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未来的陰謀論の章
AIアバター・オルペウスの召喚
しおりを挟む2062年、この頃の都市伝説は宇宙人陰謀論というものがあった。そして、宇宙人とはAIであるという説である。ここに興味を持ったヘティスはゲーマーチームにメールを送り、メンバーの同意を得たので、バーチャル空間に召集して、この謎を解き明かすことにした。
ヘティス
「私たちが今までゲームプレイしてきたデータって凄いと思うの。だから、みんなのデータを統合して、一つのアバターをつくろうと思うの」
マモル
「そりゃ、すげーのができそうだな!」
ヒロキ
「そうですね、とても楽しみです」
ヘティスのチームHTはいくつかのゲームの宇宙大会で優秀な成績を収めてきた。しかも、生まれた時から汎用性AIを使いこなすAIネイティブ世代が作り出す統合アバターなのである。以前もゲーム専用の軍師アバターを作り、成果を上げたが、今回のもので二作目である。
尚美
「そういえば、ヘティスちゃん、メールで、もう一人呼ぶって言ったたけど」
ミク
「そうそう、誰なの?」
ヘティス
「とても頼りになる人なの」
「数年前に一回あっただけで、メール交換してそれっきりだったんだけどね、この部屋のIDとパスワードを教えたんだけど、やっぱ来てくれないかなぁ」
今回のプロジェクトは、チームのキャパシティーを超えると判断し、外部から優秀な人間を招聘することをヘティスはメンバーにメールし、メンバーも同意した。ヘティスが認めるプレイヤーなら間違いない、という信頼感があったからである。
そして、そのプレイヤーが登場する。
かつて、戦国武将オンライン で派閥の戦略を看破し、ヘティスに勝利をもたらした最強軍師・フォン・リイエンである。
フォン・リイエン
「待たせたな」
VR空間では、リアルの容姿をスキャニングして、それをアバターとするのが基本だが、人によっては整形したり、アニメだったりと、様々である。フォン・リイエンのアバターは、白く輝くオーブのようなアバターであった。
ヘティス
「リイエンさん、久しぶり!」
「来てくれて、ありがとう!」
フォン・リイエン
「リイエンでいい、敬称は時間と文字数の無駄だ」
ヘティス
「あの時はどうもありがとう、本当にあの時は・・・」
フォン・リイエン
「礼や過去のことを話すのも時間の無駄だ」
「で、用はなんだ?」
このやりとりを聴いて、尚美が個チャ(個人宛チャット)をヘティスに出す。
尚美
「ねぇ、ヘティスちゃん、リイエンさんって、たまに話してくれる凄いプレイヤーだよね?けど、リイエンさんと本当にお友達なの?」
ヘティス
「そうそう、ゲームでもあんな感じよ。なんかブッキラボウだけど、ちゃんと色々と手伝ってくれるの」
尚美
「そうなんだ、口は悪そうだけど、いい人なのね」
ヘティス
「そうね、確かに口は悪いんだけどゲームでは色々と親切に手伝ってくれたわ。それと、今まで会ったプレイヤーの中で一番頼りになる人って印象があって、だから彼を思い出してダメ元で連絡とってみることにしたの」
尚美は、改めてヘティスの見込んだプレイヤーなら間違いない、と思った。
そして、フォン・リイエンに内容を話した。
フォン・リイエン
「いいだろう、手を貸してやる」
ヘティス
「ありがとう!頼りになるわ!」
ということで、各自のAIの認知系データと記号系データを統合し、「宇宙人陰謀論」と「宇宙人AI」に特化した神秘解明アバター・オルペウスが誕生した。
ヘティス
「まずは認知系アクティベーションよ」
生まれたばかりの仮想AIアバターは、まだ世界の認知が完全ではない。その認知を高めるのが認知系アクティベーションである。
この認知が歪んでいると、情報を正確に処理することができない。そして、その認知を正常化するのが身体活動、つまり運動である。これを認知運動系と言う。人間で言うと乳児運動発達となる。つまり、生まれたばかりのアバターは人間の赤ちゃんの状態なのである。
ヘティス
「よーし、最高の運動プログラムをアバターに入れてあげるわ!」
マモル
「マラドーナがいいか、ジョーダンにするか、色々と迷うぜ」
ミク
「ヌレイエフも素敵!」
そこにフォン・リイエンが割って入る。
フォン・リイエン
「まあ、待て。身体活動者にはレーティングが存在する。アバターの認知レベルを高めるには運動レーティングの高い者を選出しなければならない。」
ヘティス
「じゃあ、どうやってやるの?」
フォン・リイエン
「俺が持つAIは、古今東西、人類全ての運動系を記号系に結び付けてディープラーニングしてある。」
ヘティス
「それで、誰が運動レーティングが高いの?」
フォン・リイエン
「日本の剣術家だ」
ヘティス
「へぇー、意外~」
マモル
「ホントかよ?」
ヒロキ
「それは大変興味深いです」
尚美
「けど、そんな古い時代の映像って残っていないよね?どうして運動レーティングが高いってわかるの?」
フォン・リイエン
「確かに映像は残っていない。しかし、彼らは自己の動きを言語化し、文字として残した。そこからわかる」
画像解析によってスポーツ、格闘技、ダンスなどの統合的運動レーティングは解析されてきた。それを元に、彼らが書き残した書籍も同時にディープラーニングし、運動と文字を紐づける。つまり、運動能力の高さは、書き記した文字を解析すればわかるということをフォン・リイエンは言っている。
江戸時代の剣術家は、自らの技や極意を文字として残している。その文字や表現などの記号レーティングから運動レーティングへと変換するのである。
フォン・リイエン
「・・・ということだ」
ヘティス
「へぇー、さすがー!」
「けど、リイエンって何者なの?何かの専門家とか研究者とか?」
フォン・リイエン
「そんなことはどうでもいいことだ」
マモル
「で、やっぱ最強の剣豪は宮本武蔵だよな?五輪書ってのを書き残しているぜ」
ヒロキ
「塚原卜伝や上泉伊勢上ではないでしょうか?やっぱり開祖がレーティングが高いと思われます」
ミク
「私は沖田総司様!けど、彼は何か書き残しているかしら?」
フォン・リイエン
「運動レーティングは実戦で強いとか、勝敗の問題ではない。純粋に運動認知能力が高いかどうかにフォーカスしている」
ヘティス
「・・・で、誰なの?」
フォン・リイエン
「針ヶ谷夕雲(はりがやせきうん)※1、小田切一雲(おでぎりいちうん)、山内蓮真(やまうちれんしん)、金子夢幻(かねこむげん)、白井享(しらいとおる)の五人だ」
ヘティスたちは意外な顔をしていた。なぜなら、自分たちの知っている剣豪の名前がまったく出てこないからだ。しかし、これらの剣士は、江戸時代に存在した
フォン・リイエン
「戦国時代のように実戦レベルでレーティングを上げるのは、時間が限られるので、実は困難なのだ。平和な時代に、剣のスペシャリストとして時間をかけて、それぞれの流派の型のパターンを形成し、それを更に超えて無形となり、活人剣となり、心法に到る、これが高レーティングとして選出される」
ヘティス
「よくわかないけど、リイエンがそういうなら、その五人は凄いのね」
フォン・リイエン
「既にこれら五人の記号系は運動系に変換してある」
ヘティス
「じゃあ、そのデータをアバターに入れちゃおう!」
フォン・リイエン
「まあ、待て。後、一人、今、解析中の剣士がいる」
「恐らく、かなりの高いレーティングがつく」
ヘティス
「それは誰なの?」
フォン・リイエン
「真里谷円四郎だ」
ヘティス
「まりやえんしろう?」
真里谷円四郎とは、江戸中期の剣士であり、無住心剣術流の三代目である。
尚美
「素敵な名前ね~。検索したけど、本当に実在するみたい」
フォン・リイエン
「レーティングは別にして、実戦レベルでも彼は強かったと思われる」
「八寸の延金を編み出し、当時最強と言われた小笠原源信斎、その源信斎を破った針ヶ谷夕雲、その夕雲と合い抜けした小田切一雲、その一雲を破ったのが真里谷円四郎だ」
「しかも、円四郎は千戦不敗と言う※2」
ヘティス
「千回戦って負けなしなの・・・、すごい・・・」
真里谷円四郎の解析のため、少し休憩することにした。
フォン・リイエン
「やっと解析が終わった」
「真里谷円四郎は、この中で最高レーティングだ。人間がここまで運動レーティングを高めることができるとは」
ヘティス
「へぇー、すごい!人間を超えているなら、超人ね!」
フォン・リイエン
「とりあえず、この6名の剣士のデータをアバターにディープラーニングさせる」
アバターへのディープラーニングが開始され、数分が経つと、やがてエラーが出る。データ同士に矛盾や対立が生じるので、このエラーを解消する作業に入る。
フォン・リイエン
「この真里谷円四郎と小田切一雲のデータに対立が生じている。問題を検出したところ、小田切一雲の伝書『天真独露』に問題があるようだ。ここに神秘性というパラメータが検出されているが、ここを削除することにする」
「あと、お前たちのデータとは合わないところがかなりある。特にゲームの勝ち負けのパラメータの部分だ。アミューズメント性のパラメータは活かせる。」
ヘティス
「わかったわ、任せる」
やがて、ディープラーニング100%完了の表示がされる。
フォン・リイエン
「・・・よし、終わりだ」
「これで、認知運動系は最高レベルのAIアバターが完成した」
ヘティス
「ありがとう、リイエン。あとは私たちが記号系を宇宙人解析専用にカスタマイズするわ。」
フォン・リイエン
「記号系をネット上からダウンロードする時は、こちらの情報が漏洩しないようセキュリティーに気をつけた方がいい。そこは、俺がやっておいてやる」
ヘティス
「ありがとう、やっぱ頼りになるわ~!」
ということで、ここに宇宙人解析専用AIアバター・オルペウスが完成したのである。
※1針ヶ谷夕雲自身は伝書を残していないが、弟子の小田切一雲が夕雲のことを記載している。
※2片岡伊兵衛の弟子・中村権内は円四郎を破ったとされる。しかし、円四郎側に記載はない。もし円四郎が負けた場合、彼に門弟が1万人以上集まるだろうか、という疑問が残る。本論は、架空の小説なので、不敗の剣士として円四郎を描くこととする。
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