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元禄編
3.心を解き放つ
しおりを挟む未来からやってきた緑の瞳の少女・ヘティスは、太古の世界へとタイムスリップし、亡国の王子・蓮也と出会う。二人は、ある目的で江戸時代へと再びタイムスリップし、小田切一雲と金子夢幻に出会う。蓮也配下の神速将軍・キュリアス・モローは金子夢幻と戦うも、破れてしまう。そこで、モローは金子夢幻に教えを乞うのであった。
夢幻
「あなたは確かに超人的な力をお持ちだ。しかし、それを使う場合、意識の集中を必要としている。そこに隙ができるのだ。その集中を強めれば強める程、隙は大きくなり、負ける原因を作り出す」
モロー
「なるほど・・・と言うことは、この力を捨てろと言うのか」
夢幻
「そうではなく、工夫が必要だと言っているのです」
「もしくは、心境が一つ上がらないといけません」
モロー
「心境だと?」
夢幻
「そうです。当流では、これを“放心”としています」
モロー
「放心・・・」
夢幻
「あなたは、その素早い能力を発揮させるために極度の集中状態を作ってしまいます。これは人為です。そうではなく、発する技は無為自然でなくてはいけません」
「そのために、心を一つのところに固定するのではなく、心を解き放つのです」
モロー
「心を解き放つ・・・」
夢幻
「放心すれば、その心は自然にあなたに帰ってくる、そしてあなたに必要なだけの力を授けることでしょう。これが心の理法、“法心”なのです」
モロー
「そういうものなのか」
夢幻
「まあ、私たちも、最初は丹田に集中することを学びますが、そうしたものは、どうしても作ったものになってしまいます。ですから、ある段階になると、そうしたものは自然な働きを妨げるので、捨てていくのです。」
モロー
(我々はチャクラへの心的エネルギー集中を行うが、これをせずに、自然に働かせるということなのか。しかし、そうするには、どうすれば・・・)
夢幻
「今、あなたは、どうやったら、その力が発揮できるか考えたでしょう。それも止めることです」
モロー
「アンタ、すげーや。まるで人の心も読めてしまっているみたいだな」
夢幻
「いやぁ、私もそういう時期があっただけなので、たまたま、それがわかるだけです」
「・・・ん?」
穏やかだった金子夢幻の表情が険しくなる。一雲も、それに気づき、同様な表情へと変化する。
ヘティス
「蓮也!」
蓮也
「待たせたな」
ポコーからのテレパシーをライトが受け、その位置へと高速移動をしてきた蓮也であるが、息一つ乱れていない。
そして、一雲と夢幻を前に、凄まじいオーラを放っている。
一雲
「何と言う神気じゃ」
夢幻
「只者ではないようですね」
蓮也
「俺も試合がしたい」
一雲
「金子さん、どうじゃい?」
夢幻
「老師、何だか楽しんでおられます?」
一雲
「年甲斐もなく、今日はワクワクしてもーて」
「先師・針ヶ谷夕雲に試合を挑んだ時を思い出しておるじゃ」
夢幻
「“相抜け”をされた時ですね」
ヘティス
「あいぬけ?」
「ちょっとスマートグラスで調べてみるわ」
互いが同時に互いを打つことを相打ちと言う。「相抜け」とは、その逆で、互いが打ち込まずに戦いを収めることを言う。
無住心剣術流同士が相対すと、聖と聖が対すこととなり、このような「相抜け」が成立するという、至高の境地による至高の現象である。
ヘティス
「へぇー、相抜けってスゴいのね!何かもうアニメの世界みたい!けど、こうしたことが昔の日本にあったのね!」
ライト
「お互い、負の理がない状態だと、このような現象が起こるのだろうね」
ヘティス
「あ、ライト兄ちゃんも来てたのね」
ライト
「私はアストラル投射してるから、時間と距離は関係ないのだけど、一応、蓮也様の側についているだけだよ」
ヘティス
「ふむふむ、何か便利ね」
この相抜けであるが、寛文年間に壮年期の小田切一雲が老年の針ヶ谷夕雲と試合をし、互いに打ち込まずに相抜けとなった。夕雲は懐中から念珠を取り出して、一雲に向かい香を焚いて拝したとされる。
ヘティス
「へぇー、あのおじいさん、レジェンドクラスの達人なのねー。そりゃ、レーティングが9000超えるわけね。そして、金子さんも同じくらいのレーティングだし」
「モローさん、元気だして!あの人たちがバケモノクラスなだけだからね」
モロー
「はは・・・、まあ、そうなんだけどな」
ヘティス
「で、蓮也も強いけど、あの人たちに勝てるの?」
モロー
「蓮也様は、俺が知る限り、負けたことはないはずだぜ。蓮也様ならやれるはずだ」
ゆっくりと金子夢幻は蓮也の方へと向かってやってくる。
夢幻
「法心流・金子夢幻と申します。試合の方、お引き受けしましょう」
蓮也
「伊耶那岐神伝流・此花蓮也だ」
神の流れを継承する者と、伝説の剣士の戦いが今、始まろうとしている。
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