DNAにセーブ&ロード 【前世は散々でしたが、他人のDNAからスキルを集めて、今度こそ女の子を幸せにしてみせます】

緋色優希

文字の大きさ
54 / 66
第二章 王都へ

2-1 お買い物

しおりを挟む
 お風呂をいろんな意味で堪能してから、お買い物の時間だ。せっかく綺麗にしたのにまた外に行くのか。まあこの辺は石畳だから、埃とかまだマシなんだけど。

「さあ、何から見に行くのかな」
 スカーレット嬢は楽しそうだ。何しろ、あのまま盗賊に捕まっていれば、金も積み荷も奪われた上に商会の男は殺され、自分も今頃は盗賊どもの慰み者になっていたのだ。

 可愛い子供達と一緒に買い物なら上等な時間だろう。ロザンナも一緒についてきている。本来、こういう場所での護衛は彼女の仕事なのだ。俺達はおまけみたいなもの、いやミョンデ姉は確実におまけだ。

「お人形!」
「なるほど。いいね」

 俺は生まれてくる下の子が必ず妹だと踏んでいるので、何か見繕っていくつもりだったのだ。もう少し金に余裕があればよかったのだが。俺は相場というものについて考えていた。おそらく、この町は。

「あ、あそこに人形の店が」
 ダッシュで駆けていくミョンデ姉。一人で行くなよ、都会には人攫いだっているんだぜ。

 あんた、一応器量良しなんだからよ。売り飛ばすには絶好の人材だ。人形を買ってやるからと言われて、そのまま袋詰めにされそうだ。だが、奴は店の前で固まっていた。

「ア・ア・アンソニー。こ、この値段見て」
 物の値段の見方だけは学習したらしいミョンデ姉。

 そこには金貨十枚と書かれてあった。やっぱりとっても物価が高かったのかあ。消費税がないだけマシだなあ。

「お姉ちゃん、この町はね。とっても物価が高いんだよ」
「アンソニー、どうしよう」

「どうしようって言われてもな。その人形だけで手持ちの金が全部吹き飛んじまうよ。それ、目玉の高い奴だから、そこに飾ってあるんだ。そして、この店は別に町で最高級店じゃあないと思うから」

 たまたま通りがかりに見つけただけだものな。二人で店の前できゃあきゃあやっていると、スカーレット嬢がやってきて言ってくれたのだ。

「ふふ、それはちょっと高いから駄目だけど、こっちの金貨二枚のなら買ってあげるわよ」
「本当?」

 ミョンデ姉は小躍りせんばかりだ。どっち道サラムで売っている奴にくらべたら超上等の品なのだ。ここは庶民が買う店ではないのだ。

「アンソニーも見てたみたいだけど、もしかして君もお人形が欲しいの?」
「いや、こっちはそのうち生まれてくる妹のために」

「アンソニー、まだ生まれてないんだから、弟かもしれないじゃない」

「いいの。僕の脳内ではすでに妹が誕生しているのです。むろん、弟でも大歓迎よ。とにかく、この図体で末っ子というのは肩身が狭くって」

 スカーレット嬢は、俺達の頭を撫でて人形を二個買ってくれた。彼女は我々に感謝してくれているのだ。

 帰ってから、夕食の時間だ。さて、栄養をしっかり取ろうかな。奢りで食えるのは今晩限りなんだから。

 すぐに運び込まれてきた食事に遠慮なく齧り付きたいところだが、その前に簡単な食前の挨拶だ。

「天の福音に感謝して、地の恵みをいただきます。偉大なる神カイゼラに祈りを」
 カイ自体が神を表す言葉である。つまり神ゼラという呼び方なのだ。

「さあ遠慮なくお食べなさい」
「いいのかね、こいつにそんな事を言って」

「え?」
 伯爵の言葉にきょとんとしたスカーレット嬢は、不思議そうに自分も料理に手をつけ始めた。そして見たのだ、俺の食いっぷりを。大人一人前でと指定された前菜は一瞬のうちに皿から消失した。

「は?」
 ロザンナの間抜けな声が緩やかに食卓を彩った。

「あの、ボーイさん」
 にこやかに遅滞なく近づいてくるボーイ。こんな美人のスカーレット嬢に呼ばれたのなら当然だよな。

「なんでしょう」
「前菜のお替りを、もう……『五皿でお願いします』 え?」
 俺は一応自分で注文しておいた。大体、ここの料理の加減だとこんなものか。

 まだ自分の分を食べ出したばかりのミョンデがポカンとしていたが、慌ててフォークとナイフを持ってテーブルマナーと格闘していた。俺は生前の知識が通用していたので優雅なものだ。農村の二歳児とは我ながらとても思えん。

「アンソニー、少しは味わって食べなさいよ。こんなに美味しいのに」

「え? 十分に味わっていますが。この蒸したホロホロ鳥の冷製の仕上げときたら絶品。山ぐるみのソースもまた、なんとも。それと付け合わせのピクルスも悪くない。鹿肉の冷製も癖がなくとても美味しい。

 鴨のテリーヌらしきものもなかなかのものだよ。原料自体はうちの田舎でもなんとかなりそうだが、この洗練という奴だけはなあ。せめて腹いっぱい食べていこう」

「そうだった。あんたはそういう奴だったね……」
 それを見て苦笑いする大人達。

「いかがですかな、皆さん。このアンソニーという小僧は」
「あはは。こんな子は他にいないわねえ」

「この図体だけ大きな二歳児を私は国王陛下のところに連れていかねばならんのです。頼むから、陛下の前でだけは何もしないでくれよ……」

「まことにお気の毒という他はないな、ブルームン伯爵」
 心からの同情を込めた感じのロザンナの慰めだったが、その間にも着々と到着してくる料理を俺は熱心に片付けていた。そして、考えていた事がある。

「伯爵、金貨一枚貸してくれない?」
「ああ、金貨一枚くらいくれてやるが、こんなところで必要なのか? 支払いは彼女がしてくれるが」

「ああ、別に料理の代金を払うわけじゃないんだ。あ、ありがとう」

 伯爵から金貨を受け取った俺を見て、ミョンデ姉も妙な顔をしている。またこの奇天烈な自分の弟は何をするのかと。そして、お替りを持ってきてくれたボーイさんに言伝た。

「後で、料理長に僕のところに来てもらえるように言ってくれないか」
 そう言って彼に銀貨を一枚握らせた。

「かしこまりました、坊ちゃま」

 ボーイの後姿を見送りながら、料理の続きを平らげつつ、
「一体何を考えているんだ、お前は」

 ロザリオはそんな事を言っていたが、伯爵はもう俺が何を企んでいるのかわかったようで、お手並み拝見といった顔で料理をいただいている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...