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第二章 王との見合い
14 王2 ※オスカー視点
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アシュワールドの王国内外の王侯貴族の令嬢たちに、王とお見合いの形で会ってもらい、王と令嬢が共に結婚に前向きになれば婚約する、という方向性に変更した。本来であれば王妃の器というものも重要だが、今回はそこは重要視していない。人となりがよく、王と気が合い、王が気に入る女性。そういった女性であれば、側近としては大歓迎である。
令嬢同士の争いが起きないよう、王家から依頼した令嬢のみが候補となる。当の本人のオスカーは嫁取りが面倒なようで前向きではないが、毎日のように説得され、一応は納得してお見合いをしてはいる。しかし、これまでの十一人のお見合いは全て婚約に至らず、側近はみな頭が痛い。
「仕方ないだろう、興味が湧く令嬢がいなかったんだ」
「どうしてですか!? 陛下、美人好きですよね? 美人な令嬢たくさんいましたよね? 私は一番最初の令嬢が一番良かったと思ったのですが」
「一番最初? ……ああ、あの美人」
「そうですよ! 美人だし、受け答えも素晴らしかったし、陛下も会話が弾んでいらっしゃいましたよね?」
「表向きはな。あれは腹黒だぞ? 同類の匂いがした」
「ちょっとくらい腹黒でもいいじゃないですか! 少しのスリルがスパイスとなって、きっと暇な陛下を楽しませてくれたはずです!」
「ちょっと、で済まなそうだから止めたんだ。プライベートが平穏でなくなる」
「う、そう言われると……確かに家庭に癒しがないのは私も辛いですね。では、二番目の令嬢はどうでした? 彼女も美人で、胸も大きかったですよね」
オスカーは思い出そうと眉を寄せる。
「ああ、胸を俺の腕にずっと押し付けていた令嬢だな。俺は別に胸フェチではないし、暑苦しくてな」
「…………」
それからも、オスカーはこれまで婚約に至らなかった令嬢たちをこう説明した。「一度も視線を合わせない令嬢は無理」「ふくよかな女性は好きだが、好きな牛肉の部位の説明を永遠にされて、お腹いっぱい」「香水の匂いが部屋中に充満するくらい付けるのは、どうかと思う」「アピールのつもりなのだろうが、自分を過大評価した自慢話ばかりされても眠くなる」「夜這いをしたいなら、警備に見つかり騒ぐのは論外」等々。
これまでの見合い相手は、王侯貴族の令嬢のわりに、バラエティに富んだ個性のある女性が多かったのは事実。
王位に就く前のオスカーは、王立学園に通う女生徒が全員オスカーを好きなのではないかというくらい人気があった。オスカー自身の守備範囲も広く、いろんな女性と浮名を流していたはずなのに、現在では細かいところを言い訳に上げている。やはり婚約するとなれば、話は違ってくるものなのだろうかとシリルは首を傾げる。
どこかで妥協も必要だと喉まで出かかったシリルだが、自身が大好きな人と結婚できた幸せを知っている以上、主であり友人でもあるオスカーには、愛しいと思える人と一緒になってほしい、という気持ちがあり、言葉を飲み込んだ。
シリルはため息を付きながら、手元の書面を見た。
「次のお見合いですが、陛下の気に入る方であれば良いのですが」
「次は誰に打診したんだ?」
「ヴォロネル王国のレティツィア王女です。大変美人だと有名ですよ」
「へぇ」
「ああ、そういえば、確かプーマ王国の第二王子から何度も求婚されて断っているとか」
「ははっ、それは断って正解だな。何度もとは、あのクズに執着されているのか? 大変だな」
「執着に違いないですね。<暗闇>からの報告ですと、王女誘拐未遂も何度か。証拠はないようですが、おそらく犯人は第二王子だろうとのこと」
「それはそれは、ご愁傷様だな」
「本当ですね。それもあってか、ヴォロネル王国から道中の護衛の要請が少し過剰気味ですが、許可しました。また、第二王子に知られたくないのでしょう、お見合いは極秘扱いでと要請されています。こちらも希望通りに行う予定です」
「分かった」
あまり興味がなさそうなオスカーに、シリルは内心溜め息である。これは次のお見合い相手も断ることになりそうだ。しかし、諦めるわけにはいかない。早くオスカーに妻を作ってもらわねばならない。一刻も早くオスカーの比重を仕事から婚約者へ、少しでも仕事に割く時間を減らしてもらわなければならない。そうしないと、シリルの妻とのラブラブな日々は、遠のくばかりなのである。
シリルの頭の中は、すでにレティツィア王女は婚約にいたらないだろうと決定事項になっていた。レティツィア王女の次に要請する令嬢を見繕わなければ、そう思案するのだった。
令嬢同士の争いが起きないよう、王家から依頼した令嬢のみが候補となる。当の本人のオスカーは嫁取りが面倒なようで前向きではないが、毎日のように説得され、一応は納得してお見合いをしてはいる。しかし、これまでの十一人のお見合いは全て婚約に至らず、側近はみな頭が痛い。
「仕方ないだろう、興味が湧く令嬢がいなかったんだ」
「どうしてですか!? 陛下、美人好きですよね? 美人な令嬢たくさんいましたよね? 私は一番最初の令嬢が一番良かったと思ったのですが」
「一番最初? ……ああ、あの美人」
「そうですよ! 美人だし、受け答えも素晴らしかったし、陛下も会話が弾んでいらっしゃいましたよね?」
「表向きはな。あれは腹黒だぞ? 同類の匂いがした」
「ちょっとくらい腹黒でもいいじゃないですか! 少しのスリルがスパイスとなって、きっと暇な陛下を楽しませてくれたはずです!」
「ちょっと、で済まなそうだから止めたんだ。プライベートが平穏でなくなる」
「う、そう言われると……確かに家庭に癒しがないのは私も辛いですね。では、二番目の令嬢はどうでした? 彼女も美人で、胸も大きかったですよね」
オスカーは思い出そうと眉を寄せる。
「ああ、胸を俺の腕にずっと押し付けていた令嬢だな。俺は別に胸フェチではないし、暑苦しくてな」
「…………」
それからも、オスカーはこれまで婚約に至らなかった令嬢たちをこう説明した。「一度も視線を合わせない令嬢は無理」「ふくよかな女性は好きだが、好きな牛肉の部位の説明を永遠にされて、お腹いっぱい」「香水の匂いが部屋中に充満するくらい付けるのは、どうかと思う」「アピールのつもりなのだろうが、自分を過大評価した自慢話ばかりされても眠くなる」「夜這いをしたいなら、警備に見つかり騒ぐのは論外」等々。
これまでの見合い相手は、王侯貴族の令嬢のわりに、バラエティに富んだ個性のある女性が多かったのは事実。
王位に就く前のオスカーは、王立学園に通う女生徒が全員オスカーを好きなのではないかというくらい人気があった。オスカー自身の守備範囲も広く、いろんな女性と浮名を流していたはずなのに、現在では細かいところを言い訳に上げている。やはり婚約するとなれば、話は違ってくるものなのだろうかとシリルは首を傾げる。
どこかで妥協も必要だと喉まで出かかったシリルだが、自身が大好きな人と結婚できた幸せを知っている以上、主であり友人でもあるオスカーには、愛しいと思える人と一緒になってほしい、という気持ちがあり、言葉を飲み込んだ。
シリルはため息を付きながら、手元の書面を見た。
「次のお見合いですが、陛下の気に入る方であれば良いのですが」
「次は誰に打診したんだ?」
「ヴォロネル王国のレティツィア王女です。大変美人だと有名ですよ」
「へぇ」
「ああ、そういえば、確かプーマ王国の第二王子から何度も求婚されて断っているとか」
「ははっ、それは断って正解だな。何度もとは、あのクズに執着されているのか? 大変だな」
「執着に違いないですね。<暗闇>からの報告ですと、王女誘拐未遂も何度か。証拠はないようですが、おそらく犯人は第二王子だろうとのこと」
「それはそれは、ご愁傷様だな」
「本当ですね。それもあってか、ヴォロネル王国から道中の護衛の要請が少し過剰気味ですが、許可しました。また、第二王子に知られたくないのでしょう、お見合いは極秘扱いでと要請されています。こちらも希望通りに行う予定です」
「分かった」
あまり興味がなさそうなオスカーに、シリルは内心溜め息である。これは次のお見合い相手も断ることになりそうだ。しかし、諦めるわけにはいかない。早くオスカーに妻を作ってもらわねばならない。一刻も早くオスカーの比重を仕事から婚約者へ、少しでも仕事に割く時間を減らしてもらわなければならない。そうしないと、シリルの妻とのラブラブな日々は、遠のくばかりなのである。
シリルの頭の中は、すでにレティツィア王女は婚約にいたらないだろうと決定事項になっていた。レティツィア王女の次に要請する令嬢を見繕わなければ、そう思案するのだった。
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