神々VS人工知能『ミラクル☆HT物語』

静風

文字の大きさ
6 / 51
未来的日常の章

6.ある日の授業

しおりを挟む


奈美先生:
「AIの技術的特異点・シンギュラリティにより、汎用性AIが登場し、ベーシックインカムが到来したのは2045年でしたね。昔はね、こうした年号を覚えたものなのよ。しかし、今はこうしたことを覚える意味がないわね。昔の人のお勉強はとてもつまらなかったの。けど、今のあなた達は本当の勉強ができるのよ。」

2062年、歴史の授業で年号を覚えるということはなくなっていた。理由はいくつかあった。
一つは、AIにディープラーニングさせればよい、二つ目は人間の脳に直接記憶をインストールする「ヒューマンインストール」だ。

AIロボットは生まれた時に国民一人につき一つ配給され、AIはロボットロボット三原則と乳児運動発達などの基本的な機械学習と乳母の機能だけ与えられ、あとの記号系は真っさらな状態で与えられる。そこに教育方針を与えるのは親の作業となる。その作業は、AIにアナログ入力するやり方と、ディープラーニングである。ディープラーニングは、インターネット上にある教育用ファイルや電子書籍をダウンロードし、AIロボットにインストールしていくことで、AIロボットの知能を向上させていくというものである。そのデータの組み合わせは、各家庭の教育方針によって違う。
しかし、その情報に矛盾があると、エラーやバグが発生し、そのエラーをアナログで親がAIを教育する。それでもダメなら専門のエンジニアが解決する。そして、AIホスピタルなるものが世間には容易されている。

AIロボットの操作は小学校で覚えていく。ディープラーニングの正しいやり方を習い、自分の人生をサポートしてくれるよきパートナーとしてAIと共に人間は成長していく。子供の自我が徐々に芽生えていくため、親が入力したAIの情報との対立や矛盾が生じ、それを解消していくAI教育学の基礎が小中学校の科目にある。このエラーを将来は、自分自身で解消していかなければならない。
それに対して、アナログ的な科目もあった。人間学である。簡単に言うと、「人間とは何」かと問うのが人間学であり、それが高校になると「人生学」になる。文字通り、人生とは何かを問う科目である。

奈美先生:
「それでは、あなた達に聞くけど、いいかしら」
「人間にとって幸せとは何からし?」
「答えることができる人はいますか?」

と、こんな感じで抽象的でアナログ的な授業をしている。
人間学・人生学は外部から講師を依頼することがある。地域の老人からバブル期の贅沢三昧からバブル崩壊の転落など、古い時代の教訓の話であったり、地域の企業家による未来の仕事の話であったりと様々である。今回のヘティスの授業では、中年の凛とした美しい女性の講師であった。彼女の専門は人生学である。

奈美先生:
「幸せはお金では買えませんからね」

もちろん、この時代には、お金があれば幸せだと答える生徒はいない。もちろん、お金は何十年も前に経済学者のダニエル・カーネマンが年収800万円以上で幸福度が上がらないことを発表している。そして、この時代の平均年収はベーシックインカムと合わせて1000万円なので、貧困は既に克服されている。しかも、子育てにかかる費用は全て税金で賄われている。養育のための商品やサービスに使える子育て紙幣が発行され、巷には給食の設備や保育所も完備されている。ここに育成AIロボットもあり、女性は子育てから解放され、女性も当たり前のようにビジネスをし、子育てと両立している。それによって、先進国は人口問題を克服しつつある。

生徒A:
「報酬系であるドーパミン神経が賦活化し、セロトニン系が抑制をかけ幸せを感じるように人間はできています」

奈美先生:
「それはAIの答えよ。あなたはヒューマンインストールのしすぎよ。それはAIが答えることで、あなたが答えることではないの。あなたの頭で、そして心の深い部分で考えなさい」
「胸に手を当てて考えてみるの、これがクエストラーニング(探求学習)よ」

生徒たちは初めて聞く言葉に顔を見合わせ、ある生徒はスマートグラスなどで検索をかけるものもいた。

奈美先生:
「検索しても意味ないわよ。クエストラーニングは意味を覚えるものではないの。意味を作り出すものなのよ」
「算数には決まった答えがあるわね。1+1=2、必ず答えがあります。しかし、人生に起こる問題や人間に関することは、答えのないものが多いの」
「それの答えなき答えに回答していき、更に深く探求していくのがクエストラーニングよ」
「それでは、次の質問よ」

生徒たちは、最初の質問の答えを聞かされていない。答えが出ないまま進むという体験は、殆どの生徒が初めてだった。

「あなたとっての幸せは何?」
「これをセルフハピネス(自己幸福感)というの」
「美味しい食べ物やお金・地位・名誉など、外から与えられる幸福ではないのよ」
「あなたの内にある価値観から来る幸福は何かしら?」

とりあえず、ヘティスも目を閉じ、胸に手を当ててみた。そして、自分の深部に向かって問いかけた。

(私にとっての幸せって何?)

脈など、普段感じないものを感じようとすると、前頭前野という部分が賦活化し、脳の情報が統合されやすくなる。

(私は緑が好きだから・・・世界に緑がたくさん増えるといいな!)
(昔はいっぱい緑があった、いつかタイムスリップして緑のたくさんある世界にいく!)
とヘティスは妄想していた。

奈美先生
「そうやって自分の深い部分と自己対話して自分の根底の価値観をつくります」
「これをコアセルフコンセプト(中核自己概念)と言います」

ヘティス
(なんか難しそうな言葉ね。ようするに自分の価値観を持てってことよね)

奈美先生
「このコアセルフコンセプトがライフイノベーションの起点となるのです」
「ライフイノベーションとは、自分の人生をイノベートすることですが、これはまた今度の授業でやります」

ヘティス
(ライフイノベーション?以前、パパから聴いた言葉だわ。確か、自分の人生を変えるって意味だったわね~。私、まだ何がやりたいかわかんな~い)
(わかっているのは、緑が好きってこと!)

ということで、「ライフイノベーション」という言葉が再び気になったヘティスであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

精霊姫の追放

あんど もあ
ファンタジー
栄華を極める国の国王が亡くなり、国王が溺愛していた幼い少女の姿の精霊姫を離宮から追放する事に。だが、その精霊姫の正体は……。 「優しい世界」と「ざまあ」の2バージョン。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

処理中です...