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列伝
ベガ伝『騎馬民族に対する魔法戦』
しおりを挟むこれは太古、神代と言われた時代の物語である。
ロータジアという王国があり、そこには三人の優秀な将軍「三将星」がいた。
その中の一人、大魔導師エルフリード・ベガはエルフの血を多く受け継いでおり、幼少時から天才的な魔術の使い手であった。
ロータジア王国は隣国のアルトドール帝国と敵対関係にあり、ベガが防衛将軍に就任することで、その侵攻を避けることができた。
次にアルトドールは北部の騎馬遊牧民族国家・フェンリガルドにロータジアを攻めさせ、同時侵攻する。ロータジア北部には小国がいくつかあるが、それらは完全には隣接しておらず、フェンリガルド軍はその空白地を通って侵攻してくる。このフェンリガルドや周辺小国には、アルトドールから資金が流れていた。
舞也
「フェンリガルドの騎馬軍団は手のつけようのない強さだ。ここには我が軍は、それなりの兵数を割いて当たらねばなるまい。そして、アルトドールも同時に相手しなければいけない。皆の意見を聞きたい」
元帥の舞也がそのように言うと、病を押して出席しているナディが口を開く。
ナディ
「今回の戦いは我が軍の兵力を二分せねばなるますまい。とすると、まともにぶつかってはなりませぬ。どちらも籠城し堅実に戦えば負けますまい。北部は冬になれば雪に閉ざされますので、そうなれば敵は自ずと自国へ退却するでしょう」
舞也
「それもよいのだが、気になるのは北部の周辺国の動向だ。一応、今は中立を保っているが、これが万が一相手側につくとマズいことになる。一応、不可侵条約は個々に結んでいるため、大丈夫だとは思いたい」
この舞也の不安は別の形で現実化するのであるが、それはまた別のところで語るとしよう。
諸将もほぼナディの意見で一致していたが、ベガは違った。
ベガ
「確かに元帥閣下の憂慮されることは無視できませぬ。ここは北部でフェンリガルドを完膚なきまでに叩きのめしましょう。そうすることで、北部への牽制にもなることでしょう」
舞也
「それではベガ魔導将軍、貴殿はあのフェンリガルドを打ち破ることができると言うのだな?」
ベガ
「打ち破ることができるかどうかはやってみないとわかりませんが、二千の兵力があれば撤退させることは可能だと考えております」
舞也
「二千だと?相手は恐らく1万は動員してくる。しかも最強の騎兵軍団だ。それをたった二千で可能と言うのか」
ベガ
「我が国北部は山岳地帯故、その地の利を存分に発揮すれば可能です」
舞也
「わかった、北部の防衛将軍はベガ魔導将軍を任命する」
ベガ
「ははっ!」
舞也
「それと、アルトドール軍は今回、いがみ合っていた四大王子のアマイモン、オリエンス、パイモン、アリトンが打倒ロータジアのスローガンを掲げ侵攻してくる。これには私自らが防衛将軍となって当たる。前陣をアルベルト将軍、第二陣をデネブ将軍、第三陣をアルタイル将軍、第四陣をバルゴー支援将軍、後詰は私・舞也とする」
ベガの編成は軽歩兵・軽弓兵・軽魔導兵の三種類であった。
そして、北部パドマリアへ向かう前に、副将のマルマに指示を出した。
ベガ
「一つ、用意していただきたいものがあります。冬用の軍靴(ぐんか)を用意していただきたいのです」
マルマ
「あ、はあ。しかし、冬まで戦うつもりですか?先ほどは完膚なきまでに叩きのめすと将軍は言ってましたぞ」
ベガ
「はい、もちろん、叩き潰します」
マルマはベガの魔法戦を一度見ているため、ベガの言うことを信用し、冬用の軍靴を北部防衛軍全員に装備させた。
準備が整うとベガはすぐに全軍をパドマリア地方に向けた。
パドマリアは山岳地であり、その小高いところにパドマリア城がある。
ベガはまず、パドマリア城に入城し、そこの展望台から地形を把握する。
程なく、城を出てフェンリガルドが侵攻してくると思われる方向の小高い丘に布陣する。
地形的にはよいが、地形だけではとてもフェンリガルドを防ぐことは不可能である。
やがて、フェンリガルド軍が山の斜面をものともせず騎馬で駆け上がり怒涛の如く押し寄せる。
ベガ軍の魔法部隊は既に風魔法を充填完了している。
ベガ
「放て!」
ベガの掛け声とともに強い風が吹き荒れ、フェンリガルド軍を襲う。先ほどまでの騎馬の勢いが牛歩のようになる。
ベガ
(よし、これで時間を稼げそうだ)
ベガは地面に魔法陣を描き出し、スペルを唱える。
ベガ
「オーム スコール スヴァーハー!」
天は雲が多い、辺り一面暗くなり、やがて強い雨が降り出した。
マルマ
「こ、これは・・・!」
(地面がぬかるんでいく。そうなると斜面は滑り騎馬は移動しにくくなるが、どうであろうか・・・)
ベガ
「魔法部隊、冷属性魔法充填!」
魔法充填には時間がかかる。そのため、風雨によるタイムラグをベガは発生させているのである。
ベガ
「よし、もう十分であろう!」
「地面に向かい氷結波を放て!」
地面に向かって魔法部隊が一斉に冷気を放つと地面が氷結する。
氷結によって騎馬は前に進めなくなり、落馬する者もいる。
マルマ
(地面が氷結することで更に滑りやすくなり、騎馬を無効化することができる・・・。そして冬用の軍靴はこのためになのか・・・!)
ベガ
「弓隊準備!」
「魔法部隊、エンチャント・サンダー」
「放て!」
騎馬が氷結した地面で混乱している間に雷属性エンチャントの矢の雨が降ってくる。フェンリガルド軍は感電し、馬は驚き暴れ出すので使い物にならなくなる。そして、騎馬隊は益々混乱する。
ベガ
「今だ!」
「軽歩兵部隊、突撃せよ!」
その混乱の中、冬用軍靴を履いた軽歩兵が敵を討ち取っていく。
フェンリガルド軍は、このような魔法戦をはじめて経験した。
このような戦い方を見せられては、何度やっても同じであり、もう一度突撃しようとは思わないであろう。そのため、ベガ軍を前に何もできずに撤退を開始するのであった。
一方、ロータジア軍は川を挟んでアルトドール軍と戦っていたが、元帥舞也の指揮の下、アルベルト、デネブ、アルタイル、バルゴーなどの諸将が活躍し、アルトドール軍の波状攻撃を幾度となく跳ね返した。
やがて、ベガ軍勝利の報を聞いて、アルトドール軍は撤退していくのであった。
天才魔道士ベガは魔法戦に革命を起こした。二度までもアルトドール軍の侵攻作戦を潰したベガという存在をアルトドール帝国は、この戦いで認識するのであった。ロータジア軍も、彼の戦いぶりを見て多くの者は評価したが、古い考えを持つものも一部おり、ベガのことを快く思わない者もいた。それによって、ベガはやがて数奇な運命を辿ることとなるのである。
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