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元カレに脅されています
悠視点:あの時とこれは、俺の
しおりを挟む「…待ったか?」
いつもと同じ、十五分遅れの到着。いつもなら何も言わない、言わなかった恭弥が口を開く。
「遅刻ですよ」
「…いつものことだろ」
「そうですね、きっかり十五分の遅刻なんていつものことですね」
「……で?なんの話だよ」
「終わらせに来ました」
「…」
(やっぱり、な)
「俺が写真消すとでも思った?それとも、元カレと…」
「違います。…俺、先輩のこと好きでした」
「は?」
突然の切り出しに、何を言っているのか頭の中で考える。
「だから、中学の時に先輩がキスしてくれたことも全部、嬉しかったです」
「…」
「それに、俺はあの時から付き合ってると思ってました」
それは、おれも同じだ。
「だから、先輩を追いかけて高校も受けたし受かった時は嬉しかったです」
俺だって、また同じ学校に通うと思った時は嬉しかった。
「でも、大学受験で忙しい先輩に俺は無神経すぎた」
違う、俺だってしょうもないプライドでお前のこと…。
「だから、すれ違っていることにも気付けなかったんです」
それは、俺も同じ。
「先輩を見てると、嫉妬なんかして胸が苦しくて」
恭弥を見ていると、周りに嫉妬して苦しくて。
「自分じゃないって思うくらい、変なこと口走ったりして」
本当に俺かと問いかけるほど自分勝手なことを恭弥に投げつけて。
「たまに、イラついたりムカムカしたりして」
遅れて来たのは、先に行ってもしも来なかったらどうしようと思ったから。でも、いるからってホッとしたりする自分にずっとイライラしてムカついて。
「見つけたら、真っ先に好きだなって思って」
見つけると、真っ先にかわいいと思えて。
「あれが…先輩が、俺の」
「初恋だったよ」
「初恋でした」
同じタイミングで、言う。
「俺は付き合ったのはお前が初めてじゃないけれど、初めて恋愛感情持ったのはお前が初めてだった」
「…先輩…?」
「…もっと、早くにこうやって話し合ってればよかったかもな」
「…俺、先輩から逃げてばっかりで」
「ごめんな」
「…ごめんなさい」
「俺が、ちゃんと終わらせるべきだった。なのに…何年も、引きずってごめん。…好きだよ、恭弥」
「…俺も、先輩が好きでした。でもごめんなさい、…別れてください」
「……うん、わかった。バイバイ」
「…これ、先輩から卒業式の前日に来たメールです」
「え?」
目の前に出される、見覚えのある携帯を見る。たしか、中学の頃から恭弥が持っていた…。
「これ…画面が小さくて文字が大きい設定だったので、先輩からのメールも変なところで改行されてて、卒業式過ぎて何日もたってから気付きました」
「え………うわ、ほんとだ」
「気付かなくてごめんなさい。あと…先輩が卒業して、少し経った頃駅前のカフェで見かけました」
「え?」
「…俺のことだと思ったんですけど、思ってたのと違ったって。…ごめんなさい」
「……言ってない」
「え?」
「俺、お前にそんなこと言ってない…」
「あ、俺が勝手に聞いてただけで…」
「違うから!」
「え」
「……違うから。…写真、パソコンに転送したっていうのはウソだから。携帯に入ってた写真は誰かに見られる前に消してる」
「…そう、だったんですか…」
「…お前の連絡先も、消すよ。これでいい?」
「…はい…」
「……じゃーね、元気で」
これ以上、未練が残る前に立ち去る。外はあの日…初めてキスした日のような、暑さだった。
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