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教育の章
魔法貨幣ロータスのマイニング
しおりを挟む孤児院から城に入って、孤児から王子になった蓮也は5歳の頃から魔法剣士・ゼイソンの英才教育を受けることとなった。
ゼイソン
「今日はお金の講義をしますじゃ」
蓮也
「爺、俺は金持ちになりたいぞ」
ゼイソン
「それならよーく爺の講義を聴いてくだされ」
蓮也
「よし、今日はちゃんと聞くぞ」
ゼイソン
「若も見たことあるかもしれまえせぬが、これがお金ですじゃ」
ゼイソンは懐からコインを取り出すと、そのコインには蓮のマークが描いてある。
ゼイソン
「これが魔法貨幣・ロータスです」
蓮也
「おう、見たことあるぞ」
ゼイソン
「このコインの金属は、どこでも採掘できるものです」
蓮也
「じゃあ、なんで価値があるんだ?」
ゼイソン
「このコインには魔法が錬金術によって半永久エンチャントされているのです」
「これを魔法コインの“マイニング”と言います」
「マイニング」とは「採掘」という意味である。採掘した金属に、更に採掘すると言うのは変な気がするが、この世界では、このように言っている。
蓮也
「マイニング?なんだそれ?」
ゼイソン
「では、見ていてくだされ」
「オーム シューニャ スヴァーハー」
ゼイソンが呪文を唱えるとコインが七色に光り輝いた。
そして、コインがゼイソンの掌からゆっくりと浮き上がる。
蓮也
「すげー、光って浮いたぞ!」
ゼイソン
「このコインには空魔法の錬金がなされておりまする」
蓮也
「だから浮くのか」
ゼイソン
「はい」
「この浮力によって価値が決まってきまする」
「1mg持ち上げることができれば1ロータスという具合です」
蓮也
「ふむふむ、たくさん浮くやつが高いってことだな」
ゼイソン
「まあ、そういうことですじゃ。実際に価値を量る場合は専用の重りや計測器を使います。そして、計測後に神聖法の光文字によって数値を書き記しまする」
「オーム ライト スヴァーハー」
ゼイソンが呪文を唱えると光魔法文字で「100」と表示される。
ゼイソン
「“100”と表示されますので、この貨幣は100ロータスとなりますじゃ」
蓮也
「なるほど、そうすればいちいち重さを量らなくてもいいもんな」
この物語の世界では、魔法という概念が存在し、その魔法が価値を生み出す、という世界観なのである。
蓮也
「それなら、俺も魔法を習得して金をつくりまくって金持ちになってやるぞ」
ゼイソン
「それがなかなか魔法貨幣のマインニングは大変なのですじゃ」
蓮也
「そうなのか」
ゼイソン
「まず、空魔法を使うには地水火風の四つの魔法を統合しなければなりません」
「そして、価値の高いマイニングをするためには、レベルの高い空魔法を使いこなさなくてはなりませぬ」
蓮也
「ふむ、それなら、まず、その地水火風を全部覚えてやるぜ」
ゼイソン
「それだけではないのです。この金属に魔法を永久的に付与するには、ノームやドワーフたちが鋳造した貨幣でないとダメなのです」
蓮也
「なんか面倒だな」
ゼイソン
「はい、簡単に作れてしまっては貨幣に価値は付与されませぬ」
蓮也
「まあ、そうなんだけどな」
ゼイソン
「まず地の種族・ノームが掘り出した鉱石で、その鉱石を精製し、貨幣の原料である鉄をまずつくります。その時に、彼らの純粋な地エネルギーが付与されます」
「鋳造された原料鉄はまだ熱を持っていますので、それを水の種族・エルフが用意した聖水で冷やしまする。そうすることで、純粋な水エネルギーが付与されまする」
「これを更に火の種族・ドワーフが聖なる火で原料鉄を真っ赤になるまで熱し、貨幣をハンマーで叩き、鋼鉄にまで鍛え上げます。そうすることで純粋な火エネルギーが付与されまする」
「そして、金属が熱を持っているうちに風の種族・シルフの風によってカッティングし、そこにロータスの刻印を刻み、そして熱を風で冷まします。これで純粋な風エネルギーが付与されまする」
だんだん蓮也はつまらなさそうな顔をし始めているが、それに構わずゼイソンは話つづける。
ゼイソン
「このような特別な魔法金属がウエハーとなり、ここに空魔法が使えるレベルの高いウィザードによって空魔法がエンチャントされることでマイニングが完成するのです」
蓮也
「・・・すげー面倒だ」
ゼイソン
「何度も言いますように、だからこそ貨幣に価値がでるのですじゃ。その作り手の技量やエネルギー量によって貨幣の出来栄えは違いまする。その出来栄えを計測し、最後は神聖法の光文字で、その価値を書き記しまする」
蓮也
「けど、この前、爺の話では、その四つの種族は混血して殆どいないって言ってなかったっけ?」
ゼイソン
「封印の大陸・レムリアには、それらの種族が保存されてまだそれなりにいるとのことですじゃ。ですから、我々はそのレムリア大陸から魔法貨幣・ロータスを輸入しておりまする」
蓮也
「じゃあ、レムリアが一番金持ちってことなのか」
ゼイソン
「レムリアは古代魔法の封印の地でもあり、修行者の大陸とも聞きまする。彼らの生活は卑しくはないですが質素であり、貨幣を鋳造するものは、そうした執着なき者である、という管理がなされているようでございまする」
蓮也
「金(かね)を作れるのに質素とか、変わり者の集まりってことか」
ゼイソン
「修行がある程度の境地に達しますと、そうした執着なき悟りの心境になるのです。若は、修行がまだまだですので、サボらずに修行してくだされ。そして、将来、立派な君子になってくだされ」
蓮也
(修行すると変なやつになりそうだなw“君子”とか“サトリ”ってのは変なやつになるってことなんだろうなw)
卑金属から金を作り出すことを錬金術と言う。錬金術の起源は古代エジプトやギリシャに求められるが、人類はこれまで金を作り出そうとしてきた。このムーガイアの世界では、魔法が価値あるものとされている。そのために、錬金術は魔法によって行われるのである。それはゼイソンが言うように、封印の地・レムリアで行われるのであるが、優秀な魔法使いは、その魔力で国家を支えようとするか、レムリアへ行くかという進路があった。そうしたことから腕力のないものは魔法学院への入学を希望する者も多かった。
この物語は、この魔法貨幣をめぐり、様々なことが展開していくのであるが、それはまた別の話でもある。
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