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継灯
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星は、燃え尽きる前に、最後の光を宇宙に投げかける。
その光は、数十億年の歳月をかけて、やがて誰かの目に届く。
まるで――
それが“誰かの想い”であったかのように。
◇
耀作が“メモリースター・プロジェクト”で語ったひとつの言葉が、
思いもよらぬ形で、ひとりの少女に届いていた。
椎名絢音、高校2年生。
その目はかつての耀作のように、星を“遠いもの”としてではなく、“何かの証”として見つめていた。
「講義で先生の話を聞いて……泣いてしまったんです。
私、もう夢なんて見られないと思ってたから……」
彼女の口から語られたのは、数年前に亡くした妹への“後悔”だった。
「“星って、会えない人に会える場所なんだ”って、妹が言ってたんです。
その時は意味がわからなかった。でも、今なら少し分かる気がして」
耀作は頷きながら、自分が恵にかつて言われた言葉を思い出していた。
“星は、誰かの記憶が残る場所。誰かを想う力が、そこにあるんだよ”
絢音の中に灯った小さな“火”は、確かに、耀作がかつて受け取ったものと同じだった。
◇
絢音は文化祭のプラネタリウムで「星の記憶」をテーマにした短編演劇を企画する。
構成は、亡き妹の記憶と、星を見上げ続ける姉の再生の物語。
耀作はその脚本の相談を受けながら、静かに見守っていた。
リハーサルの最中、絢音は言う。
「耀作さん。私、やっと気づいたんです。
誰かに“想い”を継ぐことって、自分の中に“生きてる誰か”を育てることなんだって」
その言葉に、耀作は心の奥底で何かが弾けるのを感じた。
あの日、星になった誰かの想い。
それが、今、確かに誰かの中で灯っている。
“継ぐ”とは、忘れないことじゃない。
“燃やし続けること”なんだ。
◇
文化祭当日。
プラネタリウムの幕が開くと、照明の中にゆっくりと青い星が浮かび上がった。
舞台上で語られる姉の独白。
「私の中に、あなたは今も生きてる。
だから私は、星を見上げる。そこにあなたがいるって、そう信じてるから」
涙をこらえる観客たち。
舞台の最後、静かに照明が落ちる瞬間――
小さな光が再び灯る。
それは、誰かの心に確かに“継がれた灯”だった。
◇
その夜。
耀作のスマホに、絢音からの短いメッセージが届く。
「ありがとう。耀作さんがいたから、私は“誰かのために光になりたい”と思えました」
彼は返す。
「君の灯は、もう誰かの星になってるよ」
ベランダに出ると、空にはいつものように――
静かに、青く瞬く星があった。
かつて、恵が遺した星。
それは、もはや耀作だけのものではない。
新しい灯が、次の誰かへと確かに継がれていた。
その光は、数十億年の歳月をかけて、やがて誰かの目に届く。
まるで――
それが“誰かの想い”であったかのように。
◇
耀作が“メモリースター・プロジェクト”で語ったひとつの言葉が、
思いもよらぬ形で、ひとりの少女に届いていた。
椎名絢音、高校2年生。
その目はかつての耀作のように、星を“遠いもの”としてではなく、“何かの証”として見つめていた。
「講義で先生の話を聞いて……泣いてしまったんです。
私、もう夢なんて見られないと思ってたから……」
彼女の口から語られたのは、数年前に亡くした妹への“後悔”だった。
「“星って、会えない人に会える場所なんだ”って、妹が言ってたんです。
その時は意味がわからなかった。でも、今なら少し分かる気がして」
耀作は頷きながら、自分が恵にかつて言われた言葉を思い出していた。
“星は、誰かの記憶が残る場所。誰かを想う力が、そこにあるんだよ”
絢音の中に灯った小さな“火”は、確かに、耀作がかつて受け取ったものと同じだった。
◇
絢音は文化祭のプラネタリウムで「星の記憶」をテーマにした短編演劇を企画する。
構成は、亡き妹の記憶と、星を見上げ続ける姉の再生の物語。
耀作はその脚本の相談を受けながら、静かに見守っていた。
リハーサルの最中、絢音は言う。
「耀作さん。私、やっと気づいたんです。
誰かに“想い”を継ぐことって、自分の中に“生きてる誰か”を育てることなんだって」
その言葉に、耀作は心の奥底で何かが弾けるのを感じた。
あの日、星になった誰かの想い。
それが、今、確かに誰かの中で灯っている。
“継ぐ”とは、忘れないことじゃない。
“燃やし続けること”なんだ。
◇
文化祭当日。
プラネタリウムの幕が開くと、照明の中にゆっくりと青い星が浮かび上がった。
舞台上で語られる姉の独白。
「私の中に、あなたは今も生きてる。
だから私は、星を見上げる。そこにあなたがいるって、そう信じてるから」
涙をこらえる観客たち。
舞台の最後、静かに照明が落ちる瞬間――
小さな光が再び灯る。
それは、誰かの心に確かに“継がれた灯”だった。
◇
その夜。
耀作のスマホに、絢音からの短いメッセージが届く。
「ありがとう。耀作さんがいたから、私は“誰かのために光になりたい”と思えました」
彼は返す。
「君の灯は、もう誰かの星になってるよ」
ベランダに出ると、空にはいつものように――
静かに、青く瞬く星があった。
かつて、恵が遺した星。
それは、もはや耀作だけのものではない。
新しい灯が、次の誰かへと確かに継がれていた。
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