幻想神統記ロータジア(パラレルストーリーズ)

静風

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黄金戦争の章

第一次黄金戦争・プリンス現る

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黄金という魅惑の輝き、それを巡って人は戦う。
朽ちることのない金属、黄金。その永遠の輝きを崇拝する国がアルトドール帝国である。
その帝国がその経済力を存分に使い、伝説と言われた傭兵を動かした。

アルトドール3世
「何?精鋭部隊と指揮権を渡せだと・・・?」
スサノオ
「安心しろ、金をもらえるなら裏切りはしない。それは俺のこれまでの実績が証明している。俺が一度でも裏切ったという噂を聞いたことがあるか?戦商売にも信用が必要でな」
「それと、兵数は精鋭5000で十分だ。それを全て騎馬兵とし、本体として、このスサノオが率いる」
アルトドール3世
「よかろう、では契約書を作り、後に渡すとしよう」

契約書は指揮権の有効期限が記載れているものであり、万が一の背信行為を防止するためのものである。

アルトドール3世
「その代わりロータジアの北西部を我が国の支配圏に置きたい」
「しかし、ロータジア国の兵力は我が軍より多いが可能か?」
スサノオ
「無論、可能だ。戦争は数が多ければ勝てるというものではない。そして、我に倒せない敵はいない」

百戦錬磨の傭兵家・スサノオ。原名、炎司。現在は炎風斎と名乗る。その何十年にも及ぶ凄まじい戦いぶりは語り継がれ、伝説となっている。これまでの人生の殆どが戦いであった。そして、この戦争のレジェンドが動き出す。



ロータジア王都までは、3つの防御ラインとして3つの砦がある。
一つ目の砦は急襲することで、準備をさせずにあっさりと陥落した。
通常、戦争には宣戦布告をするのだが、乱世となり、その慣習は形骸化していた。

アルトドール国参謀ムング
「流石はスサノオ殿。あっさりと一つ目の砦を落とされましたな」
スサノオ
「急襲したから当然のことだ」

スサノオに一時的な指揮権を渡しているため、目付役・参謀としてムングがついている。

ナムチ
「しかし、次は相手も準備を整えてきます。これをまともに戦っては、こちらも損害が出ます」
スサノオ
「では、どうする」
ナムチ
「はい、そこで次の砦は落とさずに素通りするのです」



スクナ
「素通りでスクナ?それでは後方から挟み撃ちの危険性がありまスクナ」
ナムチ
「王都を真っ直ぐに狙う動きをこちらがすれば、相手は必ず出てくるはずです。そこを反転して各個撃破するのです。そのような場合の少数精鋭です」
スクナ
「なるほどでスクナ。それで今回は、少数精鋭を申し出たわけでスクナ」
ナムチ
「殿(しんがり)はスクナ殿のプロテクションでお願いしようと思いますが、今回は反転しますので、前後への移動をお願いすることになります」
スサノオ
「いや、その必要はない」
「今回の戦いは前も後ろもない。全てが前陣であり、全方位攻撃の陣形を取る。名付けて八岐大蛇(やまたのおろち)の陣だ」
ナムチ
「全方位陣形・八岐大蛇の陣・・・それ再現できるよう指揮致します」

天才兵法家・ナムチの予想通り、スサノオ軍が王都へと真っ直ぐに進路を取ると、第二砦からロータジア軍が出てくる。それを待ち構えるように反転し、一撃を加える。スサノオ自身の攻撃も凄まじい。2メートルほどの巨体が軍の先頭に立ち、真っ赤に燃えるような馬「赤炎(せきえん)」に跨がり、炎を形取った真紅の鎧に身を包み、100kgはあろうかという八岐の蛇矛を奮い、鬼神の如く戦う。矛は八つに裂けており、突けば数名を突き刺し、水平に薙げば、一振りで数人が一気に薙ぎ倒される。
その凄まじい戦いぶりに味方は奮い立ち、敵は恐れ慄く。スサノオ軍は、全軍、赤色の鎧を身に纏い、疾風の如き騎馬軍団であることから、赤風の軍団と恐れられた。凄まじい反転攻撃を受けたロータジア軍は、戦線が維持できず、城へと引き返すこととなる。そして、最後の砦も同じように突破されていった。
スサノオが先頭に立ち、ロータジア国の王都に迫る。
王都は城壁に囲まれていて、城門は硬く閉じてある。
城壁の上には蓮也の兄・舞也が睨みを利かせている。

舞也
「あれがスサノオか。これまで感じたことのないような凄まじいオーラだ。ああいうバケモノに付き合う必要はない。籠城に徹することだ」



スサノオ軍による攻城戦が仕掛けられた。スサノオ軍の攻撃は熾烈を極めたが、舞也の的確な指揮により、何とか持ち堪えている。

ナムチ
「敵の指揮官はなかなかのものです。あのように手堅く戦われては、こちらの攻撃もなかなか通じません」
スサノオ
「では、どうする」
ナムチ
「我らのクエストはロータジア北西部の制圧です。王都は難しいので、北西部の制圧に切り替えましょう」
スクナ
「そうすると敵の主力に背後を突かれまスクナ」
ナムチ
「その場合、すぐに主力を叩けばよいです。そして、常に敵を野戦にて誘引し各個撃破できる状態に持ち込み、徐々に士気と兵力を削るのです」
スサノオ
「よし、それでいく」
スクナ
「わかりまスクナ」

スサノオ軍の攻撃が止んだ。
スサノオは目標を切り替え、立ち去ろうとした時、ロータジア城に向かって叫ぶ。

スサノオ
「この国には、もっと骨のある奴はいねぇのかぁぁぁぁぁ!!!」

スサノオの雷鳴のような声が辺り一面に鳴り響く。
そして、全軍を移動させようとしたその時。

「ここにいるぞ!!」

遠くの方から力強い声が聞こえてきた。
白銀の鎧に真紅のマントを身につけ、純白のユニコーンに跨っている。
ロータジア国第二王子・蓮也の姿である。



ロータジア城内の兵士たちは、その若きプリンスが放つ神々しいオーラを見て歓喜し、ある者は「始祖王蓮也王の再来」「我らがプリンス」と叫び涙を流した。

ムング
「第二王子・・・!なぜだ・・・。奴は遠方の北部を治めているため、伝令と兵の編成も含めこちらまでには数日かかるはず・・・!!それがなぜ、ここに・・・!?」
スサノオ
「ほぉ、あれが蓮国の第二王子か。しかし、まだ青二才だ。我(われ)が戦(いくさ)というものを教えてやろう」
(しかし、ユニコーンは気位の高い神獣。それを乗りこなすとは、何者か)

蓮也はアルトドール軍侵攻を予測して軍を編成し、既に進軍を開始していた。蓮也は、軍師ゼイソンの進言を採用し、第一砦・第二砦の残存兵を回収・再編し、駆けつけたのであった。

蓮也
(悪い予感はして、その準備もしていたが、事態は思っていたよりも悪いようだな)
(そして、あの大漢から放たれる、とてつもない巨大なオーラ、これがスサノオのオーラか・・・)

スサノオの真紅の軍団はロータジア軍の分散した兵に対して各個撃破をしてきた。それに対し、蓮也率いる白銀の軍団は分散した兵力の集中を計るため、各砦から兵を集結させ、軍を再編した。
その白銀の軍団と真紅の軍団が、今ここに激突する。




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