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意思なき呪い

第3話 間宮さんの車

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間宮さんの見た目とは裏腹に、案内されたのはSUVのゴツい車だった

「雪山とか行くから、四駆じゃないと辛いんだよね」

間宮 華さんは28歳で情報企画部という、新しいIT機器を導入をすすめたりWebのプロモーションをする部署の部長をしている

身長は160cmはないだろう、華奢な体型だからかヒールを履いていても少し小柄な印象を受ける

髪は胸まであるセミロング

顔は整っていると思うけど、いつも何故かすっぴんだ

27歳で新設された情報企画部の部長になった人なので優秀なのだろう

ただ僕の会社は昭和感が程よく残る不動産会社で、他の部の部長は若くてもせいぜい40代後半だし男性ばかりだ

そのせいなのか、あまりにも若い女性の抜擢人事には良からぬ噂もついてきた

『60代ほどの男性と間宮さんがホテルから出てきたのを見た』

『パパ活をやっているらしい』

『社長の愛人なんだって、だから部長になれたんだよ』

僕はあまり噂好きではないが、25歳の普通のサラリーマンだ

トラブルになっても面倒だしとなんとなく避けている人の内のひとりだった

(悪い人ではないんだろうな、こうやってわざわざ送ってくれているんだし)

助手席からふと運転している間宮さんの方を見た

(意外と胸あるな…)

仮眠室にいたソイツから解放されて、そんな雑念が湧いてくるほどに僕は余裕ができていた

「君さ、最近寝れてる?」

「えっ…」

「少し顔色悪いなって」

「実はここ2、3日あまり寝れてなくて」

「そう…まだお昼だし時間あるよね?」

「えぇ…まぁ…」

「じゃあ私の家に行こうか」

「えっ」

(あの噂は本当ってことか?)

学生をしていた時はそれなりに彼女がいたり、女の子とデートしていた

ただ大学を卒業して入ったのは外資保険の営業で、朝から晩まで働いて出会いなんかなかった

転職して今の会社に入ったが、やっぱり出会いなんて無くて、なんとなく毎日が過ぎていた

(これは…お楽しみタイムってことだろうか)

僕はただの平社員で間宮さんは部長だ、でも年齢差はたった3歳だし何より僕は年上のお姉さんのほうが好きだ

そんな不純な動機を頭に巡らせていた時だった

ソイツが車のミラーにぶら下がっているのが見えて血の気が引いた

「うわっ!」

思わず声をあげる

それでも間宮さんは何事もなかったように運転していた。

当たり前の事だがこの時はっきりとソイツが人間でも動物でもない”何か”だとはっきりと認識した、

「間宮さん!すみません、やっぱり電車で帰るんでここで降ります」

「別に私は構わないけど…ここで降りたら君、死んじゃうかもしれないよ?」

一度もこちらを見ずに言う間宮さんが少しだけ怖く感じた。
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