異世界へようこそ、ミス・ドリトル

緋色優希

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第二章 世直し聖女

2-34 我こそはミス・ドリトルなり

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「あら、サヤじゃない。
 今日は何の御用?」

「ああ、本日は例の青い鳥、あれに関する情報の収集を冒険者に依頼しようと思いまして」

「なるほど。
 じゃあ、いらっしゃい。

 もう聖女として国家から正式に認定されているのだから、そういう依頼を出しても問題ないかしらね。
 直接王国には依頼し辛いでしょうし」

「そのようです」

 サブマス執務室(実質的なギルマス執務室)へ向かうために階段を登りながら訊かれた。

「そういえば、またモフモフな奴を持ち帰ったんだって?」

「ええ、ただいま、私の大事な魔物騎士をベッド代わりにしていますので困ったものですが。
 帰ったら、今晩は私の枕として立派に使命を果たすように要求する予定です」

「国家の浮沈に関わるような伝説の神獣を枕代わりとしか思っていない時点で、あなたももう真っ当じゃないわね」

「放っておいてください。
 それこそが、故郷にて友人諸姉からミス・ドリトルと謳われた、この私の生きる道でありますので」

「はいはい。
 じゃあ、書類に記入をお願いね。
 この依頼の報酬はどうする?」

「そうですね。
 情報に三段階にランク付けをして、銀貨一枚から最高金貨十枚まで。
 金貨十枚は直近の詳細で明確な位置情報ですね。
 目撃情報の裏付けのある居場所の見当ならば、金貨一枚。
 単なる情報のみならば銀貨一枚で。
 もし青い鳥そのものを生け捕りにして持ち帰ったのであれば、白金貨一枚を進呈しますよ」

「なかなか張り込むわね」

「それくらいしないと、そうそう情報すら見つからない相手ですよ。
 もし預けてあるお金で足が出たら言ってください」

「基本的に情報調査のみで、そこまでの出費はないと思うけど。
 そんな物はドラゴン捕獲のようなスペシャル案件よー」

「いいですね、ドラゴン。
 青い鳥が捕まらなかったら、そっちの捕獲依頼を出してもいいかしら。
 空の足に使える『ドラゴンの騎士』が欲しいのです」

「今回の聖女は、ドラゴン自身を騎士に迎えたいのか。
 サヤも完全にイカレていますね」

「それが愛土小夜という人間ですので、なんとでも言いたいように言ってください」

 書類の作成が終了したので、そいつを掲示板に張り出すのについていった。

「そういや、ぜんぜん興味がなかったので、この依頼掲示板を見た事が一度もありませんね」

「そりゃあ、このあたしが冒険者稼業はするなと言ったのですからね。
 よかったら見るだけ見てみる?」

「拝見しましょう。
 私、お菓子でも作っている以外に特にやる事もありませんので。
 後の時間はモフモフな奴らと遊ぶのみです」

「あはは。
 そういや、後でまた素材を見せてもらってもよかったかしら。
 たぶん、この中の依頼に該当する素材も、あなたが持っているかもね」

「いいですね。
 それで貰えるお金があったら、そいつをまた青い鳥の捜索費用に注ぎ込んでおくとしましょう。
 まあ餅は餅屋にという事で」

 そして、私は何の気なしに掲示板を覗いてみて思わず沈黙した。

「現ホルデム公爵に関する居場所の確定情報。
 達成は本人の帰宅が実現した時のみとする。
 報酬は白金貨一枚」

 これ、きっと奥さんからの依頼だな。
 娘の方はいいのか?
 まあ父娘でワンセットといえなくもない。

 なんと報酬が青い鳥捕獲と同じ金額だ。
 あの金額だと青い鳥関連は魅力が薄かったかな。
 まあ、とりあえずはあの条件でいくとするか。

 どれどれ、あとはっと。

「魔獣エクセレスの魔核 あるいは他のティム疎外系アイテム 報酬応相談」

 これは王国からの依頼かあ。
 私が一つ達成しちゃった奴だな。

 まだ他にも要るのかな。
 生憎とあれは一つしかないんだ。
 高位魔獣の魔核みたいだし。

 ティム疎外系? 気になるワードがありますね。
 マースデンの魔物部隊への対策なのかな。

「そのあたりは難易度の高い、簡単にいかない特別な依頼よ。
 必ずしも高位のパーティでなくても出来る内容もあるから皆も見るわね。
 青い鳥関係の依頼はそこに張っておくわ」

「よろしく~」

 そして気がついた。

「ねえ、魔獣ってやたらと攻撃しちゃいけないんじゃなかったっけ」

「ああ、そうなんだけど、こういう王国からの特別な依頼みたいな物は別ね。
 それと、そこに書かれている魔獣エクセレスという物がなんというか、またアレな魔獣でね。

 まあ害獣に近い奴だから完全に討伐対象ね。
 魔獣にしては珍しく見境なく人間を襲うし、同じ魔獣にも攻撃しまくるから。

 これも辺境住みの魔獣だから滅多には見かけないけどね。
 素早い飛行魔獣だし簡単には討伐できないわ」

 なるほど。
 それでガルさんがそいつの魔核を持っていたのねー。
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