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第1章

57 死神業の同業者2

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 如月家と情報交換と言っても、全ての知っていることを交換するわけではない。私の場合、時間を逆行しているが、それに関するものは一切話してはいないのだ。

 如月家とは和やかな関係を築いているし、何かを競争しているわけでもない。だから敵対することはないとは思いつつも、互いに話す内容は厳選はしている。

 そして、少し不穏な内容を話すために、私は口を開いた。

「うちの担当に聞いたのですが、半年くらい前、他の地区で死神業者の入れ替えがあったようなんです」
「……私もそれは聞いたわ。北海道地区ですってね。うちは内容は教えてくれなくて、紗彩は内容聞けた?」
「全部は教えてはくれませんでしたが……どうやら、後継者の下剋上だったようです」
「……親子の骨肉の争いってことね。笑えない冗談だわ。うちは親子間は親密だけど、それ以外の親戚がどうもね……」

 死神業の家系は、神から報酬がない代わりに、死神業の力を利用して事業で利を得ることは認められている。だからか、どうしても死神業の当主とその後継者に、家族や親戚の中での権力が集まりやすい。事業を拡大すると、さらに権力は高まるため、当主や後継者をよく思わない人物も出るという。

 一条家はそういったことはなく、みな仲がいいけれど、如月家の異世界側の事業は、権力争いが勃発していると聞いている。

 とはいえ、今回の話は家族や親戚の話ではなく、当主と後継者の間で争いがあった、という話だった。北海道地区の死神業者は、きっと親子関係が良くなかったのだろう。子が親を血なまぐさい方法で排除したのである。

「親が亡くなったので、子が当主になるはずだったらしいのですが、どうやら子の死神業の力は取り上げられ、子は死神業を廃業。北海道地区では、新しく別の一家が死神業の力を与えられたそうです」
「――まさか、タブーに引っかかったというの?」
「そうだと思われます」

 死神業にはタブー、つまりしてはいけない禁忌というものが存在する。死神業は基本的に秘密事項であるため、それをいろんな人に吹聴しすぎるのはタブーだとされている。その吹聴していい人数の上限は分からないが、家族や親戚、少しの部下くらいなら問題ないことは、私が実証して分かってはいる。

 もしタブーに引っかかると、神に罰を与えられ、最終的には死神業は廃業となる。廃業してしまうと、当然日本と異世界を行き来する力は剥奪され、他にも罰が与えられるとは聞いている。

「なるほど、死神業の親子間での命の取り合いはタブーってことなのね……」
「親から子に関しては、まだ分かりません。今回分かったのは、子から親へはタブーだということです」

 こんな不穏な話をしているのは、今のところ、死神業者以外の人が死神業者を死に追いやることは、タブーではないからである。私だって、逆行する前、死神業ではない第一皇妃に殺されたようなものだが、第一皇妃への神からの罰はなかったはずである。夫だったルドルフからは、何かの罰を受けた可能性はあるけれど。

 さらに不穏な話をするなら、死神業の私が帝国で死神業でない誰かを死に追いやったとしても、それはタブーではないのだ。それは他の死神業の同業者が試したので、情報としては知っている。

「そうね……。なんだか殺伐とした話に乗っかるわけではないけれど、こちらも一つ情報を得たの。異邦人の件なんだけれど」

 異邦人とは、咲のように死者ではなく、異世界に通じる扉を通ってきた人間のことである。

「どこかの地区で異邦人が来たらしくてね、どうやらその異邦人が問題のある人だったみたいで、同業者が死に追いやったらしいの。そしたら、タブーではないものの、グレーゾーンだったみたいで、何か罰を受けたらしいわ」
「罰というと? 死神業の廃業ではないのですか?」
「廃業まではなかったらしいわ。問題のあった異邦人のことが考慮されたのかもしれないわね。でも何か罰は受けたと思う。うちの担当って、頭硬くて、口が軽くないのよ。そこまで言ったなら、全部教えてくれればいいのに」
「なるほど……。弥生さんのところは、異邦人は最近来ましたか?」
「こっちは十数年は来てないわね。紗彩のところは、数年前に来て紗彩が預かっているんでしょう?」
「はい。ちゃんと働いて、良い子なんですよ」

 咲の事である。

「いいわねぇ。異邦人は問題を起こす人が多いから、来ないでほしいんだけれど」

 その通りである。咲の前に来た異邦人は、それこそ大問題を起こした人だった。

 それから、他にも情報交換をし、この日の死神業の食事会は終わった。
 その日の内に大阪から東京へ戻り、金曜はそんな感じで更けていくのだった。

 次の日の土曜日。
 この日は麻彩と遊園地へ行った。私と麻彩はアトラクションを楽しむというより、いつもショーやパレードを楽しむのだ。時期によって内容が違うし、朝から夜まで複数行われるため、色々と見られて楽しい。その日は夜の花火まで堪能し、帰宅した。
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