【悪役転生 レイズの過去をしる。】

くりょ

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レイズは守る

手を取り合う

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ディアブロは静かな声で告げた。

「我だけの話ではない。……ガイル。お前の膨大な魔力も、同じ弱点を抱えている。」

その声音は落ち着いているのに、洞窟の闇に鋭く響き、空気を重く変えていく。

ガイルは舌打ちし、眉をひそめた。

「魔力が使えなくても戦える? ……面白くねぇ冗談だな。魔力を封じられたら、俺は終わりだと思ってたぜ。」

挑発的な言葉とは裏腹に、その声には苛立ちと薄い不安が滲む。

ディアブロは首を傾げ、淡々と続けた。

「だが、お前には魔力がなくとも戦えるだけの肉体と技がある。だからこそ――まだ勝ち筋が残っている。」

ガイルは嘲るような薄笑いを浮かべる。

「勝ち筋? そんな茶番で満足する気はねぇよ。俺が求めてるのは――もっと鮮烈で、もっと理不尽な勝ち方だ。」

そして血の匂いを好む獣のように低く笑った。

「潰す。叩き伏せる。それでいい。」

ディアブロは小さく息を吐いた。

「では問おう。……お前は何を望む?」

ガイルの瞳がぎらりと光る。

「決まってんだろ。王国だ。あそこをぶっ潰してやる。
 ……アルバードも道連れにな。ヴィルやセバスがいる限り、王国は絶対に崩れねぇ。」

その瞬間、ディアブロはわずかに口元を歪めた。

「ならば――我と手を組め。」

洞窟の闇が震えた。

ガイルは一瞬言葉をなくす。

「……は? お前が誰かと組む? 冗談も大概にしろよ。そんな器用な真似、出来るタマか?」

だがディアブロは微笑みを崩さず、さらに低く潜る声で続けた。

「死属性。あれは魔族全体の天敵たり得る。
 魔術を至上とする我らにとって、最も厄介な存在だ。……お前も、それを理解しているはずだ。」

ガイルの表情が初めて強張る。

「……つまり、あのガキは魔族を脅かす存在になるってか?」

ディアブロはゆっくり頷いた。

「敵か味方かはまだ定まらん。だが“あれが増長する未来”は我らにとって脅威となる。だからこそ策を講じねばならん。」

ガイルは顎に手を添え、しばらく考え込んだ。

「……で、案はあるんだろ?」

ディアブロの瞳に、氷より冷たい光が宿る。

「ある。
 我とお前で王国を突く。王が動けば、アルバードも応じる。
 そうすれば王国とアルバードは必ず衝突するだろう。」

そして確信めいた声で続ける。

「その隙を、我らが突く。」

ガイルはゆっくりと笑い、やがて大きく肩を揺らして笑い出した。

「なるほどな……お前らしい、えげつねぇ策だ。
 だが――魔族を巻き込む気なら、話は終わりだ。」

ディアブロは鼻で笑う。

「心配はいらん。我ら二人で足りる。
 魔族に無駄な損害を出す必要はない。」

ガイルは目を細め、闇の奥を射抜くようにディアブロを見つめる。

そして――短く、しかし決定的な言葉を吐いた。

「……いいだろう。
 俺とお前で王国を潰す。それが一番、面白ぇ。」

ティグルの洞窟。
そこで交わされたのは、魔族二柱の“共謀”だった。

暗闇の中、二つの影が静かに息を潜め――
その計画は、世界へと音もなく広がり始めていた。




王国では

薄暗い会議室には、冷ややかな沈黙が降りていた。
重く張り詰めた空気の中で、鋼を擦るような甲冑の微かな音だけが響く。

長机の中央に立つ男――グレサス=グレイオン。
白金の鎧は淡い光を反射し、刻まれた深い皺と鋭い眼光がその威圧を際立たせていた。

「なぜです、グレサス様。
 ――どうしてディアナを“人質”として連れ帰ったのですか」

沈黙を破ったのは第六位、ジェイル・グラトニー。
その声には抑えてはいるが、確かな怒りと困惑が混じっている。

グレサスは短く息を吐き、視線を会議室いっぱいに巡らせる。
ゆるやかに口を開く声は、重い石を積み上げるように静かで確固たるものだった。

「理由は単純だ。――ディアナ“だから”だ。」

ざわり、と騎士たちがわずかに身じろぐ。
その反応を意に介さず、グレサスは続けた。

「彼女の“優しさ”は、思想を容易に変える力を持つ。
 本人が自覚していなくとも、あの純真さは周囲を惹きつけ、組織の方向性を静かに歪める。
 放置すれば……アルバードの理念は曖昧に溶け、甘い幻想へと変貌する可能性がある。」

第三位・リュークが声を挙げる。

「その“原因”が、レイズという青年にあると?」

グレサスは目を閉じ、静かに思い返すように言う。

「レオナルディオの一件を忘れたか。
 彼が破滅へと向かった経緯は、ヴィルでもセバスでもない。
 ――レイズの存在こそが、あの場の空気を動かした。」

静かながらも断言めいた声。

「彼は人を動かす。
 疑念を抱かせず、危険ですら“正しい”と思わせる力がある。
 ヴィルもセバスも逆らえなかった。
 その結果、王国の枢軸さえ揺らぎかけた。」

会議室に再びざわめきが広がる。
だがグレサスは一歩も退かない。

「アルバードが内部から変質すれば、王国全体の均衡が崩れる。
 その“始まり”を作りうるのがディアナだ。
 あの女は民衆を惹きつける。優しさで判断を覆し、何より……レイズを躊躇なく“守る”。」

ジェイルが低く唸る。

「だから彼女を“切り離す”必要があった……ということですか。」

グレサスは無言で頷き、続ける。

「これは排除ではない。
 ――抑止だ。
 示威だ。
 そして、レイズに“選ばせる”ための外科的処置だ。」

言葉は冷たいが、そこに迷いは微塵もなかった。

リュークが眉を寄せ、最後の問いを投げる。

「つまり、彼はただの青年ではなく……
 アルバードの“軸”を変えうる存在だと?」

グレサスは静かに立ち上がる。

「そのとおりだ。
 ゆえに守る必要がある。
 方向を、理念を、そして王国の未来を。」

そして会議室を見渡すと、一言だけ告げた。

「……各自、備えよ。
 守り方ひとつで、この国の命運が決まる。」

騎士たちは誰一人声を発せず、ただ深く頷いた。
冬の風が城壁を叩く音が遠くで響く――しかしその奥で、
すでに新たな戦略が静かに動き始めていた。
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