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第一章 孤独の果てに
1-41 魔の山
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ここは大山脈沿いの山間の街道だ。
「このアルブーマ大山脈は魔物の巣窟だ。
それもあって魔の山として恐れられているのだから。
今までは俺が一緒だから襲ってはこなかったのだが、やっぱり虫系魔物はそういう部分でメンタルが違うな。
お前達も充分用心しておくように」
「え、そうだったの⁉」
「知らなかった~」
朝になって魔物が出たから気をつけるよう、朝飯の時に二人に注意したらそのような返事が返って来た。
元々いた従者の奴らは、二人を怖がらせないようにあえて言ってなかったのかね。
あるいは、魔物除けのなんらかの手段を持っていたのかもしれない。
今は比較的俺達の気を抑えているので、奴らも逃げずにいる事が多そうなため偶発的に遭遇しやすい環境であるという環境でもある。
魔物連中もそうそう山から出てはこないはずなのだが、さっきの蜘蛛は街道でも御飯を調達していたようなので、偶然にかちあってしまったのだろう。
「シルバーだって、あの山の子だろう。
俺は元々そうではないと思うのだがな。
とはいえ山の主にはぴったりの雰囲気だとは思うのだが」
そう、他の魔物どもも俺を恐れて住処に近寄らなかったので、子分になってくれる魔物すらいなかったのがまた、俺の寂寥感を更に加速していたのである。
そして訳ありだったルーと出会い、またすぐに子犬のシルバーを拾って、今はついに人間の子供までも拾ってしまったというわけだ。
やはり、なんだかんだいって人間の子が一番手もかかるぜ。
「そうかあ、可愛いフェンリルの御山なんだね」
「お料理の上手な素敵なガルーダもいるよ」
「私はあの山の生まれではないわよ。
旅の途中で困っていたところをジンに助けられて、そのまま落ち着いてしまったのよ。
ジンは元々異世界の人間だったから、いろいろとやる事が面白くて、ついついねえ」
「ああ、とにかく今は万が一の際にはすぐに山へ逃げ込めるように大山脈沿いに南方面へ下りている。
魔物も出やすいだろうから気をつけてな。
魔物だって俺を恐れるものばかりではない。
まあこの俺がその辺の魔物相手にそうそう負ける道理はないが」
そう、魔物相手になら。
『子供達を守る』という勝利条件においては、相手が人間、ことにあの帝国が相手では少々厳しいものがある。
だが負けてしまうわけにはいかない。
「このまま、ずっと山沿いに行くの?」
「そうしたいのはやまやまなのだが、そうもいかないだろう。
いずれは帝国の罠と遭遇するはずだ。
山脈に逃げ込むと、振り出しに戻るとともに先細りする南方面では全方位から追い立てられて袋の鼠だ。
あれも広大な山嶺が広がる北側へと逃げていたから補足が困難だったというだけだ。
それさえも、もしこの雪の季節でなければ逃走は困難だったかもしれんのだし」
とはいうものの、この万年雪だの常に氷壁をまとっているような魔の連峰は、それ以外の季節も人間には厳しい環境ではある。
しかし、あの帝国は金に飽かせた魔導装備で攻め立てて来ていそうだから困ったものだ。
この蒼氷の季節にだって奥地にまで精鋭を送り込んでくるのだからな。
温かい季節であったなら、さらに頭数で押してきていただろうから、もっと厳しい戦いになっていただろう。
「またあいつらが来ちゃうのかなあ」
俺は巨大な頭を前に傾けて、そのアリエスが懸念する意見を肯定した。
「ああ、多分間違いなくな。
俺達は山脈を越えて辺境の街ローエングリムで捕捉された。
そこから目的地と推測されている港への想定されているルートは皆抑えられているはずだ。
きっとこの街道にも敵は待ち受けているだろう。
特に連中としては前線基地を喉元に突き付けられたこの国とは違い、まだあまり支配権の及ばない活動しにくい隣国へ逃げ込まれて上の方から港へ目指すルートへ行かれる事を嫌うだろう。
そっちはまた警戒厳重というわけだ。
まあこの国も帝国の支配権が及んでいるわけではないが、ここは奴らが制したアーデルセン王国と大山脈越しに隣接し、また隣国の目と鼻の先にある完全制圧した港と繋がっているのだから、いつでも軍勢は出せる状態にある。
おそらく、この東の平原側においては一番危険な国だろう」
「私達が行きたいルートがもっとも危険な道なの?」
「おそらくな。
だがこのまま大人しく何かして罠にかかるくらいなら、そっちへ行った方がマシだろう。
要はこちらの現在地を敵に知られたら事態がより悪化するという事だ。
とりあえずは用心しながら、この街道を進む。
できれば、敵の罠を先に察知して気付かれない内にそっと引き返し、そこから裏をかくように迂回するのがベストだと思っているのだが、それすらも難しいだろうな」
「そうだよね。
今までも見つかる度に大変だったもの。
ごめんね、ジン。
あなたは平和に暮らしていたというのに、私達のために」
「はは、俺をお前の騎士にしてくれたのだろう。
お姫様はいちいち、そのような心配はしない事だ。
俺は孤独で何もない精神が荒涼とするような山中の生活よりも、こうしてお前達と一緒に旅をして帝国と戦う方が遥かにましで、これが生きるという意味なのだと思っている。
さあ余計な事を考えるのは俺に任せて、御飯を食べて出発の支度を」
「うん!」
メリーベルは言われずともシルバーと一緒に朝御飯をもりもりと食べている。
お姫様育ちであるにも関わらず、山羊の生肉に夢中な野獣と一緒の朝御飯にすっかり慣れてしまったようだ。
まあドッグフードを食べている犬と一緒にご飯を食べているような物なのだから別にいいのだが。
ああ見えていてもシルバーの奴め、結構焼き肉御飯なんかも大好きなのだ。
「このアルブーマ大山脈は魔物の巣窟だ。
それもあって魔の山として恐れられているのだから。
今までは俺が一緒だから襲ってはこなかったのだが、やっぱり虫系魔物はそういう部分でメンタルが違うな。
お前達も充分用心しておくように」
「え、そうだったの⁉」
「知らなかった~」
朝になって魔物が出たから気をつけるよう、朝飯の時に二人に注意したらそのような返事が返って来た。
元々いた従者の奴らは、二人を怖がらせないようにあえて言ってなかったのかね。
あるいは、魔物除けのなんらかの手段を持っていたのかもしれない。
今は比較的俺達の気を抑えているので、奴らも逃げずにいる事が多そうなため偶発的に遭遇しやすい環境であるという環境でもある。
魔物連中もそうそう山から出てはこないはずなのだが、さっきの蜘蛛は街道でも御飯を調達していたようなので、偶然にかちあってしまったのだろう。
「シルバーだって、あの山の子だろう。
俺は元々そうではないと思うのだがな。
とはいえ山の主にはぴったりの雰囲気だとは思うのだが」
そう、他の魔物どもも俺を恐れて住処に近寄らなかったので、子分になってくれる魔物すらいなかったのがまた、俺の寂寥感を更に加速していたのである。
そして訳ありだったルーと出会い、またすぐに子犬のシルバーを拾って、今はついに人間の子供までも拾ってしまったというわけだ。
やはり、なんだかんだいって人間の子が一番手もかかるぜ。
「そうかあ、可愛いフェンリルの御山なんだね」
「お料理の上手な素敵なガルーダもいるよ」
「私はあの山の生まれではないわよ。
旅の途中で困っていたところをジンに助けられて、そのまま落ち着いてしまったのよ。
ジンは元々異世界の人間だったから、いろいろとやる事が面白くて、ついついねえ」
「ああ、とにかく今は万が一の際にはすぐに山へ逃げ込めるように大山脈沿いに南方面へ下りている。
魔物も出やすいだろうから気をつけてな。
魔物だって俺を恐れるものばかりではない。
まあこの俺がその辺の魔物相手にそうそう負ける道理はないが」
そう、魔物相手になら。
『子供達を守る』という勝利条件においては、相手が人間、ことにあの帝国が相手では少々厳しいものがある。
だが負けてしまうわけにはいかない。
「このまま、ずっと山沿いに行くの?」
「そうしたいのはやまやまなのだが、そうもいかないだろう。
いずれは帝国の罠と遭遇するはずだ。
山脈に逃げ込むと、振り出しに戻るとともに先細りする南方面では全方位から追い立てられて袋の鼠だ。
あれも広大な山嶺が広がる北側へと逃げていたから補足が困難だったというだけだ。
それさえも、もしこの雪の季節でなければ逃走は困難だったかもしれんのだし」
とはいうものの、この万年雪だの常に氷壁をまとっているような魔の連峰は、それ以外の季節も人間には厳しい環境ではある。
しかし、あの帝国は金に飽かせた魔導装備で攻め立てて来ていそうだから困ったものだ。
この蒼氷の季節にだって奥地にまで精鋭を送り込んでくるのだからな。
温かい季節であったなら、さらに頭数で押してきていただろうから、もっと厳しい戦いになっていただろう。
「またあいつらが来ちゃうのかなあ」
俺は巨大な頭を前に傾けて、そのアリエスが懸念する意見を肯定した。
「ああ、多分間違いなくな。
俺達は山脈を越えて辺境の街ローエングリムで捕捉された。
そこから目的地と推測されている港への想定されているルートは皆抑えられているはずだ。
きっとこの街道にも敵は待ち受けているだろう。
特に連中としては前線基地を喉元に突き付けられたこの国とは違い、まだあまり支配権の及ばない活動しにくい隣国へ逃げ込まれて上の方から港へ目指すルートへ行かれる事を嫌うだろう。
そっちはまた警戒厳重というわけだ。
まあこの国も帝国の支配権が及んでいるわけではないが、ここは奴らが制したアーデルセン王国と大山脈越しに隣接し、また隣国の目と鼻の先にある完全制圧した港と繋がっているのだから、いつでも軍勢は出せる状態にある。
おそらく、この東の平原側においては一番危険な国だろう」
「私達が行きたいルートがもっとも危険な道なの?」
「おそらくな。
だがこのまま大人しく何かして罠にかかるくらいなら、そっちへ行った方がマシだろう。
要はこちらの現在地を敵に知られたら事態がより悪化するという事だ。
とりあえずは用心しながら、この街道を進む。
できれば、敵の罠を先に察知して気付かれない内にそっと引き返し、そこから裏をかくように迂回するのがベストだと思っているのだが、それすらも難しいだろうな」
「そうだよね。
今までも見つかる度に大変だったもの。
ごめんね、ジン。
あなたは平和に暮らしていたというのに、私達のために」
「はは、俺をお前の騎士にしてくれたのだろう。
お姫様はいちいち、そのような心配はしない事だ。
俺は孤独で何もない精神が荒涼とするような山中の生活よりも、こうしてお前達と一緒に旅をして帝国と戦う方が遥かにましで、これが生きるという意味なのだと思っている。
さあ余計な事を考えるのは俺に任せて、御飯を食べて出発の支度を」
「うん!」
メリーベルは言われずともシルバーと一緒に朝御飯をもりもりと食べている。
お姫様育ちであるにも関わらず、山羊の生肉に夢中な野獣と一緒の朝御飯にすっかり慣れてしまったようだ。
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