飛んで火に入る火取蟲

白樫 猫

文字の大きさ
7 / 50
火を恋う青蛾は焔に焼かれ

7話

しおりを挟む
頭の奥がズキズキと脈打っているのが分かる程の痛みで、響は意識を取り戻した。
ゆっくり目を開くと、そこは薄暗くあまり人が踏み入れていないような、古い埃のすえた匂いがした。
何度か瞬きを繰り返すと、ピントが合ってくる。
どうして自分がこんな所にいるのだろうかと、ズキズキする頭で考え、先程、誰かに襲われ意識を失った事を思い出した。
どうやら響は寝かされているようで、身体に力を入れ起き上がろうとして気が付く、両手足が縛られているのだ。

「おっ、気が付いたか?」

頭の上の方から声がして、反射的にそちらを向こうと体を捻るが、縛られている身体が言うことをきかない。

「‥だっ‥誰だ!」

幸い口が塞がれておらず、声の方に向かって言葉を放った。

「クックッ‥威勢だけは良いんだな~それが、いつまで持つか‥クックッ‥」

ねっとりとした声が部屋に響き渡り、薄暗く周りは見えないが、ここが広い場所だと分かる。

「‥俺をどうするつもりだ!」

何とかこの場から逃げ出さなくてはならないと、頭の中で考えるが、名案が浮かぶわけでもなく相手が誰かさえも分からず、成すすべもなかった。

「クックッ‥可愛いねぇ~ほんとに‥いいよ‥」

男はそう言うと、ポケットから携帯を取り出し、鼻歌を歌いながら電話を掛けた。
呼び出し音が鳴ると、すぐに相手が出たようだ。

「あ~もしもし?‥‥どうした?‥そんなに慌てて‥クックッ‥」

可笑しくて堪らないと笑いが漏れる男は、そのまま携帯をスピーカーにする。

『石塚!!お前がやったのは分かっている!‥すぐに響を返せ!」

今まで聞いたことのない程の怒りの獅道の声が、響の耳にも聞こえてきた。

「ん?お前、誰に物言ってんだ?人にお願いする言葉じゃねぇな」

男‥石塚の声も、先程とは打って変わり低く冷ややかだった。

『すぐに居場所は分かる。響に何かあれば、分かってんだろうな。お前が生きて帰る場所は無いと思え』

こんな怒りの声を聞き、響は胸が熱くなる気持ちと、先程の目にした光景を思い出し、二人の邪魔をしてた自分なんて、放っておけばいいのに‥と苦しく思う気持ち。
その二つの気持ちが入り混じり、どうすれば良いのか自分でも分からなくなりそうだった。
それでも、確実に言えるのは、獅道の声を聞き、心が喜びで震えているという事だ。

「俺の場所~?それはお前が消えれば、必然と出来るぜ‥クックッ‥なぁ、権守。お前の大切なモノ、壊していいか?」

その言葉を吐くや否や、石塚がズカズカと響に歩み寄り、響の腹を蹴り上げた。

「‥‥ぐふっ‥っ‥‥」

石塚の磨き上げられている靴が、響の腹にめり込む。

「ほら、啼いてみろ‥可愛い子ちゃん‥助けを求めろよ‥ほらっ‥」

何度蹴り上げられても、響は奥歯を噛み締め声を出さない。

「‥‥くっ‥‥っ‥」
『やっ‥止めろ!!石塚!やめるんだ!!』

電話口からも、響を蹴り上げる音が聞こえるのか、悲痛な獅道の声が聞こえる。

「あ~あ、強情だな。クックッ‥まぁ、これからがお楽しみだから‥じゃあ、権守、どうするか考えとけよ。1時間後にまた連絡入れるわ。その時には、お前のペットは俺達に突っ込まれてグズグズになってるんだろうがな‥‥クックッ‥」
『まっ‥待て!お前と話がしたい!場所を教えろ』
「クックッ‥残念だな。それも1時間後だ。お前は、俺の連絡があるまで、マンションから一歩も出るなよ。もし出たら、生きているこいつに会えると思うな。1時間‥‥お前は俺にした事を後悔しながら、こいつが犯されている事を想像でもしとけ‥ハッハッハッ‥‥」

電話を切った後も、石塚はしばらく笑っていた。
自分をコケにした獅道が、あんなにも簡単に下手に出る事が可笑しかったのだろう。

「じゃあ、可愛い子ちゃんは、そろそろ俺達を楽しませてくれなくっちゃな‥」

石塚はそう言うと、響の目の前にしゃがみこみ、睨みつけている響の顎をグイッと持ち上げた。
石塚の細い瞳が欲情を持ちギラッと光り、薄い唇からチラリと舌が覗く。

「ほんと、男にしておくのは勿体ない顔だな、お前は‥っ‥」

目の前にいる石塚の顔に、怒りにまかせ響は唾を吐きかけた。
次の瞬間、ゴンッと耳元で音がしたと思ったら、目の前に稲妻が走り、頭が地面に叩きつけられた。
石塚が思いっきり響を殴りつけたのだ。
横に吹っ飛んだ響の口の中に鉄の味がしてくると、鼻と口からツーと血が垂れる。

「オイッ‥お前、威勢が良いのも大概にしとけよ‥」

石塚は頬に飛んだ響の唾液を手で拭い、ニヤリと笑みを浮かべ響の身体に乗り上げると、白く細い響の首を片手でグッと抑え込んだ。

「‥うぐっ‥‥かぁっ‥‥っ‥‥ぁ‥‥」

縛られている手足をバタつかせても、抵抗できない‥声が出ない‥顔に血液がたまり段々と熱くなる。
酸素を取り込みたい口がパクパクと開き、だらしなく唾液を溢す。

――獅道さん・・。

頭の中で、そう叫び、響は意識を失った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鬼の愛人

のらねことすていぬ
BL
ヤクザの組長の息子である俺は、ずっと護衛かつ教育係だった逆原に恋をしていた。だが男である俺に彼は見向きもしようとしない。しかも彼は近々出世して教育係から外れてしまうらしい。叶わない恋心に苦しくなった俺は、ある日計画を企てて……。ヤクザ若頭×跡取り

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

久しぶりの発情期に大好きな番と一緒にいるΩ

いち
BL
Ωの丞(たすく)は、自分の番であるαの かじとのことが大好き。 いつものように晩御飯を作りながら、かじとを待っていたある日、丞にヒートの症状が…周期をかじとに把握されているため、万全の用意をされるが恥ずかしさから否定的にな。しかし丞の症状は止まらなくなってしまう。Ωがよしよしされる短編です。 ※pixivにも同様の作品を掲載しています

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

敵国の将軍×見捨てられた王子

モカ
BL
敵国の将軍×見捨てられた王子

処理中です...