君と僕だけのブルースター

れみっしゅ

文字の大きさ
9 / 12

継灯

しおりを挟む
星は、燃え尽きる前に、最後の光を宇宙に投げかける。
その光は、数十億年の歳月をかけて、やがて誰かの目に届く。

まるで――
それが“誰かの想い”であったかのように。



耀作が“メモリースター・プロジェクト”で語ったひとつの言葉が、
思いもよらぬ形で、ひとりの少女に届いていた。

椎名絢音、高校2年生。
その目はかつての耀作のように、星を“遠いもの”としてではなく、“何かの証”として見つめていた。

「講義で先生の話を聞いて……泣いてしまったんです。
私、もう夢なんて見られないと思ってたから……」

彼女の口から語られたのは、数年前に亡くした妹への“後悔”だった。

「“星って、会えない人に会える場所なんだ”って、妹が言ってたんです。
その時は意味がわからなかった。でも、今なら少し分かる気がして」

耀作は頷きながら、自分が恵にかつて言われた言葉を思い出していた。

“星は、誰かの記憶が残る場所。誰かを想う力が、そこにあるんだよ”

絢音の中に灯った小さな“火”は、確かに、耀作がかつて受け取ったものと同じだった。



絢音は文化祭のプラネタリウムで「星の記憶」をテーマにした短編演劇を企画する。

構成は、亡き妹の記憶と、星を見上げ続ける姉の再生の物語。

耀作はその脚本の相談を受けながら、静かに見守っていた。

リハーサルの最中、絢音は言う。

「耀作さん。私、やっと気づいたんです。
誰かに“想い”を継ぐことって、自分の中に“生きてる誰か”を育てることなんだって」

その言葉に、耀作は心の奥底で何かが弾けるのを感じた。

あの日、星になった誰かの想い。
それが、今、確かに誰かの中で灯っている。

“継ぐ”とは、忘れないことじゃない。

“燃やし続けること”なんだ。



文化祭当日。

プラネタリウムの幕が開くと、照明の中にゆっくりと青い星が浮かび上がった。

舞台上で語られる姉の独白。
「私の中に、あなたは今も生きてる。
だから私は、星を見上げる。そこにあなたがいるって、そう信じてるから」

涙をこらえる観客たち。
舞台の最後、静かに照明が落ちる瞬間――
小さな光が再び灯る。

それは、誰かの心に確かに“継がれた灯”だった。



その夜。

耀作のスマホに、絢音からの短いメッセージが届く。

「ありがとう。耀作さんがいたから、私は“誰かのために光になりたい”と思えました」

彼は返す。

「君の灯は、もう誰かの星になってるよ」

ベランダに出ると、空にはいつものように――
静かに、青く瞬く星があった。

かつて、恵が遺した星。
それは、もはや耀作だけのものではない。

新しい灯が、次の誰かへと確かに継がれていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

あなたが後悔しても、私の愛はもう戻りません

藤原遊
恋愛
婚約者のアルベルトは、優しい人だった。 ただ――いつも、私より優先する存在がいただけで。 「君は分かってくれると思っていた」 その一言で、リーシェは気づいてしまう。 私は、最初から選ばれていなかったのだと。 これは、奪われた恋を取り戻す物語ではない。 後悔する彼と、もう戻らないと決めた私、 そして“私を選ぶ人”に出会うまでの、静かな恋の終わりと始まりの物語。

【完結】恋の終焉~愛しさあまって憎さ1000倍~

つくも茄子
恋愛
五大侯爵家、ミネルヴァ・リゼ・ウォーカー侯爵令嬢は第二王子の婚約者候補。それと同時に、義兄とも婚約者候補の仲という複雑な環境に身を置いていた。 それも第二王子が恋に狂い「伯爵令嬢(恋人)を妻(正妃)に迎えたい」と言い出したせいで。 第二王子が恋を諦めるのが早いか。それとも臣籍降下するのが早いか。とにかく、選ばれた王子の婚約者候補の令嬢達にすれば迷惑極まりないものだった。 ミネルヴァは初恋の相手である義兄と結婚する事を夢見ていたというに、突然の王家からの横やりに怒り心頭。それでも臣下としてグッと堪えた。 そんな中での義兄の裏切り。 愛する女性がいる? その相手と結婚したい? 何を仰っているのでしょうか? 混乱するミネルヴァを置き去りに義兄はどんどん話を続ける。 「お義兄様、あなたは婿入りのための養子縁組ですよ」と言いたいのをグッと堪えたミネルヴァであった。義兄を許す?許さない?答えは一つ。

不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない

翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。 始めは夜会での振る舞いからだった。 それがさらに明らかになっていく。 機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。 おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。 そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?

沈黙の指輪 ―公爵令嬢の恋慕―

柴田はつみ
恋愛
公爵家の令嬢シャルロッテは、政略結婚で財閥御曹司カリウスと結ばれた。 最初は形式だけの結婚だったが、優しく包み込むような夫の愛情に、彼女の心は次第に解けていく。 しかし、蜜月のあと訪れたのは小さな誤解の連鎖だった。 カリウスの秘書との噂、消えた指輪、隠された手紙――そして「君を幸せにできない」という冷たい言葉。 離婚届の上に、涙が落ちる。 それでもシャルロッテは信じたい。 あの日、薔薇の庭で誓った“永遠”を。 すれ違いと沈黙の夜を越えて、二人の愛はもう一度咲くのだろうか。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

繰り返す夜と嘘 〜【実録】既婚の僕と後輩の彼女、あの夜のキスから始まった13年の秘密〜

まさき
恋愛
結婚して半年の僕と、同じ職場の彼女。 出会った頃は、ただの先輩と新入社員だった。   互いに意識しながらも、 数年間、距離を保ち続けた。   ただ見つめるだけの関係。   けれど――   ある夏の夜。 納涼会の帰り道。   僕が彼女の手を握った瞬間、 すべてが変わった。   これは恋でも、友情でもない。   けれど理性では止められない、 名前のない関係。   13年続いた秘密。 誓約書。 そして、5年の沈黙。   これは――   実際にあった「夜」の記録。

処理中です...