13 / 66
第一章 渡り人
1-13 新スキル獲得
しおりを挟む
そして翌朝、人がざわざわする気配で目が覚めた。気になったので見に行ったらミョンデ姉はまだぐうぐうと寝ていた。やれやれ。
俺が外に出ていくと、集まっていた人の中から村長に話しかけられた。
「アンソニー、ゴブリンは倒したのかね?」
「こいつで眉間を打ち抜いて、矢が貫通していったのは見たから多分。僕は狐のように夜目が利きますから」
そう言って、俺は昨夜回収しておいた、緑色の血と脳味噌らしき乾いた肉片がこびり付いた矢を見せた。父同様にその小柄な矢の重量に驚きながら彼は相好を崩した。
「はっは。そいつは頼もしい。その年で、この矢を操るか。血は争えないな。お前の爺さんもいい猟師だった」
「それは初耳」
俺はその有用な情報を生かすためにDNA情報を検索しロードしてみた。
おお、こいつはすげえや。叔父さんの約5倍とも言えるだろう、強力な猟師としての能力が手に入った。データファイルとしてスキルをパッケージングし直して、DNAに格納した。中でもこれは!
『ホーミング・アロー』
まるで誘導弾でもあるかのように獲物の急所を打ち抜いたという神業だ。
目を瞑ったまま、空の鳥を撃ち落としたとあるな。そして全力疾走する熊や猪の急所を打ち抜いたとDNAの記録にはある。その打ち抜く力も叔父さんの軽く二倍から三倍はあるぜ。どんな超人だったんだよ、お爺様。
何故今いてくれないんだ。ひゅう、大一番を前にありがたいね。冒険者が間に合わなかった場合は俺も参戦するかな。というか、やらないと殺されちまいそうだ。
「ねえ、お父さん。お爺さんは今どこに?」
「ああ、猟師の仕事でずっと他所に行っているんだ。村の猟師は叔父さんが後を継いだからね。村のために、いろいろ設備を整えようと出稼ぎに行っているんだ。お前の顔も見せたいんだが。今はかなり遠くへ行っているらしい」
へえ。今このタイミングでそんな人が帰ってきたらヒーローだよね。会ってみたいな。願わくは、可愛い孫へのお土産に新しいスキルとかも身に着けてきてくれると嬉しいんですけど。
そもそも、うちのお父様や叔父さんをこさえた段階で終了しているデータなのだから、きっと現物のお爺様は、もっといいスキルを持っていそうなんだがなあ。
俺は念のため、矢の在庫を数えてみた。鋼鉄矢が20本。こいつは数が少ないのさ。昨日わざわざ回収した理由がこれだ。
後はお手製の矢だ。鍛冶屋さんとこで、屑鉄から工夫して何とか作り上げた自家製の矢、それをなるべく堅くて重い枝で加工して矢に仕立て上げる。
よく乾燥させないと、後で曲がってしまうので苦労した。一回ミョンデ姉が薪と間違えて全部火にくべちまったので、それ以来は鍛冶屋さんで保管してもらってある。
あの時は年齢なりに大いに泣き喚いたものだ。苦労して集めたものだからな。その一般の矢はやっと70本。少ないな。やはり冒険者のスキルがほしい。
魔法の矢を無限に作れるスキルとかないものかね。さすがのスーパーお爺様も、そこまで神の懸かったスキルは持ち合わせがないようだ。俺は村長さんに訊いてみた。
「ねえ、ゴブリンの集団ってどれくらいいるものなの?」
「それは見てみんとわからぬなあ。最低でも30匹以上はおるだろうし。15年前は三百匹以上いたもんじゃ」
「うへえ」
俺は顔を顰めた。もう一つ聞いてみた。
「そいつの上位種がいるって事は?」
「まあ、上位種というか、群れの中には統率する王や、その下で群れを管理する幹部の者がおるはずだ。体も大きいぞ。なんと言ったかな、忘れてしまったが。確か、王の方はゴブリンキングという。
昔に討伐された奴を見たが、あれはでかかったな。並みのゴブリンなど、お前に毛の生えたようなものだが、王はお前の叔父よりも遥かにでかい。人があれに捕まったのなら、ただではすむまいよ。
群れの中で各集団を統率するリーダー達も、人の重さの倍はあるほどじゃった。15年前は、そやつらが10人もおったわ」
うげえ。そいつらには、俺の矢も通じそうもないな。俺の嫌そうな顔を見て村長は笑って言った。
「そう心配そうな顔はせずともよい。先ほど、街から早馬が来た。冒険者10名が昼までには到着する。間に合ってよかったことだ。お前が昨日奴らの斥候グループを追っ払ってくれたから幸いだ。
群れの討伐を想定してリーダーは上級冒険者が務めてくれるそうだ。ゴブリンの群れなら、それで十分な討伐隊だ。お前は家を守っていなさい」
もとより、そのつもりでございますが。こっちは幼児なんだぜ、しかもまだ二歳児だ。でも凄いスキルゲットの大チャンス到来。緊張する皆には申し訳ないが、俺は浮かれていた。
父は明るくなってゴブリンがやってこないのを見越して皆に知らせに行ったあと、今は寝ている。その間は俺が家を守るぜ。俺は弓二張りと全部の矢を持って、家の前に陣取った。
窓などは封鎖してある。ミョンデ姉め、まだ起きてこないつもりらしい。ゴブリン騒ぎで畑仕事が無いのをいいことに。本当にたいした玉だぜ。ある意味で一番尊敬できる性格だな。スキル化しないかしら。さしずめ、『女傑の豪胆』とか?
まあ、うちは町方面から村役場へ行く途中にあるんで、冒険者が来れば見えるはずだ。それに俺の家はゴブリンが来た現場の一つでもあるのだ。彼らも検分に来るかもしれない。どんな奴らだろう。俺はわくわくが止まらなかった。
俺が外に出ていくと、集まっていた人の中から村長に話しかけられた。
「アンソニー、ゴブリンは倒したのかね?」
「こいつで眉間を打ち抜いて、矢が貫通していったのは見たから多分。僕は狐のように夜目が利きますから」
そう言って、俺は昨夜回収しておいた、緑色の血と脳味噌らしき乾いた肉片がこびり付いた矢を見せた。父同様にその小柄な矢の重量に驚きながら彼は相好を崩した。
「はっは。そいつは頼もしい。その年で、この矢を操るか。血は争えないな。お前の爺さんもいい猟師だった」
「それは初耳」
俺はその有用な情報を生かすためにDNA情報を検索しロードしてみた。
おお、こいつはすげえや。叔父さんの約5倍とも言えるだろう、強力な猟師としての能力が手に入った。データファイルとしてスキルをパッケージングし直して、DNAに格納した。中でもこれは!
『ホーミング・アロー』
まるで誘導弾でもあるかのように獲物の急所を打ち抜いたという神業だ。
目を瞑ったまま、空の鳥を撃ち落としたとあるな。そして全力疾走する熊や猪の急所を打ち抜いたとDNAの記録にはある。その打ち抜く力も叔父さんの軽く二倍から三倍はあるぜ。どんな超人だったんだよ、お爺様。
何故今いてくれないんだ。ひゅう、大一番を前にありがたいね。冒険者が間に合わなかった場合は俺も参戦するかな。というか、やらないと殺されちまいそうだ。
「ねえ、お父さん。お爺さんは今どこに?」
「ああ、猟師の仕事でずっと他所に行っているんだ。村の猟師は叔父さんが後を継いだからね。村のために、いろいろ設備を整えようと出稼ぎに行っているんだ。お前の顔も見せたいんだが。今はかなり遠くへ行っているらしい」
へえ。今このタイミングでそんな人が帰ってきたらヒーローだよね。会ってみたいな。願わくは、可愛い孫へのお土産に新しいスキルとかも身に着けてきてくれると嬉しいんですけど。
そもそも、うちのお父様や叔父さんをこさえた段階で終了しているデータなのだから、きっと現物のお爺様は、もっといいスキルを持っていそうなんだがなあ。
俺は念のため、矢の在庫を数えてみた。鋼鉄矢が20本。こいつは数が少ないのさ。昨日わざわざ回収した理由がこれだ。
後はお手製の矢だ。鍛冶屋さんとこで、屑鉄から工夫して何とか作り上げた自家製の矢、それをなるべく堅くて重い枝で加工して矢に仕立て上げる。
よく乾燥させないと、後で曲がってしまうので苦労した。一回ミョンデ姉が薪と間違えて全部火にくべちまったので、それ以来は鍛冶屋さんで保管してもらってある。
あの時は年齢なりに大いに泣き喚いたものだ。苦労して集めたものだからな。その一般の矢はやっと70本。少ないな。やはり冒険者のスキルがほしい。
魔法の矢を無限に作れるスキルとかないものかね。さすがのスーパーお爺様も、そこまで神の懸かったスキルは持ち合わせがないようだ。俺は村長さんに訊いてみた。
「ねえ、ゴブリンの集団ってどれくらいいるものなの?」
「それは見てみんとわからぬなあ。最低でも30匹以上はおるだろうし。15年前は三百匹以上いたもんじゃ」
「うへえ」
俺は顔を顰めた。もう一つ聞いてみた。
「そいつの上位種がいるって事は?」
「まあ、上位種というか、群れの中には統率する王や、その下で群れを管理する幹部の者がおるはずだ。体も大きいぞ。なんと言ったかな、忘れてしまったが。確か、王の方はゴブリンキングという。
昔に討伐された奴を見たが、あれはでかかったな。並みのゴブリンなど、お前に毛の生えたようなものだが、王はお前の叔父よりも遥かにでかい。人があれに捕まったのなら、ただではすむまいよ。
群れの中で各集団を統率するリーダー達も、人の重さの倍はあるほどじゃった。15年前は、そやつらが10人もおったわ」
うげえ。そいつらには、俺の矢も通じそうもないな。俺の嫌そうな顔を見て村長は笑って言った。
「そう心配そうな顔はせずともよい。先ほど、街から早馬が来た。冒険者10名が昼までには到着する。間に合ってよかったことだ。お前が昨日奴らの斥候グループを追っ払ってくれたから幸いだ。
群れの討伐を想定してリーダーは上級冒険者が務めてくれるそうだ。ゴブリンの群れなら、それで十分な討伐隊だ。お前は家を守っていなさい」
もとより、そのつもりでございますが。こっちは幼児なんだぜ、しかもまだ二歳児だ。でも凄いスキルゲットの大チャンス到来。緊張する皆には申し訳ないが、俺は浮かれていた。
父は明るくなってゴブリンがやってこないのを見越して皆に知らせに行ったあと、今は寝ている。その間は俺が家を守るぜ。俺は弓二張りと全部の矢を持って、家の前に陣取った。
窓などは封鎖してある。ミョンデ姉め、まだ起きてこないつもりらしい。ゴブリン騒ぎで畑仕事が無いのをいいことに。本当にたいした玉だぜ。ある意味で一番尊敬できる性格だな。スキル化しないかしら。さしずめ、『女傑の豪胆』とか?
まあ、うちは町方面から村役場へ行く途中にあるんで、冒険者が来れば見えるはずだ。それに俺の家はゴブリンが来た現場の一つでもあるのだ。彼らも検分に来るかもしれない。どんな奴らだろう。俺はわくわくが止まらなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
130
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる