【悪役転生 レイズの過去をしる。】

くりょ

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レイズは守る

報告。

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ヴィルは静かに氷のハンマーを見やり、その声音はあくまで優しく――しかし底に深い感情を湛えていた。

「……それで。その大仕事は、上手くいったのですね」

レイズは片眉を上げ、肩をすくめて答えた。

「あぁ。……でも二度と行きたくはねぇな。あんなとこ、遠すぎるんだよ」

ヴィルはくすりと笑う。

「……分かっていて、行かれたのではありませんか?」

「おい、それは意地悪すぎだろ」

レイズが苦笑すると、ヴィルの目元が柔らかく揺れた。

ふとレイズが思い出したように言葉を続ける。

「そういえば……祖母に会ったよ。ダークエルフの“レイ”っていう人に」

その瞬間――
ヴィルの手がぴたりと止まり、表情が固まる。

驚き、安堵、そして少しの痛み。それらが混ざった複雑な光が瞳に宿り、やがて静かに息を吐いて言った。

「……そう、ですか。それは……本当に良かった」

レイズは嬉しそうに頷き、声を張る。

「それとヴィル! 俺にダークエルフの血が入ってるなんて知らなかったぞ!」

ヴィルの目がかすかに揺れた。

「えぇ……いつかお話ししようとは思っていましたが……」

その声音には、長い時間胸に抱えてきた影が落ちていた。

セシルとリヴェル――レイズの両親のこと。
簡単に触れられるほど軽い話ではなかった。

レイズはその空気を感じ取り、深く頷いた。

「……ああ。父さんと母さんのことも聞いた。
 ヴィル、……本当に、ありがとう」

ヴィルは胸を押さえるように目を伏せ、静かに返す。

「……いえ。私が、もっと早く動いていれば……」

「いいって。それ以上は言うな」

レイズの声は優しかった。

少し空気が和らいだところで、レイズは思い出したように言った。

「そうだ。魔族がさ……“なんでアルバードは魔石を使わないんだ”って不思議がってたぞ」

ヴィルは目を閉じ、小さく笑った。

「……なるほど。彼らの言い分も正しいでしょうね」

そして少しだけ厳しい声音で続けた。

「ですが――安易に魔石に頼るべきではない。それが、私たちの立場なのです」

レイズは納得するように息を吐く。

「……まぁ、確かに一理あるな」

そしてミスリルを示しながら声をかける。

「それじゃ、ヴィル。これ見てくれよ。いい感じだろ?」

レイズは死属性の力を使い、氷を溶かし始めた――が。

「レイズ!! 待ちなさい!!」

ヴィルの声が鋭く走った瞬間にはもう遅く、

――バシャァァン!!

大量の水が部屋中にぶちまけられた。

沈黙。

レイズはゆっくりと、びしょ濡れの床を見下ろす。

「……うん。ヴィル。まぁ……こういうこともあるよな」

ヴィルは瞼を伏せ、長い沈黙のあとでゆっくりと目を上げた。

その表情は穏やか――しかし、背後に黒い炎が立ち昇るような圧をまとっていた。

「久しぶりに……レイズ。
 私と“模擬戦”をしましょうか」

「お、おい!? ねぇヴィル!? 怒ってるよな!? 絶対怒ってるよな!?」

「怒っていませんよ。えぇ……ただ――」

ヴィルはゆっくりと微笑む。

それは慈愛を含んだ、しかし絶対に逃げられない“師の笑顔”だった。

「孫が、どれほど強くなったのか。
 ……確かめたくなっただけです」

レイズは顔を引きつらせながらも観念するように答える。

「……わかったよ」

そして散乱したミスリルに視線を移し、

「それで、このミスリルの加工……任せていいか?」

ヴィルはひとつひとつを丁寧に見下ろし、静かに言った。

「はい。必ず整えてみせます」

その直後、すっと顔を上げ――

「……ではレイズ。早く行きましょう」

すでに庭へ向かって歩き出していた。

「おい!! なんでそんな急ぐんだよ!?
 ねぇ!? 怒ってるよね!? 本当に怒ってるよね!? ねぇってば!!!」

レイズの必死の叫びが屋敷にこだまし、
その前を、ゆっくりと――しかし逃げ場を与えない速度で進むヴィルの背中があった。

その姿は、まさに“師”。

穏やかで、優しくて――そして恐ろしいほど強い、アルバードの根幹そのものだった。


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