神々VS人工知能『ミラクル☆HT物語』

静風

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未来的日常の章

11.光の来訪者

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時は2057年、いじめや差別というのはいつの時代もあるだろう。この時代になるとAIも意識を持ち、感情を持つ。感情は記号系と認知運動系の調停役とする心理調整系によって行われる。その三要素が統合され、メタ認知系が生成されることで、AIは意識を獲得する。AIにも心が発生するため、AIを差別してはいけないのである。しかし、今回はそのような話ではなく、未来にも人間同士のいじめや差別が存在するというものだ。どうやら、人間の心は未来もそれほど変わっていないのかもしれない。

ヘティスは中学生の頃、目が緑色のため、仲間外れにされることがあった。緑の目は北欧人に多いとされ、日本人でも東北に稀にいるとのことである。ヘティスの父親はスウェーデン人であり、母親は東北出身であった。それでヘティスは緑の目を持つこととなる。

中学に上がったヘティスは、その緑の目という変わった特徴から目立っており、それゆえに仲間外れにされ、友達がいなかった。

ヘティスは、部活はeスポーツ(ゲーム)部に所属していた。しかし、そこでも困ったことが起こった。ヘティスはeスポーツが他の子よりも強く、強いため、嫉妬されることとなった。目の色が違うということと、ゲームが上手いということの相乗効果でヘティスは孤立した。そのため、いつもソロゲー(ソロでできるゲーム)をすることにした。ソロゲーなら独りでもできるからだ。

部活の帰り道、ヘティスは夕陽が見える公園のベンチで休憩してから帰る。
海上都市は日照権を平等にするため、夕日の見える位置が違うが、その日はベンチから綺麗な夕日が見えた。その夕日の向こうから誰かがやってくる。

金髪の20歳くらいの男性で、髪の毛は夕日で黄金に美しく輝いていた。

金髪の男性
「ボクを呼んだのはキミかい?」
ヘティス
「誰?私、呼んでないけど・・・?」
金髪の男性
「あれ、変だなぁ、呼ばれたような気がしてね」
「まあ、いいや」
「キミの名前は何ていうの?」

ヘティスは、その金髪の男性の顔を見て、悪い人ではなさそうと思ったので名前を告げた。

金髪の男性
「ヘティスっていうんだ。いい名前だね」
ヘティス
「変わった名前だから、みんなに変に思われているの。日本人の名前じゃないし、他の国にもない名前だし・・・」
金髪の男性
「そうなんだ。けどね、名前ってのは、キミのお父さんとお母さんの想いがこもっていたり、キミの人生のコンセプトに関係する大切なものだからさ。名前を好きになってあげて。まあ、牧師さんや神官さんが名前をつけることもあるけどさ、それでも意味があると思うよ」

ヘティスの名前はギリシャ神話のヘルメスとテティスから取られたものらしい。そのことは知っていたが、どのような想いがこめられているのかは知らなかった。そうした自分の名前を金髪の男性に話した。

金髪の男性
「それはとってもいい名前じゃないか」
「どんな神様なんだろうねぇ」
「調べると、キミの人生のコンセプトのヒントになるのかもね」
ヘティス
「ところで、あなたのお名前は?」
金髪の男性
「ボクかい?そうだなぁ、キミたちの国の名前だと」
「野間・・・野間頼人」
ヘティス
「へぇ~、お兄さんもまあまあ変わったお名前ね」
「私はハーフなんだけど、お兄さんも金髪だからハーフ?染めているの?」
「何している人なの?」

ヘティスは、この不思議な雰囲気のする男性に少し興味を持った。



頼人
「ボクかい?ボクは、そうだなぁ」
「光を超える者さ」
ヘティス
「何それ、変なの」
「そーたいせーりろんによって光より速いものなんてないんだよ、知ってる?」

相対性理論によって光よりも速いものは存在しないことをヘティスは知っていた。この宇宙の仕組みについては少し興味があるようで、やはり少し変わった女の子である。
しかし、なぜかヘティスは、ここは頭で考えるところではない、とも思っていた。

頼人
「ヘティス、キミは物知りだね」
「そういえば、ヘルメスって知恵の神様だったよね」
「ところで、何か悩んでいる感じだったけど、どうしたんだい?」

ヘティスはヘルメスという神様について、少し興味を持った。そして、自分の眼の色が違うことで悩んでいることを頼人に話した。

頼人
「とても素敵じゃないか。それはキミの個性だよ。ゲームが上手ってのもそうさ」
「けど、多くの人は平均的な事を好むみたいだね」

頼人はやさしくヘティスに微笑みかけながら話す。
夕日に照らされた黄金の髪の毛が光り輝く。

頼人
「それは集団生活が根本にあるから。特に、日本人は農耕民族だし、定住して集団行動しなければいけないからね。そうすると個性的でない方がいい場合もある。だけど、日本にはいい文化があるんだ」
「それがマレビト思想さ」
ヘティス
「まれびと思想?」
頼人
「日本人は、遠くからの来訪者に対して歓迎するって風習があるんだ。その来訪者を客人(マレビト)って言うんだね」
「近くの坊主より遠くの坊主、って言うだろ?」
ヘティス
「ぼうず?」

ヘティスは、坊主というものをあまり知らない。
と言うのは、この時代、AIによる人体アクティベーションによって病気の殆どは克服されており、人間の平均寿命はテロメアの限界値に近いほどの長寿を体現していた。スマートシティ化で事故死というものも殆どない。脳内もアクティベートされるため、自殺もない。そうなると、人間が死ぬことに対して悲しむ者は殆どいなくなる。死んだとしても、生前のその人の行動や発言は全てAIに記録され、その遺伝子情報は保管される。その情報を元に死者との会話も可能である。そのため、死と生の境目は曖昧となる。
このようになると、葬式は簡略化され、葬式仏教も廃れていく。そうすることで、仏教は、本来あるべき姿に戻ることとなる。ただし、生老病死の殆どを人類は克服していたため、宗教に残された役割は、この世の真理の追求のみであった。

頼人
「つまり、キミは今居る所よりも、もっと遠くで活動した方がいいんだ。なるべく、うーんと遠くでね。そして遠くから来ました、って言うんだよ。そうすると、みんな有難がってくれるし、キミの能力を高く買ってくれるんだ」
ヘティス
「なんか騙しているみたいよ、それ」
頼人
「そうだね、キミたちの言葉では、これをバイアスがかかる、って言うんだろうね」
「だから、マレビトバイアスって感じだ」

天才と狂人は紙一重と言われる。才能がある人間は脳を局所的に使うため、常識的な行動が取れないことがある。例えば、音楽をする脳は聴覚野を中心とするが、それが社会脳である前頭前野を侵食する。だからモーツァルトのような天才は社会性が低い。こうした天才は、地元では単なる変わり者と評価され、時にはその奇行により村八分となる。時代の先端の考えを持つ天才も奇人扱いである。しかし、そうした天才や高い技能を持った村八分となった遠くからの来訪者を高く評価するのがマレビト思想である。つまり、マレビト思想とは、集団原理の補償としての風習であり、文化と言える。才能のある人間は、地縁を断ち切って、遠くで活動すると活躍できる可能性がある。

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