転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~

土偶の友

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9章 ウィザリア

183話 禁書庫

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「どうしよう!? ヴァイス!? あのドクロやっつけれる!?」
「ウ、ウビャ!? ウビャ……ウビャビャ??」

 ヴァイスはえ? まじ!? やってみるけど……???
 という感じの表情をしている気がする。

 でも、ヴァイスのステータスもそこまで高くない。
 なら、戦闘に持ち込むよりも、ウィンを待つ方がいいか。

「〈結界の創生〉」

 なら、ウィンが来るまで待つ!
 結界を張っておけば大丈夫なはず。

 しかし、扉の向こうからドクロがこちらに来ることはない。

「あれ……どうなってるんだろう」
「ウビャ……?」

 ヒュン。

 次の瞬間、後ろの方で転移してきた音がする。

 わたしが振り返ると、そこにはカストリオ君がいた。

「あ、カストリオ君」
「待たせたか?」
「ううん。でも、その扉の向こうに敵がいるかも」
「敵!? スパイか!?」

 彼は30センチメートルくらいの杖を取り出して構える。

「ううん。ドクロの何かみたい」
「ドクロの……なるほど、俺様が先に行く。お前は……何だそれは? もしかして……結界魔法か?」
「………………」

 すぅ……はぁ……。

 わたしは何度か深呼吸をして、息を整える。
 やってしまった。
 命の危機かもしれなかったから魔法を使うのはいい。
 だけれど、それをカストリオ君に見られてしまうとは……。
 まぁ、見られてしまったものは仕方ない。

「そうだよ。結界魔法だよ。ウィンが来るまでここで待っていようと思って」
「そうか、なら俺様が見てくる。お前達はそこで待っていろ」

 彼がそう言って進もうとした時には、後ろで再び転移魔法の音がした。

 わたしは再び振り返ると、そこにはウィンがいた。

「ウィン!」
「サクヤ。先に行ってしまうのは感心しないぞ。何かあったらどうするんだ」
「ごめんね。ウィン……でも、とりあえずは無事だよ。この先にドクロの何かがいて、敵かもしれないけど」
「なるほど、アンデットはさっさと滅ぼしてしまわねばな」
「うん。動きを止めてくれたらわたしでもできるかな」

 アンデットには浄化魔法というのは鉄板だろう。
 
 それから続けて転移魔法の音がして、ルビーとリオンさんも合流した。
 2人にもウィンにした説明をする。

 全員そろったのを確認して、ウィンが口を開く。

「よし、では早速行くぞ」
「うん!」

 リオンさんが扉を開けてバッと下がる。
 そして、ウィンが警戒しながら扉の奥を見つめると、そこにはドクロが丁寧に腰を曲げて待っていた。

「ようこそ、禁書庫へ。何かご不明な点がありましたら、なんなりとお尋ねください」

 ドクロは腰を曲げ、頭を下げたままそう言った。

「サクヤ。敵……と言ったな?」
「……うん」
「本当に滅ぼしていいのか?」
「ダメな気がする」

 見るからに敵じゃないんだけど。
 でも、それじゃああのドクロはなんなのだろうか。

 そう思ったのはわたしだけではなかったらしい。

「俺様はカストリオ。お前はなぜここにいる? というか、どう見ても敵みたいな見た目だろう。今まで問題はなかったのか?」

 カストリオ君がそう聞いてくれた。

 ドクロは顔を上げて、ゆっくりと話し始める。

「わたくしはドロッセオ。この禁書庫の司書をしております。今までこちらに来られた方の半数はわたくしに攻撃魔法を放ちましたね。見た目を何とかしたいんですが、なんともならないので問題ではあります」
「……そうか。悪いことを聞いた」
「いえいえ、もう慣れましたから」
「それもそれで辛かろう……」

 カストリオ君もちょっと目をそらして難しい顔をしていた。

 わたしも同じような顔になるが、ウィンは話を進めようとする。

「それで、ここに来た目的はなんだ?」
「あ、そう……だ。ここにいるスパイに会いたい」
「スパイ……ですか? 申し訳ありません。スパイという方はいらっしゃらないと思いますが」
「そうではない。この禁書庫で本を読み、情報を持っていこうとしている者がいるだろう!」
「こちらですることと言えば本を読み、知識を持ち出すことは皆さまされていらっしゃいます。その方々全員をスパイとするのは強引かと思われます」
「クソ……」

 というか、ここまで来たのであれば、彼に聞いておいた方がいいだろう。

「カストリオ君。どうやって、スパイの人がこの禁書庫で情報を集めているって知ったの?」
「お爺様から言われたのだ。詳しいことは言えないが、そういう奴がいる。自分は忙しく、さらに監視もされている。だから動けないと。それで俺様がやらなければならないと思ったのだ」
「そうなんだ。それじゃあ、ここを利用している……お爺様って学園長だよね? 禁書庫の入り方も教えてもらえなかったの?」
「それは自分で見つけろと言われたんだ。理由も言えないと」

 どういうことだろう。
 スパイがいるのに自分で止めようともせず、孫に任せる。
 かといって、禁書庫の入り方を教えることもしない。

 ん~? 本当にどうしてなのだろうか。

「そっか……それじゃあ……」
「お前は!」
「!?」

 わたしが何か言う前に、カストリオ君が叫ぶ。
 彼の視線の先には、机に向かって本を読んでいる人がいた。

 彼が叫んだからか、本を読んでいた人は顔をあげてわたし達の方を見る。

「おや、君達は……」
「あなたは……」
「やはりお前がスパイだったのか。スピア」

 にこやかな笑顔で本を読んでいたのは、わたし達を案内してくれた生徒会のスピアさんだった。
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