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さてさて、どうしましょう?
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さてさて、困った事になってしまった。
ロザリアは後ろ手に両手を縛られぼんやりと考える。
マルシュス公爵家の子息フィリップのお誘いでダンス会場を抜け出した。
ダンス会場の外にある庭園へと足を運ぶと、背後からいきなり口を押さえられ、布で目隠しをされ、流れる様に馬車に押し込まれた。
後ろ手に両手を縛られ、ガタガタと荒い馬車の揺れながら、どうしたものかと考えていると、馬車が停まった。
馬車の揺れ、移動した時間を考えると、パーティー会場から約5キロも離れていないかしら?
そんな事を考えていると、いきなりの浮遊感と腹部の圧迫感がロザリアの表情を歪ませた。
「ッ、・・・・」
一応、丁寧だが、無骨な腕に担ぎ上げられるのは、いい気分では無い。
耳から入ってくる聴覚的情報と周りの人の気配でどこか建物の中に入った事が分かった。
何処かの部屋に入り、腹部の圧迫感から解放されると、何処か柔らかい所に座らされた
形からしてソファだろうか?
すると、目隠しされていた布をいきなり外される。
「ッ、」
暗かった視界に部屋の灯りが目に痛い。
だが、すぐに目が明かりに慣れ辺りを見渡すと、そこは質素な一室だった。部屋の灯りに小さなテーブル。座らされている大きなソファだけが妙に豪華に見える。
そして、目の前に4人の男達がロザリアを見下ろしていた。
その顔は笑顔だが、なんだか、間に触る気持ちの悪い笑みだった。
「随分と、過激なお誘いですね、フィリップ様」
目の前の4人の男の1人、フィリップに向けて微笑むロザリア。
「手荒に連れ出した事は謝りますよ。ロザリア様。ですが、こうでもしないと貴女と親密な関係になれないと思ったんです」
「私が、パーティー会場から長く姿を消せば我がアークライド公爵家の者が騒ぎ出すと思うのですが?」
「うら若い男女が優雅にダンスを踊り、そのまま姿を消す、よくある事。そして、そんな2人を不躾に詮索しないのがパーティーの暗黙の了解のはずでは?」
「確かに、そういいますけど、でも、もっとロマンチックなモノだと思っていました。まさか、いきなり誘拐されるだなんて。まぁ、これはこれで、とてもスリルがありますね」
「随分と余裕ですな。ロザリア嬢」
4人の男の中で一際派手な服装で恰幅のある体。フィリップに顔立ちが似ている男、マルシュス公爵がニヤニヤと下品な笑みでロザリアを見下ろしている。
「うふふ、初めまして、ですね。マルシュス公爵様」
マルシュス公爵家は我がアークライド公爵家と並ぶ由緒正しい公爵の家柄。
という事は、フィリップとマルシュス公爵の服装と比べて質素な服を着ている他の2人は手下と言う事か・・・。
「こんな姿ですみません。出来ればこの縄を解いて下さればちゃんとご挨拶をしたいのですが」
「それは出来ない相談ですね」
「それは、残念ですわ。で、どうして私を此処に連れてきたのか理由を聞いても?」
ニヤニヤと下卑た笑みの4人の男とは反対に朗らかに笑うロザリア。
「そうですね。単刀直入に言わせてもらいましょう。ロザリア嬢、我が息子フィリップの妻になって貰いたい!!!」
高圧的な態度で単刀直入なマルシュス公爵の申し出に、
「お断りします」
「んな!?」
笑顔でバッサリ即答するロザリア。
「バ、バッサリと即答しやがった」
手下の男が口元をヒクつかせた。
「そもそも、こんな強引な手段を取らなくてもアークライド公爵家に直接申し出をすればいいのではありませんか?」
ロザリアは臆せず、最もらしい質問をマルシュス公爵に問いかける。
「こちらとしては、何度も結婚の話をお父上に持ちかけているのだが、なかなかいい返事が帰ってこないので、少々強行手段をとらせてもらった」
だが、マルシュス公爵は意外にもあっさりと答えてくれた。
「あら、マルシュス公爵家との結婚のお話が出ていたとは知りませんでしたわ。
でも、何故、私に結婚の申し出を?マルシュス公爵でしたら他にでもご縁は引くて数多では?三男でしたら、跡取り問題も然程問題無く、見た目も爽やか。ダンスもお上手。御令嬢達にとっては好条件だと思うのですが?」
「あ、え、!?」
フィリップはまさかこの状況で自分を評価されるとは思わなかったのか、少々動揺する。
「そ、そこまで息子を褒めて下さるなら、うちの息子と結婚を考えて下さいますな」
「普通に交際を申し出て下さいましたら、少しは考えましたが・・・・・・この状況で承諾するのは如何なものでしょう?」
縛られて軟禁されているにも関わらず、本当に不思議そうに首を傾げるロザリア。
「き、肝が据わった女ですね・・・・」
手下の男が、思わずロザリアの肝の太さに感服する。
普通の令嬢ならば、こんな状況に陥れば恐怖で震えて涙を流すか威嚇をする子猫に如く気丈に振る舞うかのどちらかの筈なのに。
「貴女は、ご自身が置かれている状況を理解していないのですかな?」
まるで怖がる様子の無いロザリアの態度に口元をヒクつかせながら声を低くし少し高圧的な態度をとるマルシュス公爵。
「生憎、後ろ手で縛られ、男性4人に囲まれているという事しか状況把握が出来ていませんので。出来たら、何故、私が此処に連れて来られた本当の理由をお教え下さいませんか?御子息の結婚相手を見繕うのにわざわざ誘拐する事は無いのでは?」
ふわりと笑顔を見せるロザリア。
だが、その笑顔に、
「ッ、」
「・・・・ッ」
「・・・・・」
フィリップと手下の男2人がゾクリと小さな悪寒を感じた。
「・・・・・・・流石、アークライド公爵家の隠し玉と言われる姫君だ」
ただ1人、マルシュス公爵だけは不敵に笑った。
ロザリアは後ろ手に両手を縛られぼんやりと考える。
マルシュス公爵家の子息フィリップのお誘いでダンス会場を抜け出した。
ダンス会場の外にある庭園へと足を運ぶと、背後からいきなり口を押さえられ、布で目隠しをされ、流れる様に馬車に押し込まれた。
後ろ手に両手を縛られ、ガタガタと荒い馬車の揺れながら、どうしたものかと考えていると、馬車が停まった。
馬車の揺れ、移動した時間を考えると、パーティー会場から約5キロも離れていないかしら?
そんな事を考えていると、いきなりの浮遊感と腹部の圧迫感がロザリアの表情を歪ませた。
「ッ、・・・・」
一応、丁寧だが、無骨な腕に担ぎ上げられるのは、いい気分では無い。
耳から入ってくる聴覚的情報と周りの人の気配でどこか建物の中に入った事が分かった。
何処かの部屋に入り、腹部の圧迫感から解放されると、何処か柔らかい所に座らされた
形からしてソファだろうか?
すると、目隠しされていた布をいきなり外される。
「ッ、」
暗かった視界に部屋の灯りが目に痛い。
だが、すぐに目が明かりに慣れ辺りを見渡すと、そこは質素な一室だった。部屋の灯りに小さなテーブル。座らされている大きなソファだけが妙に豪華に見える。
そして、目の前に4人の男達がロザリアを見下ろしていた。
その顔は笑顔だが、なんだか、間に触る気持ちの悪い笑みだった。
「随分と、過激なお誘いですね、フィリップ様」
目の前の4人の男の1人、フィリップに向けて微笑むロザリア。
「手荒に連れ出した事は謝りますよ。ロザリア様。ですが、こうでもしないと貴女と親密な関係になれないと思ったんです」
「私が、パーティー会場から長く姿を消せば我がアークライド公爵家の者が騒ぎ出すと思うのですが?」
「うら若い男女が優雅にダンスを踊り、そのまま姿を消す、よくある事。そして、そんな2人を不躾に詮索しないのがパーティーの暗黙の了解のはずでは?」
「確かに、そういいますけど、でも、もっとロマンチックなモノだと思っていました。まさか、いきなり誘拐されるだなんて。まぁ、これはこれで、とてもスリルがありますね」
「随分と余裕ですな。ロザリア嬢」
4人の男の中で一際派手な服装で恰幅のある体。フィリップに顔立ちが似ている男、マルシュス公爵がニヤニヤと下品な笑みでロザリアを見下ろしている。
「うふふ、初めまして、ですね。マルシュス公爵様」
マルシュス公爵家は我がアークライド公爵家と並ぶ由緒正しい公爵の家柄。
という事は、フィリップとマルシュス公爵の服装と比べて質素な服を着ている他の2人は手下と言う事か・・・。
「こんな姿ですみません。出来ればこの縄を解いて下さればちゃんとご挨拶をしたいのですが」
「それは出来ない相談ですね」
「それは、残念ですわ。で、どうして私を此処に連れてきたのか理由を聞いても?」
ニヤニヤと下卑た笑みの4人の男とは反対に朗らかに笑うロザリア。
「そうですね。単刀直入に言わせてもらいましょう。ロザリア嬢、我が息子フィリップの妻になって貰いたい!!!」
高圧的な態度で単刀直入なマルシュス公爵の申し出に、
「お断りします」
「んな!?」
笑顔でバッサリ即答するロザリア。
「バ、バッサリと即答しやがった」
手下の男が口元をヒクつかせた。
「そもそも、こんな強引な手段を取らなくてもアークライド公爵家に直接申し出をすればいいのではありませんか?」
ロザリアは臆せず、最もらしい質問をマルシュス公爵に問いかける。
「こちらとしては、何度も結婚の話をお父上に持ちかけているのだが、なかなかいい返事が帰ってこないので、少々強行手段をとらせてもらった」
だが、マルシュス公爵は意外にもあっさりと答えてくれた。
「あら、マルシュス公爵家との結婚のお話が出ていたとは知りませんでしたわ。
でも、何故、私に結婚の申し出を?マルシュス公爵でしたら他にでもご縁は引くて数多では?三男でしたら、跡取り問題も然程問題無く、見た目も爽やか。ダンスもお上手。御令嬢達にとっては好条件だと思うのですが?」
「あ、え、!?」
フィリップはまさかこの状況で自分を評価されるとは思わなかったのか、少々動揺する。
「そ、そこまで息子を褒めて下さるなら、うちの息子と結婚を考えて下さいますな」
「普通に交際を申し出て下さいましたら、少しは考えましたが・・・・・・この状況で承諾するのは如何なものでしょう?」
縛られて軟禁されているにも関わらず、本当に不思議そうに首を傾げるロザリア。
「き、肝が据わった女ですね・・・・」
手下の男が、思わずロザリアの肝の太さに感服する。
普通の令嬢ならば、こんな状況に陥れば恐怖で震えて涙を流すか威嚇をする子猫に如く気丈に振る舞うかのどちらかの筈なのに。
「貴女は、ご自身が置かれている状況を理解していないのですかな?」
まるで怖がる様子の無いロザリアの態度に口元をヒクつかせながら声を低くし少し高圧的な態度をとるマルシュス公爵。
「生憎、後ろ手で縛られ、男性4人に囲まれているという事しか状況把握が出来ていませんので。出来たら、何故、私が此処に連れて来られた本当の理由をお教え下さいませんか?御子息の結婚相手を見繕うのにわざわざ誘拐する事は無いのでは?」
ふわりと笑顔を見せるロザリア。
だが、その笑顔に、
「ッ、」
「・・・・ッ」
「・・・・・」
フィリップと手下の男2人がゾクリと小さな悪寒を感じた。
「・・・・・・・流石、アークライド公爵家の隠し玉と言われる姫君だ」
ただ1人、マルシュス公爵だけは不敵に笑った。
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