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第二章 世直し聖女
2-24 またしても、王宮からお呼び出し
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おいどんは、馬車で王宮へ向かう中でも彼の得意技で実体を解いて私と共にあった。
もちろん、その状態でも私と話は出来る。
あの壁の中から聞こえる可愛らしい声で。
実体化すると、何故あのようなおいどんになってしまうものか。
『どこ行くのー』
「王宮よ。
あんた、そうやってずっと可愛いらしくしていられないの」
『知らなーい』
「もう!」
その一方でチャックは、まだ転がったままの格好でいて、「王宮へ行ってくるわね」と声をかけたら、このような事を。
『行ってらっしゃいませと、本官は横になったままの姿勢から失礼します。
これが魔物兵士死屍累々のマースデン王国であったならば、魔物がこのような醜態を晒した場合には散々蹴りを入れられた後で、縛り上げられて逆さ吊りの運命でありましょう。
しかしながら、本官は本日このままの姿勢で怠惰に過ごそうと思っていますと聖女サヤに通告いたします。
気力の充電に努めたいと、体の中の奥の方で何者かが叫んでいます』
「お、御疲れ。
今日は無理をしなくていいわよー。
ゆっくりと休んでね~」
ブラックな新職場でごめんねー。
でも前の職場の方がそれを十二分に上回るレベルでブラックだなあ。
そして馬車の中でチュールが言った。
『チャックの奴って、本当に堅い奴だから。
あれじゃサヤの従者をしていたら身がもたない。
今日はゆっくりと転がって休んでいたらいいよ』
「ねえ、それは一体どういう意味かな~」
『サヤは自他共に認める無茶な人だから。
そっと自分の胸に手を当ててごらん』
「うぐっ。それに関しては反論できない」
ふとリュールを見たら、うとうとして体がゆらゆらしていた。
くすっ、この人にしては本当に珍しいシーンだ。
じっくりと堪能しよう。
昨日のあれは、ある意味で死屍累々というのに相応しい戦いだった。
一応皆にも回復魔法はかけておいたんだけど。
あの後、二次会へ行った冒険者どもったら、今日はどうしているものか個人的には非常に興味が尽きないな。
飲み過ぎで唸っているのか、ピンピンして仕事に出かけているものか。
やがて馬車は王宮へと到着し、降りてから少々不安になって声をかける。
「サル、いる?」
『いるよー』
「ならいいや」
奴がいなかったら、ここへ来た意味がないもんね。
またあちこちを捜索しないといけなくなる。
案内の兵士に従って、またこの間の謁見の間に向かった。
「ねえ、リュール。
今回も謁見する必要あるの?
もうこういうのも慣れてきたけどさ」
「ん? ああ、今日の要件からすれば、おそらくな」
「へえ?」
あの、おいどんは王様と謁見させねばならない何かなのだと⁇
王太子殿下とは謁見どころか、もはや飲み友達と化していたような気がしたが。
しかし、あいつ実態を消してしまえるような存在なのに派手に飲み食いしていたな。
一体どうなっているのか。
まあチャックだって、食っているものがあれで、何故活動が可能なのか未だに謎なのだが。
異世界には妙な謎が多い。
とりあえず、あの詐欺師の青い鳥の謎を解き明かさない限り、私は家に帰れない訳なのだが。
そして、本日も重々しく開けられた扉を取って中に入れば、やっぱり今日もいたよ。
貴族なんかの偉い人達が。
しかも、今日は妙にこっちを見ている。
この前は、単にお義理で出席していましたよといった風情であったのに。
そんなに「おいどん」の事が気になるのかな。
まあ、昨日は十分に王宮を騒がせたわけなのだが。
それを言うのなら、チャックの方がインパクトあったはずなのだが。
チャックは昨日もお目見えしちゃったけどね。
もっとも、偉い人はみんな退避しちゃっていて王宮にはいなかったけど。
そして我々が王様の前へ進み出ると、彼は気もそぞろな感じな感じで気忙し気に話しかけてきた。
「サヤよ、よく来てくれた。
して、あの方は?」
「は? あの……方?」
私は片膝を着きながら表を上げて首を傾げてしまった。
あの方とは、まさか⁇
いや、いくらなんでも……。
「精霊獣、いや神獣様は」
はい、大当たり。
し、神獣~?
えー……。
そんな私の顔を見て、王様も少し驚いたような風だ。
「ど、どうしたのじゃ、サヤ」
「ああ、いや。
あのう、昨日私めが連れて帰った物が神獣ですと?」
「そうじゃ。
この国では昔から崇められておる、神のお使いのようなもの。
それが神獣様じゃ」
そ、想像できない。
あれのどこに、そのような神々しい要素があるというのか。
別にここに用があったわけじゃなくて、いい匂いに釣られてきただけなのに。
「そうですか。
そのような方でございましたか」
「そうじゃ。
して、神獣様はどこにおられるのじゃ?」
「サル、いるかな」
「いるよー」
「おお、そこにいらっしゃるのじゃな」
「あなた、だあれ?」
「私はこの国の国王ですじゃ」
「知らない」
思わず沈黙の帳が覆い尽くした謁見の間。
リュールが軽く咳払いを一つ。
だが、私がボーっとしているままなので、咳払いがもう一つ。
「あのう、私にどうせよと」
「ああ、彼に姿を見せてもらえるように頼んでくれないか」
「ねえ、サル。ちょっと姿を見せてくれない」
「えー、なんで?」
「いいからさー」
「なんか、やだー」
あのモフモフ、この期に及んで駄々をこねやがった。
今まで散々ここで徘徊して人を驚かせていやがったくせに。
困った奴だな。
ここへ来ちゃったというのに、今更どうしろと。
もちろん、その状態でも私と話は出来る。
あの壁の中から聞こえる可愛らしい声で。
実体化すると、何故あのようなおいどんになってしまうものか。
『どこ行くのー』
「王宮よ。
あんた、そうやってずっと可愛いらしくしていられないの」
『知らなーい』
「もう!」
その一方でチャックは、まだ転がったままの格好でいて、「王宮へ行ってくるわね」と声をかけたら、このような事を。
『行ってらっしゃいませと、本官は横になったままの姿勢から失礼します。
これが魔物兵士死屍累々のマースデン王国であったならば、魔物がこのような醜態を晒した場合には散々蹴りを入れられた後で、縛り上げられて逆さ吊りの運命でありましょう。
しかしながら、本官は本日このままの姿勢で怠惰に過ごそうと思っていますと聖女サヤに通告いたします。
気力の充電に努めたいと、体の中の奥の方で何者かが叫んでいます』
「お、御疲れ。
今日は無理をしなくていいわよー。
ゆっくりと休んでね~」
ブラックな新職場でごめんねー。
でも前の職場の方がそれを十二分に上回るレベルでブラックだなあ。
そして馬車の中でチュールが言った。
『チャックの奴って、本当に堅い奴だから。
あれじゃサヤの従者をしていたら身がもたない。
今日はゆっくりと転がって休んでいたらいいよ』
「ねえ、それは一体どういう意味かな~」
『サヤは自他共に認める無茶な人だから。
そっと自分の胸に手を当ててごらん』
「うぐっ。それに関しては反論できない」
ふとリュールを見たら、うとうとして体がゆらゆらしていた。
くすっ、この人にしては本当に珍しいシーンだ。
じっくりと堪能しよう。
昨日のあれは、ある意味で死屍累々というのに相応しい戦いだった。
一応皆にも回復魔法はかけておいたんだけど。
あの後、二次会へ行った冒険者どもったら、今日はどうしているものか個人的には非常に興味が尽きないな。
飲み過ぎで唸っているのか、ピンピンして仕事に出かけているものか。
やがて馬車は王宮へと到着し、降りてから少々不安になって声をかける。
「サル、いる?」
『いるよー』
「ならいいや」
奴がいなかったら、ここへ来た意味がないもんね。
またあちこちを捜索しないといけなくなる。
案内の兵士に従って、またこの間の謁見の間に向かった。
「ねえ、リュール。
今回も謁見する必要あるの?
もうこういうのも慣れてきたけどさ」
「ん? ああ、今日の要件からすれば、おそらくな」
「へえ?」
あの、おいどんは王様と謁見させねばならない何かなのだと⁇
王太子殿下とは謁見どころか、もはや飲み友達と化していたような気がしたが。
しかし、あいつ実態を消してしまえるような存在なのに派手に飲み食いしていたな。
一体どうなっているのか。
まあチャックだって、食っているものがあれで、何故活動が可能なのか未だに謎なのだが。
異世界には妙な謎が多い。
とりあえず、あの詐欺師の青い鳥の謎を解き明かさない限り、私は家に帰れない訳なのだが。
そして、本日も重々しく開けられた扉を取って中に入れば、やっぱり今日もいたよ。
貴族なんかの偉い人達が。
しかも、今日は妙にこっちを見ている。
この前は、単にお義理で出席していましたよといった風情であったのに。
そんなに「おいどん」の事が気になるのかな。
まあ、昨日は十分に王宮を騒がせたわけなのだが。
それを言うのなら、チャックの方がインパクトあったはずなのだが。
チャックは昨日もお目見えしちゃったけどね。
もっとも、偉い人はみんな退避しちゃっていて王宮にはいなかったけど。
そして我々が王様の前へ進み出ると、彼は気もそぞろな感じな感じで気忙し気に話しかけてきた。
「サヤよ、よく来てくれた。
して、あの方は?」
「は? あの……方?」
私は片膝を着きながら表を上げて首を傾げてしまった。
あの方とは、まさか⁇
いや、いくらなんでも……。
「精霊獣、いや神獣様は」
はい、大当たり。
し、神獣~?
えー……。
そんな私の顔を見て、王様も少し驚いたような風だ。
「ど、どうしたのじゃ、サヤ」
「ああ、いや。
あのう、昨日私めが連れて帰った物が神獣ですと?」
「そうじゃ。
この国では昔から崇められておる、神のお使いのようなもの。
それが神獣様じゃ」
そ、想像できない。
あれのどこに、そのような神々しい要素があるというのか。
別にここに用があったわけじゃなくて、いい匂いに釣られてきただけなのに。
「そうですか。
そのような方でございましたか」
「そうじゃ。
して、神獣様はどこにおられるのじゃ?」
「サル、いるかな」
「いるよー」
「おお、そこにいらっしゃるのじゃな」
「あなた、だあれ?」
「私はこの国の国王ですじゃ」
「知らない」
思わず沈黙の帳が覆い尽くした謁見の間。
リュールが軽く咳払いを一つ。
だが、私がボーっとしているままなので、咳払いがもう一つ。
「あのう、私にどうせよと」
「ああ、彼に姿を見せてもらえるように頼んでくれないか」
「ねえ、サル。ちょっと姿を見せてくれない」
「えー、なんで?」
「いいからさー」
「なんか、やだー」
あのモフモフ、この期に及んで駄々をこねやがった。
今まで散々ここで徘徊して人を驚かせていやがったくせに。
困った奴だな。
ここへ来ちゃったというのに、今更どうしろと。
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