
お馬さんの意見も聞いてみようか」
そして厩へ行き、連中にも食べさせてみたのだが、まあまあくらいの反響?
『甘くて美味しいっすね』
『でもちょっと小さいかな』
『僕はおやつがいただけるのなら何でも』
『わしは人参の方が好みでごわす』
『サヤー、遊んでー』
「もう、しょうがないわね。
今日は忙しいから、ちょっとだけよ」
結局、馬といっぱい遊んでしまった~。
昼中の厨房が空いた時間に、あれこれやる予定だったのにー。
なるべくこっちでオリジナルの料理は作っておいて、明日は昼過ぎに公爵家の料理人も夕方まで借りて、騎士団の調理場で頑張ろう。
お酒は明日渡さないと、今日から宴会始める奴とかいそう。
そう、騎士団長。
それは、あんたの事だよ。
他の奴らは扱きまくられて、今日明日はそういう狼藉は出来ないだろうから。
御屋敷に帰ったら、お留守番のチュールが飛びついてきた。
『お帰りー。あ、サヤからなんかいい匂いがするう』
「焼き肉よ。
お肉の試食で。
今日明日は忙しいわ。
明後日はパーティに行くから、その仕込みね」
『やった、パーティだ』
「リュール、チュールも連れていっていいよね」
「ああ、構わんぞ。
むしろ、共に戦った仲魔なのだから、連れていかんと団長自らうちまで呼びに来そうだ。
チュールは、お前の護衛でもあるのだし」
「あっはっは、あの人なら普通にやりそうだね」
『パーティ、楽しみー』
「そうそう、お菓子も作らなくっちゃね。
今まで作ってない奴にしようか」
『シュークリームも』
「あんた、本当にシュークリームが好きね。
じゃあ、フルーツを大量に仕入れたから、またフルーツ入りでも作ろうか。
あとフルーツタルトもいいな。
フルーツケーキも捨てがたいかな」
それから、ちょっとチュールの案内で『ホンカン』を捜しにいったら中庭にいた。
あれ、公爵夫人も一緒だ。
何をやってるんだろう。
そして近寄ってみたら、びっくり。
チェスしてた。
こっちの世界には地球のこういうボードゲームみたいな物が意外と溢れてる。
それらは、当然あの青い鳥の陰謀によって結果的にもたらされたものであった。
そしてチャックが一つ駒を動かした後で、手元の駒の一つを持ち上げて、机を軽く三回叩いた。
どうやら、チェックメイトという事らしい。
「あらやだ。また負けちゃった。
ねえサヤ、この子にチェスを教えてあげたんだけど、結構強いわよ」
「あんた、何をやってるのよ」
『公爵夫人からチェスを教えていただいているのであります。
結構楽しいです』
「あんたって確か脳がいっぱいあるんだよね。
普通の人間がチェスで勝てるはずがないでしょ。
まあいいんですけど。
あ、公爵夫人。
明後日の晩はパーティに行きますので」
「あらそう。どこの?」
「騎士団本部ですよ。
この間の騒動の慰労会ですね。
私の主催です」
「へえ、いいわね」
『パーティでありますか。
本官も護衛として行った方がよろしいのでしょうかと聖女サヤに確認してみます』
「あんたは駄目。
チュールだけ連れて行くから」
『それは何故でしょう』
「あんたが世界最高にフルボッコにした騎士達を私が慰労する会だからよ」
『はっはっは。
本官が出席したら、彼らがどのような反応を示すものか見られなくて残念だと聖女サヤに報告しておきます』
「あはは、あんたって本当に面白い子ねえ」
『人生は楽しい方がいいですよ。
まあ本官は人ではありませんが』
「確かにね。よく覚えておくわ」
『光栄であります』
とりあえず、今日は王宮へ連れていってあげられなかったので、今からチュールのおやつも兼ねてお菓子作りをする事にした。
今日は小豆が手に入ったので、お饅頭に挑戦。
小豆を煮て、その間にお饅頭の皮作り。
小麦粉やイスパタ(イーストパウダー)なんかの、簡単な材料で作る奴なので皮自体はすぐ出来る。
この世界にもベーキングパウダーはあるけど、これを使うと色がついてしまうと言われるので和菓子同様にイスパタを使う。
たぶん、昔ながらの材料である米の粉と山芋類の方が美味しそうだけど、今日は準備がないので。
小豆の餡が煮えるまでが大変だったが、そこは頑張った。
こういう物って馬達が食べるかもと思ったので、こいつは多めに作っておいた。
ここの厨房にはちゃんと蒸し器があるのだ。
普段は何に使っているんだろうな。
今度中華まんにでも挑戦しよう。
時間的に丁度おやつの時間になったので、チュールと一緒に味見した。
「おお、これはまた素朴な味だ。
まあすっごいシンプルな奴なんだけどね」
『これも美味しいけど、やっぱりシュークリームかな』
「そうね。
お馬さんの意見も聞いてみようか」
そして厩へ行き、連中にも食べさせてみたのだが、まあまあくらいの反響?
『甘くて美味しいっすね』
『でもちょっと小さいかな』
『僕はおやつがいただけるのなら何でも』
『わしは人参の方が好みでごわす』
『サヤー、遊んでー』
「もう、しょうがないわね。
今日は忙しいから、ちょっとだけよ」
結局、馬といっぱい遊んでしまった~。
昼中の厨房が空いた時間に、あれこれやる予定だったのにー。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
その聖女は身分を捨てた
喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。
その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。
そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。
魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。
こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。
これは、平和を取り戻した後のお話である。
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる