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①
しおりを挟むど、どうしてこんな事になっているんだろう。目だけ動かして、寝室の天井、次に自分の左右を見る。右にアルケーさん、左にエナ。・・二人とも肩肘を着いた状態で私を挟んでいる。笑顔で私を観察していると言った方が近いかもしれない。
そう、今の状況は一つのベッドに三人。メンバーは私とアルケーさんとエナ。ベッドはいつも寝ているものより、かなり大きい。大人三人でもゆとりは有りそうだが、二人は体温が感じられる位、ぴったり寄り添っている。緊張やら不安やらで、ごくりと喉が鳴る。
「あ、あの・・と、と・・取り合えず、一回、止めません・・か?」
「なぁに言ってんの。今更。此処まで来たんだから、諦めて僕たちに『食べられ』ちゃった方が良いよ」
「えぇ、三番目のトマリギの言う通りですよ。良い子ですから『止める』とか言わないで下さいね」
アルケーさんは私の耳元でそう囁く。右手の甲を指先でそっと撫でられた。たったそれだけの事なのに、ぴくりと身体が反応する。エナがむくれて「もうッ!」と声を上げる。
「一番目のトマリギに撫でられた位で、そんな反応しちゃうんだぁ。妬けちゃう」
エナがまな板の鯉状態の私に覆いかぶさり、軽く唇を啄んだ。静かな寝室に、ちゅっという音がやたら大きく響く。恥ずかしさで顔に熱が集まるのと同時に、隣からの視線を感じて身体が縮こまる。絶対に絶対に、アルケーさんは面白くないに違いない。そんなアルケーさんが黙っている筈がない。
私の考えを察したのか、エナの唇が離れたタイミングで右の耳朶を食まれ、舌で耳の輪郭をなぞられた。やっぱり、あのアルケーさんが大人しくしている筈がなかった!
「ーーッ!!」
ぎゅっと唇を噛むのと同時に目をきつく瞑り、声を我慢する。
駄目ッ!これ、アルケーさんと『する』時の前戯だ!身体が完全に覚えてしまっていて、お腹の奥がじわりと反応する。それがバレてしまったのか、くすっと笑う空気が伝わり舌が離れる。エナも私から顔を離してくれた。
左右からの攻撃(?)が一旦止まり、そっと目を開け小さく一息吐く。うぅ゛・・一難去った感は有るが、このまま終わるとは到底思えない。
事の始まりはエナの何時ものとんでもない一言からだった。
エナの部屋のベッドで、身体を重ねた後の甘い気怠さの中うとうとしていると、気遣わしな声が掛った。
「・・オト、大丈夫?久し振りだったから・・その、ゴメンね」
「ん、大丈夫。でも、ちょっと寝かせて欲しい・・かも」
私はそう言い、エナの幾つかの傷跡が残る胸元に頬を寄せた。彼からは何処か甘いシナモンのような香りがする。じんとした痺れが身体の奥に残っているが、力を抜いて微睡む。ひそひそ話をする感じでエナが私の耳元に口を寄せ「ねぇ」と囁く。
「4人のトマリギがそれぞれにオオトリを可愛がるから、オトには無理させてるよね」
エナは、私の背中に腕を回して労う様に撫でてくれた。改まって何だろう、と不思議に思いながら答える。
「・・無理させてるとかないよ。私も無理してる訳じゃないから大丈夫」
「・・んー、でも・・こんなにさぁ・・」
言葉が途中で切れ、エナの手が背中から身体の前に移動する。エナの指先が、首元や胸についている赤みがかったトマリギ達の痕跡を一つ、二つとつつく。そして喉ぼとけ辺りに残る跡を軽く爪先で引っ掻いた。
「服で隠せないような所に跡を残したのは、あの余裕ぶった一番目のトマリギかなぁ」
当たっているから、思わず言葉に詰まる。
この喉ぼとけの痕は三日程前。事後、ぐったりして気を抜いていた時に、アルケーさんに喉の中央部分をきつく吸われた。「そこは・・」と慌てたが、時すでに遅し。自分では確認出来ないが、くっきり痕を付けられた感覚が有る。胸元や太ももみたいに、見えない場所じゃない。喉元を抑えて狼狽える私とは対照的にアルケーさんは、落ち着いた様子で自分のつけた痕を確認する。
「おや、思ったより濃くなってしまいました。オトにも他のトマリギにも申し訳ないですね」
全然全く申し訳なさを感じられない。
けれど、私だってアルケーさんの嫉妬との付き合い方が分かって来た・・つもりだ。
ベッドで向かい合うアルケーさんにぎゅうっと抱き着いた。
「・・もう」
「ふふ、私のオオトリは、こんな目立つ場所に跡をつけたのに、許して下さるんですか?」
アルケーさんがこういう言い回しを使う時は、関心を自分に向けたい時・・だと思う。多分。
「・・大好きですよ、アルケーさん」
身体をずらすと、お返しとばかりにアルケーさんの喉ぼとけにちゅっと音を立ててキスをした。くすぐったかのかアルケーさんが珍しく笑い声を上げた。
「オトは私を駄目にするのが、本当に上手ですね」
「アルケーさんだって、私をダメにしてますよ」
アルケーさんと鼻先を合わせ二人で笑い合った。目の前の笑顔を見て思う。何時も本心を見せない彼がたまに見せる、本当の笑顔が好きだな。
いかんいかん。・・今思い出さない方が良い事を思い出し、エナの胸の中で息を詰める。今、私、どんな顔してるんだろう。見られてはいけない表情をしている事は分かる。そんな私を知ってか知らずか、エナは私の身体に腕を回し、何時もよりきつく抱きしめた。
「えーっと・・一番目サマは異常に嫉妬深いから、ねっちこいのは確定でしょ?二番目サマは魔力のお陰で絶倫だから、オトは寝不足になっちゃうでしょ?一番最後の四番目サマは、いまだ恥ずかしがったりするんじゃない?それね、絶対に演技だから!絆されて、自分からキスしたり裸になったりしないでよ。僕、嫉妬で四番目サマを殴り飛ばすかもしれないから」
エナが指を折りながら全員の癖を口にする。アソオスの項目がその通りなのは幼馴染兼部下だから当然と言えば当然・・。それより何より全員の情報が当たり過ぎて怖い。どうして分かっちゃうんだろう。
私がうんともすんとも言わず大人しくしていると、エナが呆れたような声を出した。
「もーぅ、オト。黙ってるっていう事は、全部正解なの?」
「う、あ、その・・エ、エナは私が『全然違うよ』って言ったら、信じる?」
「あ、オト、そういうズルい逃げ方するんだぁ」
「ず、ズルくないよ」
語尾が思わず小さくなってしまう。すると、エナの指先が顎に掛かり上を向かされる。視線が交わると、エナはすっと真面目な顔になって覆いかぶさって来た。そのまま私の両手首を取って抵抗を封じる。そして、身体に残っていた跡に一つ一つ上書きをするようにキスをした。初めは唇で触れるだけだったのが、舌先でゆっくり丁寧になぞられて行く。身体を重ねた後の燻っていたものが、再び熱を持ち始めるのが分かった。
「・・ぅん、エナ、やぁ・・」
「イヤ?んー、本当にイヤなら、もっと本気で嫌がらないと」
胸元から、お腹へ。身体の中心へと柔らかく湿った感触が移動し、ぎゅっとシーツを掴んで快楽を逃がそうとする。
・・ズルいのはエナの方。こうやって、身体も思考もぐちゃぐちゃにして結局、エナの言いなりになってしまう。
「ねぇ、オト。ココ。一番際どい所に痕を付けたのだーれ?」
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