63 / 66
第二章 王都へ
2-10 王宮内へ
しおりを挟む
近づいてくる王宮、それはまた大迫力のスペクタルだった。カツカツと響く馬の蹄の音、そして車輪が石畳を蹴る音がBGMだ。
映画の音声とは違い、生の音だからな。生演奏のBGMでトーキーの映画を見るかのような迫力だ。その全てが自然体で構成されているのだから、これはもう堪らない。
しばらく俺はその快感に身を委ねた。馬車の窓から乗り出してみていたら、伯爵から声がかかる。
「おい、落ちるから身を乗り出さないように。ここで落ちられたら堪らん」
「はーい」
俺達は前進守備で前が見える位置に移動した。いやあ、堪能堪能。
やがて、馬車は王宮前の門へと着いて停車した。この世界は今平和なのか。ここは城ではない。
塀も何というか、ごつい石壁ではなく木製で装飾性の高い、高さ二メートルくらいの細めの素材で作られたフェンスとでも言った方がいいような、向こう側がよく見えるものだ。その代わり、歩哨が頻繁に行き来している。
門も何者かを阻止するといったものではなく、通行チェックのための『ゲート』といった方がいいようなものだ。
「ブルームン伯爵だ。本日謁見の予定でまかりこした」
「お疲れ様です。このまま、王宮正面に乗りつけて、チェックを受けてください」
「ご苦労さん」
そして、内部の通路、広くなった馬車道を進んでいった。なかなか立派な通路になっており途中で馬車が止まっても、他の馬車が安全に通行できるような広さがあり、また広めの歩道まで完備されている。馬車道なので一方通行ではあるが。馬車は三台くらい通れそうな感じだな。
「へえ、伯爵、ここは立派なものだね」
「それは当たり前だ。我がサンレスカ王国は富裕な国だからな。この通路も各チェックポイントがあって、平民や業者は荷物検査がある。何かあれば封鎖する事も可能だ。そら、そこにもある」
伯爵が挙手をすると、そこに詰めている兵士達も挙手を返してくれる。なるほど、直接門から王宮の入口へ行かずに、ここはぐるっと回って何重かの警備ポイントを回ってから王宮正面の停車場へと向かうのか。
さすがは王宮だけの事はある。うちの村なんか、ロバが二頭いるだけなのだ。時折は彼らも荷馬車を引いてお仕事しているのだ。荷物を括り付けて人を乗せていく方が多いのだが、農作物を収めに行く場合は。町からも回収に来てくれたりはするのだが。
貴族の馬車は止められないようだ。まあ、その分信頼を裏切るようなおかしな真似をすれば打ち首になったりするのだろう。
しばらく、あまり面白くない景色が続くのであるが、俺達は初めてで面白いので、チェックゲートの兵士や商人さんなどに手を振った。歩いている人は、王宮で働く人達のようで殆ど顔パスで通過している。
そして、三個目のチェックポイントを通過して間もなく、王宮の正面に着いた。白亜の宮。正面には大きな噴水が設置された巨大なロータリーで、石畳はアーティスティックな文様を象っている。
前衛的なデザインなのか、俺には何を表しているのかよくわからない。福音書の一説を表現しているのかもしれない。
そして、降り立って見上げる宮は、高さ二十メートルくらいはある?
遠方から眺めた限りでは、この更に上の区画があるようだ。コンクリートではなく素材は石っぽいのだが、魔法建築なのか、あるいは魔法素材を用いているのか、かなり大掛かりなものだった。
こういう技術を入手すると、高収入の建築技師になれるかもしれないな。是非欲しいスキルだ。いつか俺も家族のために自分の家を持たねばならないのだろうし。王都で技師さんとお知り合いになれないものかしら。
「さあ、お前達。中へ行くぞ」
案内のためにやってきてくれた兵士に挙手をして挨拶をする伯爵。俺達も真似をすると、笑顔で答えてくれる。
「やあ、君たちが本日王に謁見する子達だね。そう緊張する事はないよ。王は気さくなお方だ」
そして、彼は俺達がまったく緊張していない事に気がついた。
「君達は肝が太いねえ」
「ああ、いえ僕らはただの田舎者ですんで、王様と言われましてもまったく実感がございません。それにわたくしはまだ二歳児でございますので」
「え」
そう言って彼は伯爵を見たが、苦笑いで頷く伯爵に彼も目を見開いた。
「伯爵、その子の手を繋いでいてあげてください。ああ、お姉ちゃんでもいいかな」
「大丈夫だよ、兵隊さん。このアンソニーは、そのような柔な玉じゃないからさ。それよりもこいつが一体王様にどんな口を叩くのか、そっちの方が心配かな。うちの弟はとんでもない奴なんだもの」
兵士は更に口をあんぐりと開けたが、俺は彼を急かした。
「いや、それよりも先を急ぎましょう。僕たちが遅れると、伯爵が怒られてしまうから」
「君は大人びているねえ。本当に二歳なのかい?」
全員で頷いてやったので、彼も首を竦めて歩き出した。
映画の音声とは違い、生の音だからな。生演奏のBGMでトーキーの映画を見るかのような迫力だ。その全てが自然体で構成されているのだから、これはもう堪らない。
しばらく俺はその快感に身を委ねた。馬車の窓から乗り出してみていたら、伯爵から声がかかる。
「おい、落ちるから身を乗り出さないように。ここで落ちられたら堪らん」
「はーい」
俺達は前進守備で前が見える位置に移動した。いやあ、堪能堪能。
やがて、馬車は王宮前の門へと着いて停車した。この世界は今平和なのか。ここは城ではない。
塀も何というか、ごつい石壁ではなく木製で装飾性の高い、高さ二メートルくらいの細めの素材で作られたフェンスとでも言った方がいいような、向こう側がよく見えるものだ。その代わり、歩哨が頻繁に行き来している。
門も何者かを阻止するといったものではなく、通行チェックのための『ゲート』といった方がいいようなものだ。
「ブルームン伯爵だ。本日謁見の予定でまかりこした」
「お疲れ様です。このまま、王宮正面に乗りつけて、チェックを受けてください」
「ご苦労さん」
そして、内部の通路、広くなった馬車道を進んでいった。なかなか立派な通路になっており途中で馬車が止まっても、他の馬車が安全に通行できるような広さがあり、また広めの歩道まで完備されている。馬車道なので一方通行ではあるが。馬車は三台くらい通れそうな感じだな。
「へえ、伯爵、ここは立派なものだね」
「それは当たり前だ。我がサンレスカ王国は富裕な国だからな。この通路も各チェックポイントがあって、平民や業者は荷物検査がある。何かあれば封鎖する事も可能だ。そら、そこにもある」
伯爵が挙手をすると、そこに詰めている兵士達も挙手を返してくれる。なるほど、直接門から王宮の入口へ行かずに、ここはぐるっと回って何重かの警備ポイントを回ってから王宮正面の停車場へと向かうのか。
さすがは王宮だけの事はある。うちの村なんか、ロバが二頭いるだけなのだ。時折は彼らも荷馬車を引いてお仕事しているのだ。荷物を括り付けて人を乗せていく方が多いのだが、農作物を収めに行く場合は。町からも回収に来てくれたりはするのだが。
貴族の馬車は止められないようだ。まあ、その分信頼を裏切るようなおかしな真似をすれば打ち首になったりするのだろう。
しばらく、あまり面白くない景色が続くのであるが、俺達は初めてで面白いので、チェックゲートの兵士や商人さんなどに手を振った。歩いている人は、王宮で働く人達のようで殆ど顔パスで通過している。
そして、三個目のチェックポイントを通過して間もなく、王宮の正面に着いた。白亜の宮。正面には大きな噴水が設置された巨大なロータリーで、石畳はアーティスティックな文様を象っている。
前衛的なデザインなのか、俺には何を表しているのかよくわからない。福音書の一説を表現しているのかもしれない。
そして、降り立って見上げる宮は、高さ二十メートルくらいはある?
遠方から眺めた限りでは、この更に上の区画があるようだ。コンクリートではなく素材は石っぽいのだが、魔法建築なのか、あるいは魔法素材を用いているのか、かなり大掛かりなものだった。
こういう技術を入手すると、高収入の建築技師になれるかもしれないな。是非欲しいスキルだ。いつか俺も家族のために自分の家を持たねばならないのだろうし。王都で技師さんとお知り合いになれないものかしら。
「さあ、お前達。中へ行くぞ」
案内のためにやってきてくれた兵士に挙手をして挨拶をする伯爵。俺達も真似をすると、笑顔で答えてくれる。
「やあ、君たちが本日王に謁見する子達だね。そう緊張する事はないよ。王は気さくなお方だ」
そして、彼は俺達がまったく緊張していない事に気がついた。
「君達は肝が太いねえ」
「ああ、いえ僕らはただの田舎者ですんで、王様と言われましてもまったく実感がございません。それにわたくしはまだ二歳児でございますので」
「え」
そう言って彼は伯爵を見たが、苦笑いで頷く伯爵に彼も目を見開いた。
「伯爵、その子の手を繋いでいてあげてください。ああ、お姉ちゃんでもいいかな」
「大丈夫だよ、兵隊さん。このアンソニーは、そのような柔な玉じゃないからさ。それよりもこいつが一体王様にどんな口を叩くのか、そっちの方が心配かな。うちの弟はとんでもない奴なんだもの」
兵士は更に口をあんぐりと開けたが、俺は彼を急かした。
「いや、それよりも先を急ぎましょう。僕たちが遅れると、伯爵が怒られてしまうから」
「君は大人びているねえ。本当に二歳なのかい?」
全員で頷いてやったので、彼も首を竦めて歩き出した。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!
克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。
アルファポリスオンリー
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる