battle class

ピッティ

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プロローグ

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静かな暗い教室。
普段は騒がしいが今は驚くほど音が無く逆に何か鳴るとすぐにわかってしまうほど。
もはや視てどうにかなるのではないので諦めて耳を澄ましてじっと待つ。
ここは待つのが得策であると分かってはいるし、そうしていたはずだがどうしても体が疼き足を進めた。
そして後ろから3つ目の机に差し掛かったとき、
「もらったぁぁぁぁぁッ!」
叫び声と共に俺と同じ年位の少年が机の裏から飛び出してきた。
結局相手の待ち伏せにあってしまったのでやはり迂闊に動くべきではなかったがその時俺はただ、
―――声出したら不意討ちじゃないだろ!!
と全力で心のなかで突っ込んだだけだった。
俺はその声に反射的に体を限界までのけ反らせた。直後、赤く光る剣が俺の前髪を何本か溶かしながら体すれすれを通っていき隣にあった机を真っ二つに切り裂く。
―――あぶねえじゃねえかッ!!
などと思ってる場合ではなく、
「来たぞッ!」
俺は小さく叫んで大きく一歩後ろに飛び退くと腰にさしてある自分のペンを抜き放った。
剣ではなくペンだ。文房具のペンだ。
―――イメージしろ俺、このペンは剣だ。ほらあのブゥゥンってなるやつだ。
そう思いながら俺はノック式のペンをカチッと押した。すると普通ならペン先が出るだけだがこれはブゥゥンと音をたてて細い実態のない剣が現れた。
俺が先程イメージしたのはビ◯ムサーベルやライトセ◯バーなもので、それが一番手っ取り早い。色は考えてなかったのでこのペンのインクがそのまま現れ黒になった。
右手に現れた剣をブゥゥンブゥゥンと振り回してニヤリとする。
何度見てもこの嬉しさは隠せないだろう。ただの子供だった俺が剣をもってるなんて。
俺は少しの間敵のことも忘れてニヤニヤニヤニヤ。
無視されていることに怒ったのかそれとも剣を見ながらニヤニヤニタニタしている俺が相当キモかったのか男の出す空気が変わった。
右手の剣をまるで鞘があるかのように左手と共に腰に付けすっと腰を落として構えた。
―――これは、居合斬りか…
俺の戦法的には居合斬りは抜かれる前に仕掛けるのがいつもだが今回は少し遅れてしまいもう間に合わない。
剣をたてて防ぐかどうか迷う暇もなく相手の手が霞む。 
ーーー防ぐのも間に合わないか
空気ごと斬るその横凪ぎの攻撃を腰を曲げてさらに腹もへこませてなんとか避けた。それでもジジッという音と嫌な臭いと共に相手の剣が俺の服を溶かしていった。
ヒヤリとしながらも剣を振り切った状態の硬直を狙って胸を突くがこれはかわされた。
一瞬の間があってからお互いに突っ込み切り結ぶ。
剣がぶつかり合う度に盛大に火花を降り散らし、辺り一体を明るく照らす。
ブゥゥンブゥゥンと剣を降り回し相手の剣を弾き返すが両手持ちに対するこちらの片手はあまりにも弱く相手の攻撃は止まない。
―――一撃が重い
何度目かの切り結びで遂に俺の剣が大きく後ろに弾かれた。
重い攻撃を受け続けた右手は意思に反してなかなか戻せない。
大きすぎる隙に最大火力の攻撃を叩き込むために敵は振りかぶった。
その顔は勝ちを確信しているようだった。
が、
それはあえてこの隙だらけの攻撃をさせるために作った隙だ。
ーーー勝負はここだろ
そう思いながら俺は空いた左手で腰にあるシャー芯ケースを叩き、とびだした数本空中で掴み投げつける。
感覚的にはシャー芯は針、ピックだ。
「ー!?」
相手は全く反応できずに顔に一本、振りかぶった両手に二本当たった。
ダメージ自体はほとんど無いが攻撃をくらったという事実によって相手の動きが止まる。
―――行ける!!
瞬時に強制的に振りかぶらせられた俺の右手が反転し斬りかかる。
「もらったぁぁぁぁぁ!」
ついさっき叫ぶことを全否定したがそれも忘れて全力で叫んだ。
驚きを全面に出した相手の顔が迫る。
が、その時の俺の顔は先程の相手の顔と同じといっても差し支えないものだっただろう。
―――勝った!!
俺は確信していた。


「イェーイ!!」
「ナイスショット!」
後ろで仲間が気楽にハイタッチを交わしている。
俺一人のけ者だ…

あのとき俺の剣が相手を切り裂くはずだった。
まあ、そう簡単にことは運ばないということで。
さっき「来たぞ!!」と仲間を呼んだのは自分なわけで。
俺の剣が相手を斬る直前に俺の後ろから飛んできた弾丸が相手の頭を撃ち抜いた。ヘッドショットボーナスでまばゆい閃光と共に相手が消滅した。
―――えー今の俺が倒すや…
俺の悲痛な心の声はかるーく流された。
手柄をさらったのは仲間だし(しかも自分で呼んだ)怒ることもできないという行き場のないこの感情を揉み消しながら俺はこの悲しい状況の原因を思い出していた。
―――思い出したくなんて無いけどね。
全てはあの日から始まった。
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