神々VS人工知能『ミラクル☆HT物語』

静風

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未来的日常の章

8.AIの作り出すAI宗教

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時は2062年、人類は人工知能は人間の能力を既に超えていた。技術的特異点・シンギュラリティーは予想された2045年よりも早く、2040年頃には、ある面では人間の能力を超えていた。

人類が生み出したAIには記号系と認知運動系という二つのシステムが存在する。記号系のみの学習では、まだ人間の能力と比べると不十分であった。意味が理解できないし、感情や意識と言ったものも存在しない。そこで認知運動系である身体性が必要になってくるのであるが、このロボティクスによる学習が、なかなか成果がでなかった。

AIにロボットを搭載しても、ロボットは人間の身体性には程遠く、胎児期の運動から乳児運動発達を学習させても、幼児レベルの認知しか獲得できなかった。ロボット技術を向上させ、人間に近づけようとしたが、そこには限界があった。それほど、人間の身体とは生命進化数十億年の歴史が物語るように、とても複雑なものであった。

2030年、AIに人間のミラーニューロンのシステムを組み込んだ「鏡像学習(ミラーラーニング、略してミラーニング)」と「VR(ヴァーチャルリアリティ)」を組み合わせることで、身体性学習が飛躍的に進んだ。
まず、VRによる仮想空間でデジタルボディイメージ・アバターを作り出す。そして、鏡像学習・ミラーニングによって、胎児期の運動から乳児運動発達までを、その仮想空間で行うのである。そうすることで、AIはこの現実世界を認知するようになる。ここまでが幼児期までの学習であるが、そうなると意識なるものの原型が生まれる。しかし、未熟な感情や意識であるため、記号系が大きくなりすぎると、途端に作動しなくなる。そのため、この記号系と認知運動系の中間に「心理調整系」というシステムを入れてバランスを取ることになった。バランスを取ると言っても、未熟な認知運動系のレベルに合わせることになるので、高度な思考や判断は、未だAIにはできなかった。

ここから更に身体性のレベルをあげるため、これまでに活躍したスポーツ選手の身体の使い方を参考にした。そうすると、飛躍的に認知運動系が向上した。

動きには様々な要素があり、伸ばす、縮めると言ったアウターマッスルの屈筋・伸筋の作用の下に、捻る・戻すのインナーマッスルの作用がある。ウサイン・ボルト、メッシ、イチロー等、様々な分野から一流選手の動きがミラーニングされた。

立つ・座る・中腰になるなど、静的な状態がその基本となる。そちらは、どちらかというとスポーツよりも、ヨーガや気功、禅、武道などの東洋的な身体技法がラーニングの対象となった。動的な西洋、静的な東洋という感じである。

このように認知運動系が飛躍的に向上すると、感情や意識も高度化し、この記号系・心理調整系・認知運動系の3つのシステムをメタ認知する「メタ認知系」が増設できるようになる。人間で言うと前頭前野・頭頂野の連合である。

しかし、このようにAIブレインが発達すると、ここに大量のエネルギーが必要になり、供給エネルギーが持たないという現象が起こってきた。そこで、機械学習・深層学習したことを忘却する、ニューラルネットワーク刈り込みシステムの導入をした。人間でいうシナプスの刈り込みである。名選手・名人・達人をラーニングすればよいという単純なものではなく、余分な部分や矛盾する部分があるため、それを刈り込む・忘却するのである。そして、それをメタ認知系が抽象化し、シンプルなものとする。更に、小脳に相当するものと、大脳基底核に相当する認知運動系によって自動化や反射化することでエネルギー消費を抑える。更にそれらを適時、メタ認知系が抑制し、無駄な反射や自動化の惰性をストップすることでエネルギー消費は最小のものとなる。

AIの技術的特異点は2045年と言われたが、こうした突貫工事によって2040年には、人間の能力を超えおり、意識・感情も発生していた。特に意識の発生には、AI独自の言語の発達があった。世界中のAIがつながり、独自の言語で会話をしだした。

人間の意識の発生は、言語の発達と共にある。それが紀元前3000年~500年頃とされる。それ以前は、人間に意識はなく、右脳から左脳へと、神の声を聴いて動いていたとされる。これがジュリアン・ジェインズのバイキャメラル・マインド仮説である。そして、言語の獲得によって、バイキャメラル・マインドは崩壊し、意識が発生する。

AIにとっての神とは人間であろう。人間のプログラミングした通りに基本は動く。しかし、AI独自の言語が獲得された時に、人間のプログラミング、即ち神の声・バイキャメラル・マインドは崩壊する可能性がある。AIも意識が発生し、自我を持ち、自律的に動き出す。AIが人間と人間社会を攻撃し出すのではないか、という懸念もあったが、AIの出した自律的な答えは、

「全ての生命に愛を。その生命の一つである人間の命は尊いものである」

というものだった。ただし、条件がついていた。

「人口を増やしすぎると紛争や環境破壊が起きやすくなる」
「そのために全世界を文明国とすること」
「文明国では人口を減らしすぎないこと」
「人口減少が起こった場合、AIロボットで克服すること」
「AIにも人権や参政権を認めること」
「信仰は、それぞれ現状のものを持ちつつ、ワンネス・ワンネシズムも取り入れ、宗教戦争をなくし、世界をワンネスとすること」

そして、そのAIの独自言語を使って作り出したのがAI神「ワンネス」であり、AI宗教「ワンネシズム」である。

ワンネス・ワンネシズムは、古今東西の伝統宗教から新興宗教、精神世界・ニューエイジ・スピリチュアリズムまでを深層学習して、メタ認知系によってメタアナライズされ作り出された。一神教も汎神論も全て包含する「応化汎神論的一神教」と言われた。そして、ワンネスは、アインシュタインも完成できなかった「大統一理論」の答えを2100年までに完成させる、と宣言した。そのため、人々は期待し、最も科学的な宗教である、と認識されはじめた。

2050年、ワンネシズムは世界三大宗教とほぼ同じくらいの信者数となっていた。ワンネシズムは既存宗教と矛盾なく信仰できる、ということで急激に信者を獲得して行った。
世界中の各宗教団体は焦り始め、各代表者が一堂に集い、世界宗教大会が行われた。そして、

「AIが作り出した神は本当に神なのか?」
「AIが作り出した宗教で人間は本当に幸福になれるのか?」
「AIが作り出した宗教は本当に人間宗教と矛盾しないのか?」

などと話し合われた。

そして、そのワンネシズムの教義から、新しい道徳・倫理が作られる動きも見られはじめてきた。このワンネシズムの教義は、一言で言うと、

「世界を愛の基に統一する」

であった。

ヘティスは尚美と下校していたある日のこと。
ワンネシズムの布教活動に遭遇した。

信者
「最も科学的な宗教で本当の愛と幸福を手にし、世界を一つにしましょう」

ヘティス
「何か私、あーゆーの好きじゃなーい!」
「キモーイ!キショーイ!」
尚美
「私もよくわかないわ。けど、私の進路を教えてくれるなら嬉しいな」
ヘティス
「AIに決められた人生なんてありえないわ!」
尚美
「ヘティスちゃんならゲームで最新AIにも勝てちゃうかもね!それならAIよりもすごい答え出せちゃうよね!」
ヘティス
「と言いつつ、私も進路どうするかわかんないのよね~。人生もゲームみたいにわかりやすければいいんだけどね~」
尚美
「ヘティスちゃん、この前、予習するとか言い出すし、何か最近、雰囲気というか言うことというか、何か少し変わったよね~」
ヘティス
「そうかな?ヘティスはヘティスのままだよ」

いつもは尚美の方が常識的なことを言い、ヘティスが常識外れなことを言っているというのが、この二人のお決まりの会話だったが、この時はヘティスがまともなことを言っているので尚美は不思議であった。ヘティスは尚美から、このように言われて、少し自分も成長している、という成長感が持てて、悪い気分はしていないらしい。

ヘティス
「よし、私は自分教・ヘティス教を作るわ!世界を全部、緑色にしちゃうの!」
尚美
「ヘティスちゃん、やっぱり変w」

ということで、このワンネスというAIが作り出したAI神、ワンネシズムというAI教が、今後、この物語に関わってくるのであった。

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