没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友

文字の大きさ
40 / 60
1章

第40話 住んでもいい?

しおりを挟む
「それでは、わたくしたちの家でよろしいですか?」
「かまわない」
「では戻りましょうか」

 ということで家に戻る途中、フィーネさんと出会った。

「あら、フィーネさんいかがなさいました?」
「ちょ、ちょっと夕ご飯どうしようかなって。ちょうどいいから食べに行かない?」
「食べに……ですが、これからわたくしたちの家でララさんが料理を作ってくださることになっているんです」
「そっか……」

 フィーネさんはがっくりとした表情になっている。

 わたくしはララさんに聞く。

「ララさん。フィーネさんが増えても問題ないでしょうか?」
「いい」
「ありがとうございますわ! ということで、フィーネさんも一緒にお食事どうですか?」
「いいの!? ありがとう! ご一緒させていただくわ!」

 わたくしたちは家に戻り、夕飯の準備をする。

 と言っても、基本的に作るのはララさんだ。

「あたしは材料を切ることしかできないわ!」
「わたくしも……黒い塊ができる未来しか見えませんわ」

 わたくしは以前一度調理場を借りたことがあったのだけれど、たった一度でメイドにもう勘弁してくれと言われていた。

 なので準備はララさんにお願いする。

「任せて、むしろ調理は全部任せてほしい」
「ララさんは調理が好きなのですね」
「うん。いっぱい作りたい。ずっと作っていたい」
「ありがとうございます。ではお願いしますわ」
「やる」

 ということで、ララさんは以前作った外にある簡易キッチンへと向かう。
 マーレも何も言わずについていく。

「それじゃああたしは……テーブルクロスでも作ろうかしら?」
「いいんですの?」
「うん。人に仕事を任せておくのもなんだし。布はいつでも持ってきてるからね」
「ありがとうございますわ」

 ということで、フィーネさんはテーブルの上に紙や布を広げて絵柄をどうするのかを考えている。

「わたくしはどうしましょうか?」
「やることないんならテーブルクロスの絵柄の相談にのってよ」
「いいんですか? わたくしデザインについてはあまり詳しくはないですわよ?」
「クレアが使うこのテーブルのために作るんだもの。あんたの意見があった方がいいでしょう?」
「そう言われるとそうですわね」
「さ、やろ」

 ということで、わたくしたちはテーブルクロス作りに入るが、流石に完成しなかった。
 なんせテーブルのサイズは5ⅿは大きなものなのだ、この数時間ではできない。

「調理終わった」
「早く食べよー」
「あら、もうそんな時間なのですね」
「うーん。流石にこの規模は無理だったわ」
「しまってご飯にしましょうか」
「うん」

 ということで、途中まで進んでいた物を全てフィーネさんのマジックバッグにしまい、料理を並べるのを手伝っていく。

 テーブルの上にはララさんが作ってくれた料理がこれでもかと並んでいて、目の前に座るフィーネさんの姿が見えない。

「これは……すごいですわね」
「この量は……食べきれるのか? いくらマーレでも厳しくないか?」
「ティエラも食べれば余裕ですわ」
「俺はこんなにいらんぞ……」

 と、隣のティエラが言う。

 席順としては、わたくし、ティエラ、ララさんの順で、反対側にはフィーネさん、マーレという並びだ。

「大丈夫! 僕が全部食べるから!」
「マーレ、太ったらダイエットですわよ?」
「大丈夫!」

 ということで、わたくしたちは食事を始める。

「まずは……これですわね」

 目の前には鳥の唐揚げがあるので、それを何個かとって食べ始める。

 サクッ! とカラッと揚がった衣に、歯を入れると溢れ出る肉汁が口の中に広がる。

「あつ! あっついですわ!」

 でも、そのアツさにはうま味が凝縮されていてこれだけで飲みたくなるくらいだ。
 肉もプリッと歯ごたえがあり、肉自体の味も素晴らしい。

「とっても美味しいですわ!」
「ありがとう」
「ララさんはとっても素敵な料理人さんになりますわ!」
「……そうなりたい」

 小さな声だけれど、喜びの感情を感じた。

「これがゲキウマレアバードですか?」
「そう。その肉自体が美味しいから、軽い下味だけで十分美味しい」
「なるほど、ではティエラもどうぞ。わたくしだけで食べるのはもったいないですわ」
「それは必要ない」
「ララさん? どういうことですの?」

 珍しい鳥と聞いていたので、皆で分けようと思っていたんだけれど……。

「1人1羽ぶんある」
「そんなに捕ってきたんですの!?」
「マーレが捕ってくれた」

 なんと……。
 流石マーレ、食のことになると止められない。

 今も反対側でガツガツ食べている気配もしていた。

「マーレ、ありがとうございますわ」
「気にしないで! 必要になったら言ってね! いっぱい取りにいくから!」
「ええ、そうしてください」

 そんなことを話していると、フィーネさんが会話に入ってくる。

「それにしてもすごいわね。ララさんの腕がいいのは当然としても、どれも希少な素材だったり、美味しい魔物ばっかりね」
「マーレのお陰ですわ。それをゆったりした感じで食べるのもいいですわね」
「そうね。今まではずっと服の勉強だからこういうのはいいわ」
「わたくしもフィーネさんと一緒に食事ができて最高ですわ」
「そこまで言うなら毎日ここで食べるわよ? っていうか来てもいい?」
「もちろんですわ!」

 フィーネさんと一緒に食べるご飯はとても美味しい。
 顔が見えないのはちょっと寂しいけど、食べていれば見えるようになるだろう。

「でも、フィーネさんは毎日来られるのは大変ではないですか?」
「別にちょっと歩くだけだから問題ないわよ」
「これからとても楽しみですわ」

 そう言ってご飯を食べようとしたけれど、ララさんから視線を感じてそちらの方に目を向ける。

 ララさんはじっとわたくしを見ていた。

「ララさん? どうかしましたの?」
「わたしは住みたい」
「? どこにですの?」
「この家。わたしも住んでいい?」
「「!!??」」

 わたくしと、反対側でフィーネさんが驚いていた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

『しろくま通りのピノ屋さん 〜転生モブは今日もお菓子を焼く〜』

miigumi
ファンタジー
前世では病弱で、病室の窓から空を見上げることしかできなかった私。 そんな私が転生したのは、魔法と剣があるファンタジーの世界。 ……とはいえ、勇者でも聖女でもなく、物語に出てこない“モブキャラ”でした。 貴族の家に生まれるも馴染めず、破門されて放り出された私は、街の片隅―― 「しろくま通り」で、小さなお菓子屋さんを開くことにしました。 相棒は、拾ったまんまるのペンギンの魔物“ピノ”。 季節の果物を使って、前世の記憶を頼りに焼いたお菓子は、 気づけばちょっぴり評判に。 できれば平和に暮らしたいのに、 なぜか最近よく現れるやさしげな騎士さん―― ……って、もしかして勇者パーティーの人なんじゃ?! 静かに暮らしたい元病弱転生モブと、 彼女の焼き菓子に癒される人々の、ちょっと甘くて、ほんのり騒がしい日々の物語。

公爵閣下のご息女は、華麗に変身する

下菊みこと
ファンタジー
公爵家に突然引き取られた少女が幸せになるだけ。ただのほのぼの。 ニノンは孤児院の前に捨てられていた孤児。服にニノンと刺繍が施されていたので、ニノンと呼ばれ育てられる。そんな彼女の前に突然父が現れて…。 小説家になろう様でも投稿しています。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」 学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。 家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。 しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。 これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。 「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」 王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。 どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。 こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。 一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。 なろう・カクヨムにも投稿

処理中です...